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第88話 竜の調停者

僕の報告を聞いた国王様、お義兄さん、王妃様……。

そして、家臣一同。


謁見の間は歓声で包まれた。


多分、謁見の間って普段は厳かな場所なんだと思うんだけど、今この時ばかりはそんな雰囲気は微塵も無い。

それ程までに、今回の一件は国を守る立場にいる彼らに取って重要な懸案だったと言う事だろう。


確かに下手をすれば、町の一つや二つが壊滅に陥り、最悪王都すらその存在を危ぶまれたかもしれないのだ。


うん、このみんなが喜んでいる光景を見れただけでも頑張ったかいがあったと思うよ。

……そうだよね、わっふる!


僕が頭の上からわっふるを抱き下ろし、顔の前まで持ち上げるとうんうんと頷きながら尻尾を大きく揺らした。


わっふると二人でみんなの喜ぶ様子を噛みしめていると、国王様が僕に向かって声をかけてきた。


「よくぞ、やってくれたマイン。

 私も娘婿としてお前を迎えれる事を誇りに思うぞ。

 ……ドラゴンスレイヤー、いや倒した訳ではないか……。

 ああ、ドラゴンミディエイター(竜の調停者)とでも言った方が良いか!」


国王様はもの凄い上機嫌で、何やら怪しげな称号を付けてくる。


すると、その称号に釣られたのか、結構偉い感じがする僕がまだ見た事のない人物が話に加わってきた。


「おお、いいですね!ドラゴンミディエイター!

 倒すよりも難しい事を成し遂げ、アルドの町を救った英雄にまさに相応しい!

 姫様の婿として、箔も付く事でしょう!

 ファーレン様、国からマイン殿へ正式に称号として贈っては如何でしょう」


……いや、すごく止めて欲しいんですけど……。


「ふむ、モルグがそこまで言うのは珍しいな?なんだまた何か企んでるのか?」


企んでいるとか不穏な言葉が出てきたよ……。


「いや、今回はそんな事は考えておりませんぞ!

 私も事情は聞き及んでおります、神獣様と敵対するなど愚の骨頂でございましょう?」


色々話を聞いているうちに分かってきた。

どうやらこのモルグって人はこの国の宰相様らしい。


後でシルフィから聞いたんだけど、結構クセがある人らしい。

何かあると理詰めで話をしてきて、上手いことこちらの退路を塞いでくるそうだ。


ただ、国の為にとにかく精力的に働いている傑物で、国王様相手であっても国益にならないと判断すれば、諌言も厭わないらしい。


今回の件は文字通り、王女の婿となる僕に箔をつける良い機会と思っているようだ。


「……ふむ、まあ言わんとする事は分からないでもないが」


結局、国王様はしばらく考え込んだ後、宰相様の提案をその場で裁可した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「つ、疲れたよ……」


部屋に帰ってきて僕はベッドの上にぼふっと倒れ込む。


あの後、国王様が大々的に僕の事を”ドラゴンミディエイター”等と呼び始めたものだから、あの場にいた大臣様やら上級騎士様やらが僕に殺到してきた。


シルフィも最初のうちは「これも経験だ」と見ているだけだったけど、流石に並んでいるのが五十人を越えた所で助けにきてくれた。


しがない狩人の息子が、あのような煌びやかな場所で偉い人達に囲まれれば、どうしても気疲れしてしまうよね。


ただ、一つだけ良かった事があるんだ。

勿論、心の奥底ではどう考えているか何て分からないけれど……。


集まってきてくれた人々は一様に僕に感謝の言葉を伝えてきた。


僕が持っている本当の力の事は勿論知らないだろうけど、それでも今回の事件を解決するだけの力がある事はみんな知っている。

なのにも関わらず、僕を取り込もうとか、利用してやろうとか考えていそうな人は全く居なかったように感じる。


そもそも彼らは名前しか名乗らないのだ、そして口を揃えて「ありがとう」と言う。

誰がどういう役職を持った人なのかすら話さないのだから、利用も何もあったもんじゃないだろう。


この事をシルフィに話したら、苦笑しながら、そういう輩も居ないわけではないから気をつけるようにと注意された。


「……さて、改めてお疲れ様でした」


アイシャとシルフィが労いの言葉をかけてくれる。

そう言えば、二人とゆっくりするのって、なんか久しぶりな気がするね。


「うん、ありがとう……二人とも」


ちなみにわっふるはアイシャが抱っこしてます。


「しかし、ここ数日間は本当に濃密な時間だったな」


シルフィがわっふるを見て、しみじみと語り出す。


うん、全くその通りだよね。


いきなり家に貴族が押しかけてきて、訳の分からないゲームに巻き込まれて……。

そのゲームに参加したら、何故か伝説の神獣様に出会って、友達になっちゃって……。

更にその子供に懐かれて、家族の一員になっちゃうし。


わっふるをちらっと見ると、僕が自分の事を考えているのが分かるのかこちらを見て、尻尾を勢いよく振り始める。


それで、ゲームが終われば最強種と言われるブラックドラゴンと戦闘。

挙げ句、龍族を司る神獣様の加護まで貰っちゃう。


そして極めつけは、王宮についたら訳の分からない称号まで貰ってしまったという……。


こうして出来事をまとめてみると、平民の僕にとっては、なんかトンでもない出来事ばかりだよね。


そして、次に控えるのは僕達の結婚式となる訳だ。

今回の騒動が無事に終結したので、何の憂いも無く結婚式を執り行う事が出来るそうだ。


で、つい先程決まったのだけど、今回の僕の称号の事を意図的に市民達に広めてから結婚式を行うとの事だ。


いくら国王が認めた者と言っても、僕は平民の出なのは変えようの無い事実だ。

国民に大人気のシルフィの相手として不満を持つ者は当然出るだろう。


だが、今回の件で僕が称号を持つ程の男だと分かれば、そう言った声も少なくなるだろうと踏んでいるらしい。


そして、それを持ってロゼリア家を筆頭とした今回の件に関与した貴族を公に処する理由付けも出来るとの事だ。


そんな理由から、結婚式は少し間を置き、一週間後と決まったんだ。


「……旦那様のスキルの事など、色々聞いておきたい事はあるのだが……」


「まずはお風呂につかって体を休めましょうか!」


シルフィとアイシャが揃って立ち上がる。

さあ、行きますよと二人に引っ張られ、僕等は一緒にお風呂に入る事になった。








……わっふるも一緒だからね!


「わふっ!」


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


【改稿】


2016/12/23 

・全般の言い回しを修正。

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