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第85話 戦い終わって、後始末(1)

『……やっと来たね、ヨル。

 マイン、何度も悪いけどね、神霊の森へ繋いでくれないかい?

 今はいいが、何時人間が近くに来るか分からないからね』


フェンリル様の頼みです。

聞かないなんて選択肢はありません。


すぐに僕は【固有魔法・時空】で神霊の森とこの場所を繋ぐ。


フェンリル様は、いつもの黒い渦が目の前に出現したのを確認してわっふるを背中に乗せたまま、さっさと中に入っていく。

残されたブラックドラゴンの家族とヨルムンガンド様、そして僕は打ち合わせをしたわけでも無いのにお互いの顔を見合う。


きっと意味は分からないだろうけど、僕は「どうぞ」と順番を譲る。


何度も黒い渦に入っている子ドラゴンが両親に「キュイキュイ」と話しかけている。


すると僕と戦ったお父さんドラゴンが中に入っていく。

そして、子ドラゴン、母ドラゴンと続いていく。


次はヨルムンガンド様の番だな、様子を見てみると、何故だか僕をじっと見つめていた。


……う~ん、何か僕したっけ??

今日始めて会ったばかりの神獣様のプレッシャーは、いくら僕がフェンリル様で慣れているからと言っても、中々キツイ物がある。


無言のプレッシャーに耐えれなくなり、僕はもう一度「どうぞ」と順番を譲る仕草をする。

すると、ヨルムンガンド様の翼が突然光り輝いた。


……え?攻撃される?僕、死んじゃうのかな……??


『……聞こえるか、姉さんの友人よ』



!!!!



……なんだ、なんだ?念話!?

ひょっとして、ヨルムンガンド様!?


僕が慌てふためいていると、もう一回同じ問いが脳裏に響き渡る。


『ヨルムンガンド様ですか!?』


僕がそう答えると、目の前の巨大なドラゴン”ヨルムンガンド”様が頷くのが見える。


『……取りあえず、会話が出来ないのは不便だからな。我の加護をお前に授けた』



名前:マイン

LV:63

種族:ヒューム

性別:男

年齢:15歳

職業:狩人


【神獣の加護】

念話 ≪ヨルムンガンド≫ new!



……確かにあります。


世の中で神獣の加護を二つも授かったのはきっと僕だけだろうな……。

……乾いた笑いが勝手に口から出てくるよ。



『取りあえず、姉さんの所にいくぞ。

 唯でさえ怒ってるのに、遅れていったらどうなるか分からん』


僕が二つめの加護を受けた事で呆気に取られていると、ヨルムンガンド様はさっさと渦に僕を置いて入ってしまう。


「……うん、別にいいんだけどね」


僕もその後に続いて、神霊の森へと移動をするのだった。





『さて、ヨルムンガンド。今回の件、どう決着をつけるつもりだい?』


元々はクロード一味がブラックドラゴンの子供を攫った事がきっかけで始まった事だ。

ヨルムンガンド様やブラックドラゴンには非は無い。


それは間違いが無いと僕は思う。



今回のアドル襲撃の流れはこうだったらしい。


父ドラゴンと母ドラゴンの二手に分かれ、子供を求めて何日も何日も飛び回っていたらしい。

しかし、人間の町と言っても沢山あり、子供の気配も掴めない。


手がかりさえ見つける事が出来ず、焦燥感ばかりが募っていく。


そんな中、父ドラゴンの元に子供が見つかったとヨルムンガンド様から連絡が入った。

居場所を聞いた途端、いてもたっても居られずヨルムンガンド様の忠告を無視して父ドラゴン飛び出した。


それは、当然の反応だろう。


ずっと探していた子供が見つかったのだ、心配していたのだ。

その子を想う親の気持ちを誰が責める事ができるだろうか。


一方、母ドラゴンは正反対の場所、それもかなり遠くに居たらしくヨルムンガンド様の話を聞いてもすぐに戻る事は出来なかった。


そして、戻ってくるまでの間にヨルムンガンド様から事情を聞き、父ドラゴンの暴走を止めるべく全力で戻ってきたと言うわけだ。

その後の戦闘については、説明するまでもないだろう。


この流れはあくまでもブラックドラゴン側からの今回の件に対する見え方だ。


これが、僕やフェンリル様から見た場合は若干変わってくる。


僕はヒューム族が起こした不始末を解決する責任がある。

フェンリル様は同じ子を攫われた親としての理解と同情がある。


その考えの元、協力を申し出て、実際に子供を助けるべく行動していた。

結果として、父ドラゴンの暴走を招く原因になった子ドラゴンの居場所を教えた事だって、早く教えて安心させてやりたかったというフェンリル様の気持ちからだ。


そして、僕がアドルから引き離すために行った行為も無関係なアドルの人達を巻き込みたくなかったからであって、決して父ドラゴンを挑発して怒らせたかったからではない。


で、今フェンリル様が怒ってる事だって、善意で手伝ったのに自分の子供を殺され掛ければそれは怒って当然だろう。

しかも、こちらの話をきちんと聞かずに飛び出していった事が原因なのだ。


三者それぞれの立場、主張はそれぞれの視点でみればどれも間違ってはいないように思える。

悪いと断言出来るのはクロード達、子供を攫った一派だけだ。


だから、フェンリル様は怒りを押し殺して、まずヨルムンガンド様にどうする気なのか尋ねているのだろう。

……ヨルムンガンド様の返答によっては血の雨が降りそうだけど……。


『そうだな、まずは姉さんとマインにはお礼を言わねばなるまいな。

 今回の件、協力してくれたおかげでこうして無事にこの子が親元に帰ってくる事が出来た。

 正直、我々だけでは無理だったかもしれぬ……心から礼を言わせてもらおう』


……神獣の一角に頭を下げられたよ。

フェンリル様に続いて二度目だ……。


……正直言ってやめて欲しいよ。


『だが、元々の発端はヒューム族にあるのは間違いなかろう。

 本来ならば報復に出る所ではあるが、マインに免じてそれは中止とする。

 それで今回の件は手打ちにしてくれないか』


まあ、落としどころとしては悪くはないだろうと思う。


……一点を除けば。


『馬鹿言うんじゃないよ、うちの子を殺し掛けた落とし前は何処いったんだい?』


そう、先程の条件は”ドラゴンとヒューム族”としての手打ちであって、神獣フェンリル様は含まれていない。


『……まあ、そう言うわな……』


ヨルムンガンド様も予想はしていたようで、深い溜息を吐く。


『ヨル、アンタから提案出来ないのなら、私が決めてやろう。

 うちの子を殺し掛けたそこのソイツ、私が殺し掛けてやるよ。

 な~に、運がよければ死なないさ、マインもいるしねえ、すぐに治して貰えるさ』


ちょ、ちょっとっ!?物騒な事に僕を巻き込まないで下さい。

ちょっと、わっふる!!!そんなとこ(母さんの背中)で欠伸なんかしてないで、何とか言ってよ!!


『……わっふぅぅぅぅぅ』


まって!寝るな!寝ないで!!君、当事者なんだよ!?寝ちゃだめぇぇっ!


『……姉さん、物騒な事言わないでくれ。

 全く、相変わらず血の気が多い事で困る』


『何か言ったかい?』


そんな姉弟のやり取りがあった後、ヨルムンガンド様はある驚きの提案を僕達にしてきたんだ。


それは……。

何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


活動報告にご報告がございます。

まだお読み頂いてない方がおりましたらご確認下さい。



【改稿】


2016/12/11 

・「フェル姉」→「姉さん」に修正。

・全般の誤字を修正。

2016/12/21

・マインのレベルを修正。


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