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第84話 アドルの戦い(3)

なんて事だ……更にもう一匹って……。


僕の隣でわっふるが上空を睨み付けて、ぐるぐると唸っている。


すると、先程まで死闘を繰り広げていたブラックドラゴンが上空を旋回しているもう一匹に向かって雄叫びを上げる。

その雄叫びを聞いたからだろう、ゆっくりとこちらに向かって降下してくる。


わっふるも臨戦態勢を取っていたのに、雄叫びを聞いた途端、警戒を解き「わふ」と言いながら定位置である僕の頭の上とよじ登っていく。


……うん、状況から察するに戦いにはならないと思って良いのかな?


『わっふる、どうなってるの?』


『あのこのおかあさんみたいー』


僕がわっふるに状況を聞いているうちに、お母さんドラゴンが地面へと着陸をした。


あ!そうだ。

お父さん?ドラゴンにスキルを返さないといけないね。


わっふるからスキルをカットし、ドラゴンに戻していく。

僕がスキルを返しているその間にドラゴンの夫婦は何やら会話?をしているみたいだ。


しばらく何を言っているのか分からない竜同士の会話する姿を見学していると話が終わったらしく、最初のブラックドラゴンがわっふるに声を掛けてきた。


僕の頭を飛び降りて、再びわっふるが尻尾を振り、身振り手振りいっぱい混ぜ込んで会話を始める。

ほっこりとその様子を見ていると、わっふるが僕の方を向いて「がうっ」と手招きをしてくる?


『どうしたの?』


『こどもつれてきてー』


ああ、もう落ち着いたしお母さんドラゴンも敵対してないし……。

うん、大丈夫だね!


僕はすぐさま【固有魔法・時空】で子ドラゴンを迎えに行く。


「……あれ?子ドラゴン君が居ないぞ?」


おかしいな、ここで待っててって言ったのに……。


……まさか、また誰かに攫われたの!?

そんな事になったら、せっかくまとまり掛けているこの状況が全て無駄になっちゃうよ!?


【気配察知・大】を慌てて使用して、子ドラゴン君を捜す事にする。


……あ、いた。


僕等が戦ってるのが気になったのかな?

大分、さっきまで戦っていた場所に近い所まで移動してるや。


よし、迎えに行こう!!


【身体強化・大LV3】【脚力強化・小LV3】【疾走】【俊足(小) LV2】を使用して子ドラゴンが居る方向へと走っていく。

風切り音を聞きながら、一気に子ドラゴンの元へと向かう。


「おーい!!」


わっふるを置いて来ちゃったから、話が通じないのは分かってるけど呼びかけてみる。

僕の声を聞いた子ドラゴンが「キュイ!?」と声をあげる。


言葉は通じなくても、親と戦っていた僕が此処にいるんだ。

戦闘が終わった事も理解出来るだろう……と思う。


【固有魔法・時空】を使い、黒い渦を子ドラゴンの前に造りだし、指を指して入るようにゼスチャする。

すると少し考える素振りを見せた後、「キュウ~~」と飛び込んでいった。


当然、繋がっているのは親の目の前だ。

僕も直ぐ後を追って、渦の中に飛び込んでいく。


渦をくぐり抜けた先に広がっていたのは、親子の感動の再会だった。


何を言ってるのかは分からないけれど、三匹とも凄く嬉しそうな声で鳴き声を交わしている。

うんうん、良かった良かった。


これで僕達の仕事も終わりかな?

わっふるも尻尾を激しく振りながらドラゴンの家族を見ている。


『フェンリル様、無事子ドラゴンを親ドラゴンに引き渡しました』


『おお、無事だったか!!坊やも大丈夫かい?』


心配気な声でわっふるの事を聞いてくるフェンリル様にこれまでの状況を説明する。

わっふるが死にそうになった事を伝えた時、念話越しなのにも関わらず、凄まじい殺気がこちらに伝わってくる。


『……そうかい、ご苦労だったね。今、その場所の周辺には人間の姿はあるかい?

 まあ、最悪居ても構わないと言えば構わないけどねえ……坊やが死にかけたのかい、そうかいそうかい』


……あ、これきっとやばいやつだ。

けど、嘘をつくわけにはいかないよね……。


お父さんドラゴンさん、ごめんなさい。


『……居ません』


『そうかい、ならマイン……すぐに此処とその場所を繋ぎな』


言われるがままに【固有魔法・時空】を使用し、神霊の森にあるフェンリル様の住処と此処とを繋ぐ。

そして、目の前の渦から漏れ出す殺気が辺り一面を覆い尽くしていく。


ドラゴンの家族達も急に周りが濃密な殺気を漂うのに気が付いたのか、会話を中断して一斉にこちらを振り向いてくる。


そして、フェンリル様の全身がこの場に現れる。


『……ヨル、今すぐ此処にきなさい、雲の上でも飛んでこれば人間にゃ見つからないよ。

 いいかい?今すぐ来るんだよ、さもないと分かってるね』



着いた途端、フェンリル様は念話で誰かと会話しているようだ。

……どうやら話に聞いていた弟さんだろう……念話で物騒な脅しを掛けているのが聞こえてくる。


そして、フェンリル様はわっふるを口に咥えて、自分の背中に優しく降ろす。


『坊や、なんて無理をするんだい?私は心臓が止まるかと思ったよ』


『まいんをまもったー!ほめてほめてー!!』


親子の会話を無言で眺める僕とドラゴンの家族。

いや、無言と言うよりも話しかける隙が無いと行った方が正しいか。


僕とわっふるには向けられてないが、依然濃密な殺気をドラゴンの家族に振りまくのを止めていないのだ。

いくらブラックドラゴンとは言っても神獣様に逆らえる訳がない。


結局、フェンリル様の弟さんが来るまでの間、僕達は身じろぎする事すら出来ずにひたすら待つはめになった。


そして待つ事、十五分程。

僕とドラゴン家族にとっては永遠にも感じた十五分であった。


一匹の巨大な黒竜が僕達の前に降り立ったのだ。


「……こ、これが神獣、ヨルムンガンド……」


フェンリル様と並んで絶対的な存在が、今僕の目の前に存在した。

何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


活動報告にご報告がございます。

宜しければご覧下さい。




【改稿】


2016/12/10

・[超高度で飛んでこれば]→[雲の上でも飛んでこれば]に修正。

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