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第81話 救出劇

「……その場所は迷宮都市、アドルだ」


国王様が告げた子ドラゴンの居場所、それはつい先日アイシャと二人で行った迷宮都市アドルだった。

良かったよ【固有魔法・時空】で移動出来る場所は行った事がある場所だけだからね。


知らない町だと協力出来ない所だった。


「分かりました!アドルですね!良かったです。

 行った事が無い場所には移動出来ないので……」


「む、そうなのか?」


国王様もその事実を聞いて驚いた後、ほっとしている。

王都からアドルだと下手したら二日はかかる。


確かに時間的なゆとりが無い今、国王様もなりふり構っていられないのだろう。

僕に頭をいきなり下げるなんて、本当に焦っているんだね。


「神獣様が協力してくれるとは?」


ああ、そうか。詳しい事はまだ話していなかったね。


「フェンリル様も今回、子供を攫われました。

 それで、人ごとでは無いと親のドラゴンに同情的でして……。

 フェンリル様の弟にあたる神獣様が丁度ドラゴンを束ねているとの事だったので状況を確認してくれたのです」


つい先程連絡がきたフェンリル様からの話を国王様に話をする。


「……ちょっと待て、今なんて言った?」


「フェンリル様がドラゴンに同情的って……」


「いや、違う。その後だ」


ん?なんだろ?

この後ろって言うと……フェンリル様の弟の神獣様の事?


「フェンリル様の弟にあたる神獣様が……」


「……それだ。神獣様の弟だと?

 なんでそんな大事になっているんだ……」


新たな神獣様の登場に呆然とする国王様を尻目にフェンリル様に念話を送る。


『子ドラゴンの場所が分かりました。

 アドルの町だそうです、今から僕が向かいます』


よし、連絡は終わったぞ!早速行ってくる事にしよう。


直接町に飛ぶのは不味いから、少し離れた所に繋ごう。


「では、行ってきます!わっふる、おいで」


僕がそう言うとわっふるは「わふっ!」と走って僕に向かってジャンプしてくる。

優しくわっふるを抱きとめた所でシルフィが声を掛けてきた。


「旦那様、私達も付いていこうか?」


「ううん、最悪ドラゴンとやり合わなきゃいけないから、ここで待ってて。

 僕とわっふるだけなら、どうにでもなると思うから!」


僕がそう言うとシルフィは少しだけ悔しそうな顔をしたが、ドラゴンと戦いと聞いて引いてくれた。


「マイン君、美味しいご飯作って待っているからね、気をつけて行ってきて」


アイシャが笑顔で送り出してくれる。


二人の婚約者に手を振り【固有魔法・時空】を使用する。


さあ、急ごう。


「行ってきます!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『ま、まずいぞ、姉さん!』


『どうしたんだい?ヨル、随分慌ててるじゃないか?』


マインから先程、子ドラゴンの居場所を見つけたと連絡があったので、すぐにヨルにその情報を流した。

これで親も少しは安心出来るだろう、そう安心したのだ……が、何か様子がおかしいね。


『親ドラゴンのヤツ、迎えに行くって飛び出していきやがった!

 あの様子じゃ、人間の町を襲いかねない』


なんだって!?


今回の件は確かに人間共が悪い。

普段ならそう驚くような事では無いのだが、今回に限ってはマインと人間の町を襲わないように約束をしている。


その為にマインは色々と動いていたのだから。


『何をやってるんだ!すぐに呼び戻せっ!!』


『それが出来たらとっくにやってる!俺が出ていったら尚更まずいだろうが!!』


何て事だ、マインが今まさにその町に向かった所だ。

いくらマインが規格外と言っても、ドラゴン相手では分が悪いだろう。


くっ、ヨルでは無いが神獣の私が出ていくわけにはいかない。

これは私の読み違いだったね、マインが幼体を確保してから連絡をすべきだった。


『マイン、聞こえるかい?そっちに親ドラゴンが向かってるよ!

 戦闘になる恐れがある、無理をしなくていい。

 自分の身の安全だけを考えるんだ、いいね!』


……忠告はしたものの、あの子の性格じゃ、自分の身だけを守るなんて出来ないだろうね。

全く、どうしたらいいんだい!


死ぬんじゃないよ、マイン!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『わ、わふぅ~』


フェンリル様との会話を聞いていた、わっふるが尻尾を思わず股下に巻いてしまう。


『……ドラゴンと戦闘になる恐れって言われても……。

 取りあえずわっふる、子供ドラゴンを助けてアドルの町から引き離そう』


目視出来るギリギリの範囲【固有魔法・時空】を使って移動すればドラゴン相手でも引き離し出来ると思うんだよね。


僕とわっふるの全力と理性のないドラゴンなんかが暴れたら、アドルの町無くなっちゃうかもしれないよ……。


……あっ!?待てよ。

『わっふる、いいこと思いついちゃったよ……あのね』



わっふるとの作戦会議が終わり、さっと下準備を行う。

そして、下準備を終えた僕達はアドルへ向かって走り出した。


「王様から聞いたのは、町の中と言うよりも迷宮の側という場所にある奴隷商の倉庫に閉じこめているみたいだけど……。

 正確な場所は分からないんだよね……。

 近くまで行ったら、わっふるの感知能力と【気配察知・大】に賭けるしかないだろうね」


出来る限りの事はしたんだ!まずは、アドルの町に急がなきゃ!






前回、アイシャと来たときは、町に入るのに結構並んだのだけど、今回はとにかく時間が無い。

僕は門番さんの所に走って行き、王様からのフリーパスを見せて、アドルの町に入れてもらう。


つい先日来たばかりの場所です。

教えて貰った倉庫の場所は大体分かる。


僕とわっふるは町の中を駆け抜ける。

ああ、流石にわっふるも自分の足で走ってるよ。


町中を疾走する僕達は住民や冒険者達から注目を受けまくっているけど、そんな事を気にしている余裕なんか全然無い。

もう、直ぐ側まで親ドラゴンが迫ってきてるんだ。


「……ついた!この辺りの筈だ!」


すかさず【気配察知・大】を使い、辺りをうかがう。


『……いたよー、みつけたー!!!』

「この大きな反応、これだ!!」


僕とわっふるが同時に見つけ出す。


悠長な事をやってる暇はない、王様から許可だって貰ってるんだ!

踏み込んで一気に制圧するよ!


僕とわっふるは子ドラゴンが閉じこめられていると思われる建物の扉を開けて……鍵が掛かってる。

……こんなものーーーっ!!!僕が思いきり力込めて扉を押し込むと、激しい破壊音と共に扉が開いた。


うん、開いた。

決して壊したじゃないよ!開いたんだ。


……きっとレベルが上がったせいなんだろうな……。


「な、何事だっ!!」


奥から奴隷商に雇われているであろう冒険者と思われる男が武器を持ってやってくる。


時間の無駄だよっ!!【補助魔法・睡眠】を使い、眠らせる。


『このしたにいるみたいだよー!』


僕が冒険者達を次々に眠らせていると、わっふるが子ドラゴンの位置を特定した。

……あそこに階段があるね、周りを見回すと地下へと続く階段が目に飛び込んできた。


既に向かってくる冒険者達は居ない。

……全員床で仲良く眠っちゃってるので妨害しようが無いよね。


僕等は階段を一気に駆け下り、地下室に飛び込んだ!



……居た。


可哀相に……隷属の首輪を付けられ、檻の中に閉じこめられている。


ん?待ってよ。

この子の体の色、黒くない??


まさか……黒竜の幼生体!!!??

不味い、不味すぎる!!!


黒竜は、竜種の中でも一、二を争う程に強く気性が荒いんだ。

火竜と黒竜は出会ったら最後って……。


『わっふる、この子と会話出来る?助けに来た事を伝えてくれる?』


『わかったー!まかせてー!』


わっふるはそう言うと、とことこと檻に近づいてがうがうと子竜に話しかけている。


五分程経過して『わふ、せつめいおわった!よろこんでる!』


ん、良かった。

先ずは第一段階終了だ。


檻の入り口に付いている鍵を【固有魔法・時空】を使って弾き飛ばす。

この魔法、ほんとに便利だよ。


鍵が無くなったのを確認して、扉を開けると中から子ドラゴンがのしのしと出てきた。


『わっふる、首輪を外すからこの子に動かないように言ってね』


再び、わっふるががうがうと子竜に話しかけている。


『いいよー、まいん』


わっふる達の首輪を外したときのように慎重に……。

よし、取れた!


僕が子竜の頭を撫でてあげると嬉しそうに『くぅ』と鳴き声を上げた。


『とにかく、脱出しよう』


再び【固有魔法・時空】を使い、町の外。

王都から飛んだ場所へ、空間を繋ぐ。


僕の行動を興味深そうに子竜は眺めていて、その横でわっふるががうがうと説明をしているようだ。


『よし、繋がったよ!入って』


まず、最初にわっふるが「わふー」と吠えながら黒い渦に飛び込む。

その後を恐る恐ると言った様子で子竜が飛び込んでいく。


最後に僕が飛び込んで、脱出完了です!


移動してすぐに渦を消して、一息をつく。


『まいんー、やすんでいるひまなさそうだー』


ん?わっふるが見つめる方向を見る。


アドルの方向だね……あっ……。


そう、アドルの上空に見えたのは、この子の親竜。


厄介極まりない、理性を失った黒竜の姿があったんだ。


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


出張、二日目です。

明日の分の予約投稿出来てません。


帰宅する時間によりますが、最悪更新出来ないかもしれません。

その際は申し訳ありません。

また、昨日同様、誤字等の対応は戻ってからとなります。


宜しくお願いします。



【改稿】


2016/12/08 

・全般の誤字を修正。


2016/12/10 

・全般の誤字を修正。


2016/12/11 

・「フェル姉」→「姉さん」に修正。

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