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第08話 錬金術と謎の男達

苦戦したとはいえ、目標のオーク三匹を今日だけで倒せたのは収穫だった。

早くても二~三日は掛かると思っていたからだ。


これで、正式にこの収納袋は僕の物となるんだ。

今回の狩りでこの収納袋の有用性は身に染みる程に理解出来た。


分かっていたつもりではあったが、実際に使用してみると実感出来るものだ。


解体したとはいえ、オークを三匹も収納してなおかつ、まだまだ余裕がある。


帰り道で薬草の類や他の獲物を狩っても捨てないですむというのは精神的にも懐具合的にも非常にありがたい物だ。


そんな事を考えながら、クロウラーとの一戦を教訓に慎重に帰路を進んでいく。

鑑定を使い、薬草の類も片っ端から収納していくのも忘れない。


結局、森を出るまでに更にクロウラーを一匹、フォレスト・マトンを二匹倒す事が出来たのだった。


裏門を抜けるとき、クロウラーの体液で緑色に染まった僕を見て、馴染みの門番さんを慌てさせてしまったのは申し訳なかった。


流石にこの格好で、お肉屋さんと錬金術屋さんに行くのは気が引けるな。


そう考えた僕は一旦自宅へと戻る事を決める。


家に着いて早々、汚れた服を脱ぎ、井戸から水を多めに汲み上げ、頭からジャボーンとぶっかけた。

汲み上げた水が無くなる位には、何とか緑色も流し終える事が出来た。


乾燥した布で装備品の水をよく拭き取ってから、家の中に陰干しをして新しい服を着直す。


緑色に染まった服は……洗濯しても綺麗にならないかなあ……。

取り敢えず、水につけて放置しておくか。


そこまで作業を終えると、日もすっかり沈んでしまった。


急いで僕は八百屋さんに向かい、夕食で使う野菜を幾つか購入する。

そのまま収納袋に放り込み、錬金術屋さんへと急いで向かった。


ちなみに町中だから当然スキルは使用していない。

スキルを他人に教える行為になりかねないから、うっかり使わないよう注意をしなきゃね。



「こんばんわ~!」


錬金術屋さんについた早々、僕が店の中に向かって大きな声を張り上げる。

すると「あらあら、まあまあ」と奥さんが出てきてくれた。


「主人から聞いたわよ、オークを倒したんだって?マインちゃん、凄いわねえ!お姉さんビックリしちゃったわ♪」


美人の奥さんに褒められて思わず、顔がにやけてしまう。


「えへへ、それ程でもないかな?ところでお兄さんは居ますか?」


「はいはい、今呼んでくるわね」


そう言って、奥さんはお店の中に消えていった。

しばらく待っていると、中からお兄さんがタオルで手を拭きながら出てきてくれた。


「マイン君、どうしたんだい?」


「オークを三匹、倒してきました!」


僕がお兄さんの問いに元気よく答えるとお兄さんの顔は朝見たときと同じような引きつった表情になる。


「……早くないかい?」


「運がよかったんだと思います!オークを三匹って言われてたんですけどお肉も出せばいいですか?」


「運って……運が良いくらいでオークを三匹倒せないけどなあ」


お兄さんは苦笑いを浮かべて、お肉は要らないからいつもの素材だけ出して欲しいと言われた。


流石にオーク三匹分、骨もあるからお店の奥にある広めの作業場まで移動して、そこで全てを取り出した。


「うん、確かに三匹分だね。朝の時も思ったけど実に上手く解体出来てる」


奥さんに続き、お兄さんにも褒められて再び顔がにやけてしまう。


「素材に問題は全くないね、約束通りその収納袋はマイン君、これで君の物だ」


信頼するお兄さんが嘘をつくとは思っていなかったけど、やっぱりこうやって改めて明言されるとほっとする。


「ありがとうございます!また狩れたら持ってきますね!あ、そうだコレも買い取れないですか?」


そう言って、解体済みのクロウラーの素材とヤツが吐き出した糸もどきを出していく。

ああ、羊の角と蹄も売れないかな?


「へえ、クロウラーだね。お肉はウチでも肉屋でも買い取りは出来ないかな。触覚と尻尾、それからこの糸は買う事が出来るよ」


そう言って、銀貨を4枚と銅貨を6枚渡してくれた。

内訳は二匹分の触覚と尻尾で銀貨3枚、糸もどきが全部で銀貨1枚と銅貨6枚らしい。


意外に糸もどきは高いらしい。

なんでも高価な布の材料になるんだって。


「あと羊の角と蹄は6匹分で銀貨24枚だね」


これも意外に高く買ってくれるみたいだ。

ちなみにこの角も蹄も粉末にして、何かと一緒に調合すると睡眠薬になるんだって。


意外な収入に大喜びながら、狩りの最中に思いついた事を聞いてみることにする。


「……ところでお願いがあるのですが……」


「お願い?急にどうしたんだい?改まっちゃって」


「……良かったら、ポーションを調合するのを見学したいんですけど……ダメでしょうか?」


僕の申し出が余りに予想外だったんだろう、唖然とした表情を見せながら少し考え込むお兄さん。


「構わない、けど……見てもスキルが無ければ上手く出来ないよ?品質の悪い物なら練習を繰り返せばひょっとしたら作れるかもだけど……」


「ええ、構いません!是非お願いします!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


結論を言えば、井戸水と薬草でポーションは作る事が出来た。

ルーカスの町の地下に流れている水は”綺麗な水”らしい。


井戸水なら、いくらでも汲み上げる事が出来る。

早速家に帰ったら作ってみよう。


ちなみにハイポーションの調合も見学させて貰えた。


レシピは薬草+”純流水”という水を使うみたい。


これは、ルーカスの町から馬車で二日ほど離れたムイール山に流れている清流の上流で取ってきた水を使っているそうだ。

勿論、他にも”純流水”が取れる場所はあるんだろうけど、そこがこの町からだと一番近いという事らしい。


調合が一段落ついたので、二人にお礼を述べて、お肉屋さんを経由して自宅へと向かう。


お肉屋さんもそろそろ店じまいの筈なので、間に合うかどうかは微妙なんだけど。


この角を曲がれば、お肉屋さんだ。

思わず、急ぎ足になる。


角を曲がった所で目に入ったのは、店じまいをしているおじさんの姿だった。


「おお?坊主か、そんなに慌ててどうしたんだ?」


僕の姿を見たおじさんは、ニカッと歯を光らせながら声を掛けてきてくれた。

とっても大好きな、いかつい顔なのに全然怖くない笑顔で!


「良かった、おじさん……まだ買い取りは出来るかな?」


「ん?また何か狩ってきたのか?いいぞ、但し店だけ先に締めさせてくれ。じゃないと際限なく客がきちまうからな」


ガハハと笑いながら、おじさんは片づけを再開する。


「僕も手伝うよ!」


おじさんは「おおそうか!じゃあ頼めるか?」と言いながら箒とちり取りを手渡してくる。


二人で片づけを初めて5分程過ぎ、無事に片づけを終える事が出来た。


そのまま、扉が閉まった店内に移動し、おじさんに促されオークの肉と兎、羊の肉を出していく。


「……坊主、オークまた狩ってきたのか?この分量だと……二匹、いや三匹か?もう十分一人前だなあ」


そう言って、おじさんは金貨5枚と銀貨を55枚渡してくれた。


「ちょっとだが端数をオマケしておいたぞ、一気にお金持ちだな坊主!ガハハハ」


収納袋に貰ったお金を入れて、おじさんにお礼を言う。


「いつもありがとう、おじさん!」


「いいって事だ、明日も狩りにいくつもりか?だとしたら気をつけるんだぞ?」


おじさんは心配そうに話してくれる……本当にありがたいな。


「うん!ありがとう、おじさんの注意を思い出しながら狩りをするね!それじゃあお休みなさい!」


お礼を言って、今度こそ家に向かう。


今日はいい夢を見れそうだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「今日、面白いスキルを授かった者がおりました」


「……お前がわざわざそう報告するという事は相当だな、どんなスキルだ?」


「【鑑定・全】です」


「ほお」



暗がりの中、二人の男が話をしている。


この二人の会話が後にマインの人生に多大な影響を与える事になるが、当然マインは今は知るよしもない。



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