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第76話 神獣フェンリル

急遽、僕と王家の一同が揃って神獣フェンリル様と会談が行われる事になりました。


会談は王家が揃って神霊の森へ行く時間が直ぐに取れない……と言うか、クロード達の件を解決しないうちには身動きが取れないという事で落ち着いてからという事になった。


「取りあえず、フェンリル様に話をしてみます」


そう言って念話で神獣フェンリル様に声を掛けてみる。


『どうした、マインよ』


今、王様達と話をした内容を神獣フェンリル様に伝えると、呆れた声で声を返される。


『……我がそちらにいけばいいでは無いか。

 お前のスキルで此処とその場所とを繋ぐ事は出来るのだろう?

 数歩歩けば済む話であろう?』


『けど、僕の能力(ちから)を見せる事になっちゃいますよ?』


『……いいでは無いか、どうせ能力(ちから)を話すのだろう?』


……あ、そうか。全く気が付かなかったよ。

その後、隠す必要なんか無いんだから、別に問題無いと言えば無いのかな。


『……その方向で聞いてみます』


神獣フェンリル様からの提案を王様とお義兄さんに早速、話してみる。


「神獣フェンリル様がこちらに来ると言ってます」


「な、なにっ!?王都が大混乱になってしまうぞ!?」


ああ、言葉が足りなかった。

やっぱり一端とはいえ、スキルの事を話すのは躊躇っちゃうね。


「いえ、大丈夫です。

 僕のスキルを使えば、この場にすぐ移動出来ますので……」


そう僕が言った途端、二人の動きが止まり、無言となる。

……この沈黙の時間、イヤだなあ……。


そんなある意味で緊張の場面の筈なんだけど……。

僕の頭の上をぺしぺし叩く子フェンリルの存在が緊張感を台無しにしている。


何とも微妙な空気が流れる中、国王様が苦笑いをしながら子フェンリルを一度目をやる。


「お前のスキルが破格なのは分かっていた事だ。

 すぐに王族全員をこの場に集めよう、集まり次第、神獣様をお呼びしてくれるか?」


「わかりました、神獣フェンリル様にそのように伝えます!」


お義兄さんが国王様の指示を受け、家族を呼び寄せに部屋を出て行った。


「……しかし、何か夢を見ているようだな。

 娘が遂に結婚をし、その伴侶はと言えばオーク・キングをも倒し、神獣様と友人だという。

 世の中では私の事を英雄などと持て囃しているが……。

 ……全く、自信を無くしてしまうな」


国王様がそう言うと、子フェンリルはぴょんと僕の頭の上から飛び降りて、国王様の足元まで歩いていく。


何をするんだろうと見ていたら、王様の背中に飛び乗り一気に頭の上まで駆け上る。


「……何してんのさっ!!!」


こ、国王様の頭にのっかるなんて何考えてるだよっ!!!


僕の焦った声など聞こえていないのか、子フェンリルはぺしぺしと王様の頭を叩く。


『げんきだせーっ!』


……。


神獣の子供という事もあって、国王様も文句の一言も言えないのだろう。

余りの事に呆然とした表情で固まっている。


「……国王様、その子……”元気だせーっ”って言ってます」


僕の言葉に応えるように、子フェンリルは「わふっ!」とまたもや片手を上げてその通りと主張している。


それを聞いた王様は……うん、笑い出した。

それもすごく大きな声で。


「神獣様にそう言われては元気を出すしかありませんな!感謝しますぞ、神獣様」


国王様のその言葉を聞いて、再び「わふっ!」と声を上げ、再度僕の方へと戻ってくる。

僕の体が小さいからなのか、先程国王様に登った時よりも若干苦労しながら、最早定位置と言ってもいい僕の頭の上に乗る。


その後、子フェンリルの挙動を国王様と眺めていると、お義兄さんが王族の方々を連れて戻ってきた。

……ん?ああ、アイシャもいるね。


すごく緊張してるみたいだけど……。

王族に囲まれていたら当然だよね、僕だってスキルの事が無かったら緊張しちゃうし。


……きっと、シルフィが連れてきたんだろうね。


集まったのは……


国王様、第一王妃様と見た事が無い女性。

多分、この人がレクタル殿下のお母さん、つまり第二王妃様なんじゃないかな?

何となくレクタル殿下と似てるしね。


それからお義兄さんとシルフィ、ルイス殿下とレクタル殿下。

エアリーとアイシャの九名と僕を含めて合計十名だ。


集まった全員に向かい、国王様が事情を説明し始める。


神獣フェンリル様が僕のスキルを使ってこの場に来る事。

僕の後ろ盾に神獣フェンリル様がついたという事。

そして神獣が後ろ盾につかないといけないほど、僕のスキルは強力だという事。


その説明を聞いて、婚約者の二名とお義兄さんを除くその場にいる全員が驚きの表情を見せる。


「……という訳だ。

 神獣様の友人となったマインは我々の親族となる。

 別に我々は彼を利用しようなどは考えてはいないが、神獣様はそれを心配されているのだろう。

 そこで我々は身の証を神獣様に立てようと私は考えている」


国王様は自分の考えをその場にいる全員に話し、異存が無いかを確認している。

……凄く真剣に考えてくれているみたいだ。


一国の国王様がこんな事を言ってくれるのは嬉しくもあるし、申し訳なくもあるね。

だけど、それだけ僕のスキルは危険なんだ。


僕の気持ち一つで、最悪の犯罪者にもなりかねない。

勿論、そんなつもりは全く無いから大丈夫なんだけど、他人はそうは思わないものね。


僕が考えをまとめている間に、国王様はその場にいる全員の意思を確認出来たようだ。


「それではマインよ、神獣様をお呼びしてもらえるか?」


「……はい」


こんなに注目された状態でスキルを使うのはすごく緊張するよ。

怖がられたらどうしよう……。


不安に挫けそうになった時、シルフィとアイシャがぐっと拳を握ってこちらを見ているのに気が付く。

そして二人の口がパクパクとゆっくりと動いた。




    『『がんばれ!』』




体の緊張が一気にほぐれていくのが分かる。

そして更に僕を後押しするように子フェンリルも大きな声で「わふぅっ!!」と吠える。


子フェンリルが吠えたのをきっかけに僕は覚悟を決めた。


【固有魔法・時空】を使い、神獣フェンリル様の住処の洞窟へと空間を繋げる。

そしてそれと同時に何時も通り眼前に大きな黒い渦が出現した。



「「「「「「「「「おおおおっ!!」」」」」」」」」



そして、その渦から紫色の大きな狼がゆっくりと出現してきた。


そうその狼こそ、古より伝説として伝わる神獣・フェンリル。

僕の新たな友人の姿だった。




何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


活動報告に頂いておりますあれこれですが、明日まとめて対応致します。

現在、体調的に全く時間が取れないため、休日に行わせて頂きます。

せっかく指摘を頂いたのに申し訳ありません。

※同様にメッセージを頂いております分もまとめて対応致します。


…………………………………………………………………


【改稿】


2016/12/04


・【場面全盤】会話における言い回しの一部を修正。

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