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第73話 神霊の森でのゲーム(6)

「陽当たり良好!」


目が覚めて、体にまとわりついている子フェンリル達を起こさないようにそっと立ち上がり洞窟の外に出てみると雲一つ無い真っ青な青空が広がっていた。


子供達の説得が夜遅くまで続いた事で、いつもより大分遅い時間に目覚めた感じだ。


僕が眠気を覚ますべく【常時:水】の小石を使って顔を洗っていると、神獣フェンリル様が洞窟からのしのしと歩いてきた。


『おはようございますっ!』


いつものように元気いっぱい挨拶をする。

すると、神獣フェンリル様も穏やかな表情で『ああ、おはよう』と返事を返してくれた。


『さて、昨日私が狩ってきた魔物を渡そうとしようかね』


そう彼女(神獣フェンリル様)が言うと、僕の【固有魔法・時空】を使った時のような黒い渦が空中に出現した。

なんでもこの黒い渦は神獣の固有能力らしく、時間停止の収納袋と同じような物らしい。


そして中から次々と魔物の死骸が溢れ落ちてくる。


うわ、うわわわ。

多い、多すぎるよコレ!!


無限に湧き出てくるのでは無いかと思わんばかりの魔物の死骸に思わず絶句してしまう。


……この量は流石に不味いなあ、僕の時間停止収納袋の容量では全く足りない。

王家から貸し出しされているのを使うのも反則になっちゃうから使えない。

というか、仮に使えても入らないんじゃないかな?コレ。


10tの収納袋はあるけれど、これだけ量が多すぎると捌く前に腐っちゃう。


そもそも昨日僕と子供達で狩ってきた分ですら、容量的に結構やばかったんだよね。

……コレ、本当にどうしよう。


僕が困った顔をしているのが分かったのか、不思議そうにどうしたと聞いてくる。

理由を説明すると『では、私が預かっておこう』と言って再び黒い渦の中へぽいぽいと放り込んでいく。


その作業中に神獣フェリンル様が小声でぼそっと『張り切りすぎた』と反省の弁を述べていたのは聞かなかった事にしておいた。



神獣フェンリル様と今後の話をしていると『『『おきたー』』』と子供達がとてててと洞窟の中から出てくる。

昨日同様、三匹とも突進しながら飛びついてくる……僕に向かって。


何故、お母さんでは無く僕なのか?考える間もなく三つの塊が勢いよくぶつかってくる。


その余りの勢いを受けきる事が出来ず、思わず尻餅をついてしまったが子供達には関係が無いようでペロペロと顔をなめ回してくる。

僕がもうすぐ帰ってしまうからなのかな?甘え方が一段と激しい気がする。


……ゲームの素材の方は僕が狩った分だけでも既に相当量ある。

また、結構強い魔物を沢山狩ったからポイントも期待出来るんじゃないかな?


と言うわけで、しばらくは子供達と遊んでいく事にしよう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そして太陽が真上に昇った位で、ベースキャンプに戻る事にする。

子供達はまだ遊び足りないようだったが、流石にこれ以上は時間的に不味いのでまた来るからともう一度話して解放してもらう。


帰る前に【超再生】を子フェンリルから【カット】し、代わりに【再生】を【ペースト】。

そして、残りの二匹にも同じように【再生】を【ペースト】しておく。


【超再生】は緊急用に持っておかないとね!【再生】なら簡単に取ってこれるし。


『子供達に【再生】を貼り付けておきました。

 この前のような事は多分もう無いと思うのですが、仮にあっても大丈夫だと思います』


三匹とも大喜びで飛び跳ねている。


『もう、けがしないぞー!がおーっ』


いや、怪我はするんだよ……、治るだけで……。

ちゃんと説明して、無茶しないように注意をしておく。


……うん、凄く心配だよ。


神獣フェンリル様が笑いながら、ちゃんと見ておくから大丈夫だと言ってはくれるんだけどね。

この子達、何するかわかんないからなあ……。


そして、別れの時が来る。

一時ではあるが、やはり少し寂しく感じるよ。


『我が友、マインよ。我ら家族はお前をいつでも歓迎するぞ』


『はい、ありがとうございます!【固有魔法・時空】でここにすぐ来れますから必ずまた来ますね!』


そうだよ!来ようと思えばすぐ来れるんだ!!寂しくなんてないよね!


そう別れの言葉を告げた僕は【固有魔法・時空】を使用する。

目的地に一番最初にフォレスト・エイプを狩った場所を想像し、そして渦の向こうを覚えたばかりの【気配察知・大】で確認する。


「……よし、誰もいないね!」


振り返り、手を振ってから”えいっ!”と渦に飛び込む。


飛び込んだ先に目視でも状況を確認して、黒い渦を閉じようとしたその時……。

紫色の小さな塊が渦から凄い勢いで飛び出してきた!


「え?」


渦が消えた瞬間、その塊は僕に激しくぶつかる。

一番、僕に甘えていた子フェンリルである。


『わふっ!!』


うわっ!?付いてきちゃったよ!?……どうしよう……。


『マインよ……仕方ないから連れて行ってやってくれ。

 フェンリルと話せば、不要なトラブルも呼ぶやもしれぬ。

 フォレスト・ウルフとでも偽れば良かろう』


いやいやいや、ばれるよ!……って、ばれないかな?ひょっとして。

鑑定がなければ種族分からないし、小さいから色目もさほど目立つ紫じゃないし。


スキルやアビリティとか余ってるのをこの子に付けておけば、自衛も出来る……かな?


『……分かりました、お預かりします。

 ただ、騒ぎになりそうになったら、返しにきますからね?』


神獣フェンリル様にそう念を押した後、子フェンリルにも言い聞かせる。


『いいかい?ちゃんと僕の言う事聞くんだよ?

 あと、悪い人以外に攻撃したらダメだよ?あと何か危険だなーと思ったらすぐに念話で話すんだよ?』


『わかったー!わふぅ』


本当に大丈夫なのかなあ……。

かなり、心配だけど仕方ないよね。


僕ががっくりと肩を落とすと、よいしょ、よいしょと背中をよじ登り、定位置の頭の上にのっかる。

子フェンリルにぽんぽんと頭を叩かれながら、僕はベースキャンプへと足を向けるのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「マ、マイン殿!?ご無事で何よりです!!」


僕がベースキャンプに辿り着くと騎士団長がもの凄い勢いで声を掛けてきた。


何でも僕が奥へ行きすぎた為に見失ってしまい、大騒ぎになっていたらしい。

……そうか、今の僕の立場って平民の狩人ってだけじゃ、すまないんだね。


第一王女の婚約者、という肩書きは僕が思っていた以上に重い物らしい。

本来ならば僕をこんなゲームに参加させたくなかったみたいで、王命である事とゲームの本当の目的を知っている為、渋々納得をしていたようだ。


まあ、騎士団さん達からすれば、当然の気持ちなんだろうね。

なんかすごく申し訳ない気持ちでいっぱいです。


……だけど、誰かに見られながら戦うのはスキルばれの可能性があったから僕の都合からすれば仕方ないんだよね。


けど、随分迷惑と心配を掛けたみたいだから、ちゃんと謝らないと!


「騎士団長さん、あと僕を捜してくれた騎士団の皆さん……心配を掛けてしまってすみませんでした。

 ……あと、僕を捜してくれてありがとうございます」


大きな声でしっかりと頭を下げて、心からの謝罪をする。


まさか、僕がいきなり謝るなんて思わなかったんだろう。

騎士団長さんを始め、その場に居た騎士団員の皆さんが驚いているのが分かる。


「……あ、頭を上げてください!マイン殿!!

 分かって頂ければいいんです、幸いこうして無事に戻られたのです。

 これから気をつけて頂ければ問題はありません」


僕が頭を上げると、騎士団の皆さんは先程の複雑な表情から笑顔に変わっており、ちゃんと気持ちが伝わったんだとほっとする。


「……ところでマイン殿、さっきから気になってるんですが」


うん?


「その頭に乗ってる子供の狼はなんですか?」


……ああ、そりゃそうなるよね。


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


何とか書けました。

しかし、体調は依然よろしくありません。

明日以降、6:00に更新されてなかったら力尽きたと思ってください(泣)


また、沢山の方から体調を心配するメッセージやコメントを頂きました。

個別にお礼のメッセージはお送り致しましたが、この場でもお礼申し上げます。


本当にありがとうございました。

すごく嬉しかったです。


あ、今回で神霊の森でのゲーム終わると言いましたが、終わりませんでした。

ごめんなさい。


…………………………………………………………………


【改稿】


2016/12/03 


・遺体→死骸に修正。

・神獣フェンリル→神獣フェンリル様に修正。

・帰ってしまうのが分かっているからなのかな?→帰ってしまうからなのかな?に修正。

・子フェンリルが付いて来た時の描写に一部文章を追加。

・神獣フェンリルへの受諾の言葉を修正。


2017/01/21

・全般の誤字を修正。

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