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第68話 神霊の森でのゲーム(1)

昨晩は騎士団員さん達のおかげで安心して眠る事が出来た!

十分な睡眠を取れた僕は”ん~っ”と大きく伸びをしてテントの外へ出て行く。


「うん、良い天気だっ!」


見上げると、真っ青な空が果てしなく広がっていた。

絶好の狩り日和?だと思う。


空を見上げて深呼吸をしていると、昨日馬鹿貴族を拘束し、連れだしていってくれた騎士団の方々が僕を見つけ側までやって来てくれた。


「おはようございます!!!」


いつものように元気に挨拶をし、昨夜のお礼を改めて伝えるとその場に居た全員が笑顔で


「マイン殿、結果はもう決まっているゲームではありますが、頑張ってください。

 我々第一騎士団一同、応援しておりますから」


そんな嬉しい言葉を貰ったあと、昨夜の顛末を聞かせて貰った。


あの後、大騒ぎするクロードを陛下の名代を務める騎士団長の前に連行され、厳重注意を受けたうえでその身柄をゲーム開始まで拘束される事になった。


予想通り、ヤツは激しく抵抗をしたけれど国家反逆罪を適用する事になるが良いのか?と問われ、渋々ながら引き下がったとの事。


そんなやり取りが有った事から、恐らく僕に対し深い怨みを抱えている可能性が高く、ゲーム中も十分に注意をするように注意を受けた。



そして、遂にゲーム開始の時間となる。


恐らくこれから二日の間、参加者は全員、森の中で過ごす事となるだろう。

勿論、ベースキャンプに帰ってきて休んでも構わないが、その分対戦相手達とは差が開いていく事になる。


勝敗に大きく左右される事になる訳だから、僕も勿論の事、帰ってくるつもりはない。


当然、対戦相手となる冒険者達も同じ事を考えているだろう。




馬鹿貴族ことクロードを含め、その仲間の貴族達が集合場所に続々と集まってくる。

その後ろには随分と体格の良い冒険者達がそれぞれの武器を手にしっかりと持ちながら付き従っている。


……彼らが僕の対戦者になるのか。


僕も鋼鉄短剣とライトニングエッジを装備し、開始の号令を待つ事にする。

……クロードがさっきからすっごい顔で僕の事を睨み付けてるのは敢えて無視だ。


騎士団長からゲームに関する注意事項が改めて説明された後、参加者一人一人に例の収納袋が渡される。


……アイツらきっと、この後自分達の収納袋にしまってある素材をあれに移し替えるんだろうなあ。


計画通りなら、昨日狩りまくった魔物の素材は、不正をして手に入れた”時間経過の無い収納袋”にしまってあるのだろう。

けど、実際に奴らが手に入れた収納袋は”時間経過のある収納袋”だから、当然今も素材は傷んでいっている筈だ。


と、そんな事を考えながら、受け取った収納袋を腰に吊り下げる。



「各自、不正無きよう正々堂々と二日間の競技に挑むように!

 ……それでは、これよりゲームを開始する。はじめっ!!!!」


騎士団長の号令一下、貴族に雇われた参加者は一斉に森に向かって走っていく。


……不正無きようにって、既にあいつら不正しまくりなんだけどなあ……と苦笑しながら僕も森へと足を向けた。


騎士団の人達も、騎士団長さえも苦笑いをしているのが実に印象的だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



さて、どの魔物の素材が高ポイントになるとか聞かされていないからね。

取りあえず、強そうな得物を狩るのが無難なのかな?


となると、定石通りなら森の奥に進む方がいいんだろうね。

取りあえず、スキルを使用している所を見られたくないから常に【気配察知・中LV3】で周りを警戒しながら進む事にしよう。


……ん?そんな事を言ってる間にモンスターを発見する。



名前:フォレスト・エイプ

LV:18

種族:エイプ族

性別:♂


【スキル】

疾走

直撃


【アビリティ】

なし



エイプ族、猿系の魔物だね。

実際に見るのは、初めてだけど……。


確かにいつも僕が狩りをしている森の敵よりもレベルが高いな。


取りあえず、何時も通りスキルを奪って弱体化させてっと。

気が付かれないように【気配遮断・中LV3】を使い、背後に回り一気に襲いかかる。


いきなり現れた僕という敵の存在に慌てるエイプだったけど、射程圏内に侵入されたうえ、既にスキルも無い。

抵抗する素振りこそ、見せたがあっさりと鋼鉄短剣に心臓を貫かれて絶命する。


「このゲームは素材の解体の善し悪しでもポイントが違うからね。

 相手の冒険者達を【鑑定】した時に【カット】を持っている人は居なかったし……。

 僕はそれだけで大分有利だよね!」」


直ぐさま、カットで解体を行い、渡された収納袋に放り込んでいく。


うん、順調順調。

このまま、奥に進んでいこう。


次に出会ったモンスターは今までと、少し毛色が違うタイプのヤツだった。



名前:サイドワインダー・エビル

LV:29

種族:スネイク族

性別:-


【スキル】

追撃攻撃


【アビリティ】

毒液散布

締め付け



蛇型モンスターだ!しかもすっごくデカイや!!三メートルはありそう。

あんなのに巻き付かれたら、あっさりと圧死しちゃいそうだね……。


それに何か、妙にレベルが高い気がするな……。

ひょっとして、この辺の主?


取りあえず、その辺の石を拾って、アビリティはコイツに貼り付けてっと。


……次はスキルだ。

なんか効果を見ないでも予想出来るけど中々使い勝手が良さそうなスキルじゃないかな?


よし、弱体化完了!


さて、近接戦闘はちょっと避けたい気がするな。

魔法は何処で誰が見てるか分からないから、避けたいし……。


あ、待てよ!この方法なら近接でも余裕かな?


まず【王の威圧】で動きを止める!

【豪腕LV3】で強化をし、一気に近づいて首を切り落とす。


やっぱりオーク・キングの持っていたスキルは破格だよなあ。

これだけで、殆どのモンスターに勝てるじゃないかな?


素早く蛇を解体して、収納袋に放り込み更に奥へ奥へと進んでいく。

途中で見つけたモンスターは全て同じ調子で片っ端から倒していく。




……うーん、なんか随分、奥まで来ちゃったなあ。

結構前から周囲に人の気配が無くなってたから、狩り場として想定していない場所まで来ちゃったのかもしれないね。


そう言えばルイス殿下が言ってたっけ。

”森の奥深くに神獣が眠っていると古くから言い伝えが……”って。


まあ、言い伝えだから本当に居るわけは無いんだろうけど、火のない所に煙は立たないって言うし、ひょっとすると神獣とは言わないまでも強いモンスターがいるかもしれないね。


まあ、この辺は流石に奥深くって程では無いとは思うから、神獣なんて出てこないだろうけど。


……と、その時だ。


少し離れた場所で魔物の鳴き声と、戦闘音が聞こえてきた。


ん?他の参加者達かな?

……様子を見に行ってみるか。


敵情視察じゃないけれど、相手の戦力を知っておくのは悪くは無いと思う。

【気配遮断・中】を使い、静かに音がした方向へと移動を開始する。


移動先で僕の目の前に飛び込んできた光景は……予想もしなかった物だった。


まず目に付くのは紫色の毛並みが美しい巨大な狼だ。

その美しい毛並みが所々、血によって汚れているのが分かる。


ダメージを受けているわけでは無さそうなので返り血なんだろうか?


そして、その次に目に入ったのは、複数人の冒険者達。

ゲーム参加者の中には居なかった人達なので、恐らく馬鹿貴族が雇った他の冒険者達なのだろう。


監視の目が届かない森の奥まで来て、こいつら何してるんだ?

……って、何だ?あの冒険者達、小さな狼を何匹か捕まえてるぞ……。


あっ!?まさか……!?

そもそも今回のゲームの発端となった事件は何だった?


そうだ、ドラゴンの子供を捕まえて奴隷化して、売り物にしたのが原因じゃないか。


つまり、目の前で起きているこの戦闘は……。


「貴様ラッ!子供達ヲ返セッ!!!!!」


お、狼が喋ったよっ!!!



名前:フェンリル

LV:160

種族:神獣

性別:♀


【スキル】

ミィステック・レイン

ルナティック・ウエイブ

神獣の双撃

重力の魔眼



【アビリティ】

大咆哮≪ウォーセカムイ≫

健脚



ぎゃっ!?神獣だ!!!

ほ、ほ、本当に居たのか!!!?


あれ?待てよ……。

神獣様って確か大昔、人族が魔族によって滅ぼされそうになった時、ヒューム族に味方して守ってくれた存在じゃなかったっけ?


あの冒険者達!!?よりにもよってヒューム族にとって大恩ある神獣様の子供を捕まえようとしてるの!?


じ、冗談じゃないよ、これは不味い!!!

本気で本当に不味い!!!


ドラゴンだけでもトンでもない事態だって言うのに……。

神獣様まで町に攻め込んできたら下手したら人類が滅びちゃうぞ。


僕がパニックを起こしている間にも事態は悪い方へと進んでいく。


「う、動くんじゃねえぞ、畜生の分際で、お、俺らに逆らおうなんてするんじゃねーぞ。

 ちょっとでも動いてみな、き、貴様の子供の命が無くなるぜ!!!」


そうか、子供を人質にして逃げようとしてるんだな。

だから、神獣様も身動きが取れないという事か。


……アイツら、神獣様って分かってないのか!?


となれば、僕がやる事は一つだけだ。

あの子供を奴らから救い出し、神獣様に返す事。


そう、僕が決心した時……既に手遅れだったんだ。


「巫山戯ルナァァァァァァ!!!」


冒険者達の余りにも身勝手な言葉に神獣様が激昂し、咆哮する。

あまりの衝撃に森全体がざわめき、周りの木々がその枝を大きく揺らす。


その余りの威圧感に、恐怖を感じ我を忘れたのだろう。

子供達を捕まえていた冒険者の一人が、その手に持っていた短剣を神獣の子供へと振り下ろした。


「きゃうううう……ん」


刺された子供の悲しみに満ちた泣き声が……森に響き渡った。


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。



…………………………………………………………………


【改稿】


2016/12/03 

・全般の誤字を修正

・冒頭の文章を若干修正。

・【場面中盤】二日間森の中で過ごす事についての記述を修正。

・ゲーム直前、収納袋についての記述を追加。

・他の冒険者達に【カット】持ちが居なかったという一文を追加。

・敵情視察と移動をする際に【気配遮断・中】を使用する描写を修正。

・神獣→神獣様に修正(最初の一言だけはわざと未修整)

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