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第67話 決戦前夜

僕が森に着いた時には既に日が暮れていた。

森の入り口から少し離れた場所にベースキャンプと銘打たれたいくつかのテントが用意されていた。


例の馬鹿貴族の姿はベースキャンプには見あたらなかった。


まずは案内役の騎士団員さんに連れられ、僕用にとあてがわれたテントへと足を運ぶ。


「マイン殿、ここが貴殿のテントになります」


そう騎士団員さんは僕に言った後、周りをキョロキョロと見渡してから小声で話しかけてくる。


「……無いとは思いますが、クロード殿達がマイン殿に何かしら仕掛けてくる可能性もあります。

 このテントは我々騎士団のテントに隣接しておりますので何かあればすぐに声を掛けてください」


うん、確かにその可能性はあるかもしれないよね。

卑劣な行動を平気で行うような男だ、妨害工作くらい躊躇いなくやってのけるだろう。


「はい!ありがとうございます!その際は宜しくお願いします!!」


僕の返事を聞いて、にっこりと笑顔を浮かべ、騎士団員さんは持ち場へと戻っていった。


……さて、と。


【気配察知・中LV3】を発動し、周りの状況を探ってみる。


ん~、この気配はさっきの騎士さんだね。

と言う事はこの辺にいる気配は今回の件を知ってる人達……なのかな?


いや、そうとは限らないか。

ひょっとしたら、馬鹿貴族側の雇った冒険者かもしれないしね。


……森の方向に結構な人数が集まってるな。

森から出て、これからベースキャンプに戻ってくるという感じかな?


さっき見回した時にヤツが居なかった事から考えると、多分この集団がヤツらなのかな?


1,2,3……結構沢山いるなあ。

40人前後なのかな?


ゲームに参加する人数が僕を入れて九人という事を考えると明らかに過剰な人数だよね。

……相当気合いを入れて、インチキしてるんだなあ。


その情熱をもっと別な物にぶつければいいのに……。

呆れ果てながらも様子を探っていると、一人こちらに向かってくる気配を感じる。


……ん?馬鹿貴族かな?これ。

騎士さんの心配してた事が当たっちゃったかもしれないね、これは。


「わざわざ私に負けるためにやってきたか、ご苦労な事だ、平民よ」


やっぱり!予想通り、馬鹿貴族だ。

いきなり人のテントの中にずかずかと入ってきて、こんな言葉をぶつけてるとは……。


「ところで平民よ、貴様が負ける事は決まっているのだ、今のうちに王に婚約破棄を申し入れてこい。

 そうすれば、そうだな……白金貨を一枚くれてやるぞ?

 どうだ?平民如きが見た事も無い大金だろう?」


……。


どこまで失礼なヤツだ。


「結構です、白金貨なら百枚以上持ってますし、このゲームも僕が勝たせて貰いますから」


僕がそう言うと、まさに鳩が豆鉄砲をくらったような表情を浮かべた後、顔を真っ赤にして怒りだした。


「っ貴様!!平民ごときが貴族に対し、その口の利き方はなんだ!!

 貴様は私に言われた事に素直に従えばいいのだっ!!!」


平民にこんな事を言われた事は今まで無かったのだろう。

いきなり、僕の顔目がけて拳を振るってくる。


……こんな緩やかな攻撃、当たるわけがない。

オーク・キングやお義兄さんの動きを見た僕からすれば、それこそスローモーションに見えるよ。


さっと掌でヤツの拳を受け止めてやる。


「そもそも、僕に今回のゲームを持ちかけてきたのはクロード様ですよね?」


「き、き、貴様ァァァァァァァァァッ!!!!」


さっきから大声で怒鳴りまくってるんだ。

すぐ傍のテントに控えている騎士団員さんに気が付かれない訳がない。


ほら、さっき僕を案内してくれた騎士さんが駆けつけてきてくれたよ!


「クロード卿、何をなされているのですか!?

 マイン殿は明日の対戦相手ですぞ、対戦前に危害を加えようとするならば

 この場で、このゲームを没収し、貴公の負けと致しますぞ!」


「……こ奴が平民の分際で、ロゼリア家の次期当主であるこの俺の言う事を聞かぬのだっ!!!

 ええい、無礼者っ!!離せ、離さんかっ!!貴様らも無礼討ちにしてくれるぞ、えーい!!離せぇっ!」


更に後から来た騎士さん達にも押さえ込まれ、強制的にテントの外へと連れ出されていく。


そう言えば、鑑定してなかったね。

あんな偉そうなんだ、余程いいスキルを持ってるのかな?



名前:クロード・ロゼリア

種族:ヒューム

LV:16

性別:男

年齢:21歳

職業:ロゼリア家嫡男


【スキル】

両手槍・極

芸術・歌唱



……正直、微妙だと思う。


【両手槍・極】はいいスキルだと思うけど。

【芸術・歌唱】は、戦闘にはちょっと……向いてはいないかな。



【芸術・歌唱】:歌を上手に歌う事が出来る。



貴族としての視点から考えれば、芸術を嗜むのは、良い事なのかもしれないけれど……。

今回のような戦闘を提案をしてきた経緯を考えると、ちょっと合わない感じのスキルだよね。


まあ、明日のゲームはきっとお金で雇った冒険者が出てくるだろうから、問題は無いのかな?

……アイツが出てきたら、家の悪口を言われたお返しをしてやるんだけどね、残念!


そんな事を考えてながら奴が連行されていったテントの入り口を見ているとさっきの騎士さんが再び中に入ってきた。


「マイン殿、申し訳ありません。

 我々の管理不行き届きです、今晩は身動きが出来ぬよう拘束をする事に致しました。

 また、万が一があるといけませんので我々がこのテントの周りで不寝番を行わせて頂きます。

 安心してお休み下さい」


ああ、騎士さんには申し訳ないけどちょっと安心したよ。

寝てる間にアイツに雇われた冒険者達が襲ってきたりしたらどうしようかと思ったもの……。


騎士さんには本当に感謝、感謝だね!ちゃんとお礼を言わなきゃ。


「……ありがとうございます!!嬉しいです。

 けど、騎士さん達が寝れなくなっちゃいますね……、ごめんなさい」


僕がそう謝ると、騎士さんは笑いながら答えてくれた。


「ハハハ、大丈夫ですよ、交代で見張りますからちゃんと寝る事は出来ます。

 それにマイン殿をこうしてお守りするのも私達の大事な役目です。

 どうか、気になさらずにゆっくり休んで、明日に備えてください。

 我々騎士団一同、応援しておりますぞ」


こうして、優しい騎士団員の皆さんのおかげで僕はゆっくりと休む事ができたんだ。


よし、結果は決まっているけど、明日は精一杯頑張ろう!

今、僕が出来る事はこれだけだからね!


……おやすみなさい!



何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。

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