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第64話 ゲームの裏側

「それで、ヤツらの言うゲームって何をするの?」


僕がそう言うと、シルフィは馬鹿貴族から受け取った手紙をゴミ箱から拾ってきた。


「……ふむ、取りあえず中を確認してみるか。

 どうせ、ろくでもない話だろうが」


「……いや、内容としては案外マトモな物ではあったよ」


既に概要を王都で聞いていたルイス殿下が僕達にそう答える。


へえ、あんな礼儀を知らなくて、失礼なヤツが王族にマトモな物と言われるゲームを考えつくんだ……。

逆にちょっと興味が沸いちゃうな。


シルフィとアイシャもルイス殿下の言葉に意外そうな表情を見せている。

僕等の様子に苦笑しながら、ルイス殿下は話を続ける。


「王都から北に50kmほど、離れた所に少し強めのモンスターが徘徊してる”神霊の森”があるだろ?

 あの森で素材集めをしてくるというのがゲームの骨子だね」


ルイス殿下の言うには



・制限日程内で決められた素材を集めてくる。

 素材に得点が割り振られていて、その点数の合計で勝敗を決める。


・対象素材と得点配分は騎士団によって検討。


・配点は素材の解体状況によって加点、減点される。


・開催期間は二日間。


・不正が出来ないよう騎士団から監視人を複数森の中に配置する。


・参加者は代理人を立てる事が出来る。



大雑把な内容がこれだ。


基本的に僕達の結婚に異議申し立てをした八名の各貴族がそれぞれ代理に選んだ冒険者が八名。

その八名と僕の合計九名(プラス監視役の騎士達)で森の中に入り、各参加者それぞれが、期間内で狩りを行いポイントを競いあうと言う物だ。


森に入る際、騎士団から専用の収納袋を渡されてそこに素材をしまっていき、終了後に回収される。


ちなみにこの収納袋。

有名な錬成士の作品らしく、中に入れた物の”時間経過が無い”という貴重な物らしい。


……僕が【固有魔法・時空】で作ったヤツと同じだ。

その錬成士、どうやって作ったんだろう、凄く気になるな。


僕と同じやり方で作る事は出来ない筈だし……。

……まあ、収納袋は置いておこう。


会場となる神霊の森”


何でもそこは森の奥深くに神獣が眠っていると古くから言い伝えがあり、少し強めのモンスターが徘徊している事で有名な場所だ。


例えばゴブリン。

この森に生息する個体は、他の場所にいるハイゴブリン並みに強かったりする。


そして滅多に見る事が出来ないようなレアモンスターも出現し、貴重な素材が取れる事でも有名との事。


ちなみに、ルイス殿下のクラン「錬金術図書館」はこの森から得られる素材を良く集めて要るとの事。

僕等のクランが正式に活動を始めたら、連携をする事が決まっているので、今後もこの森には通う事になるだろう。


「……なるほど、確かにまともな内容だな」


「けど、馬鹿貴族ってどうやって不正をするつもりなの?」


「……騎士を買収工作したんだよ。

 接触された騎士団員は買収されたふりをして報告してきたから発覚したんだ」


何でもやつらの計画はこうらしい。


買収した騎士団員から事前に時間経過の無い収納袋を借り受け、開催前に人海戦術で素材を大量に集めてしまおうと言う物だ。

そして、開催日に新たに渡された収納袋に詰め替えて成果として提出するという実に単純明快な物だ。


普通の人間なら、騎士を買収出来る等とは思わないだろう。

だが、今回買収に提示された金額が類を見ない程あり得ない金額だった。


仮に買収されても騎士団員が行う事はそれほど難しい事では無いし、手間もそれ程ない。

依頼された手間と報酬を天秤に掛ければ、破格の条件なのは間違いがない。


馬鹿貴族達も買収した騎士団員に騙される可能性は考えなかった訳では無いだろう。

そこは有力貴族の跡取りと言う立場と金の力で押し切るつもりだったようだ。


だが、王都騎士団員を指導しているのは、あのお義兄さん(アルト)だ。

お義兄さん(アルト)の教えを受けている騎士団員がそんな買収工作に乗る訳もなく計画はあっさりと、ばれてしまい今に至ると言う訳だ。


……何というか、本当に馬鹿だな……アイツ。

そもそも、今回みたいにシルフィがゲームを受けなかったら、それだけで計画は破綻するのに……。


今頃、きっと家で暴れてるんじゃないかな?


「この時点でクロード卿を捕まえても良かったんだけど……。

 直接関与していないヤツの仲間も一網打尽にしようと父上が言われてね。

 それぞれの本家自体も絡んでいる可能性もあるから、八人全員捕まえるんだそうだ」


もし子息である馬鹿貴族達だけでは無く、その親までこの件に絡んでいたらとんでもない事になりそうだ。

下手したら、家が無くなるんじゃないかな……。


「そうか、それで森で狩りをするのは旦那様だけなのか?」


「そうだね、姉さん達は王都で結婚式の準備という所だね。

 今回の件、ドラゴンの事もあるから、早めに決着を付けなければ不味い。

 だから、結婚式の日程を相当前倒しにしてるよ。

 これから僕が連れてきた騎士を使いに出してクロード卿にゲームを行う事を伝える。

 それでゲームの日程と結婚式の日程が正式に決まる感じかな?」


「だが、ルイスの手の物がゲームをする事になったと言っても説得力が無いのではないか?

 私が言うのならばともかく」


「姉さん達が勝った場合、彼らの廃嫡を条件という事で納得した事にすればいいんじゃないかな。

 ここまで結構な費用を使ってるだろうから、そんな条件でも喜んで受けると思うよ。

 不正で絶対に勝つ自信もあるだろうからね」


けど、ヤツらが事前に狩って収納に溜め込まれたら、僕が当日頑張っても負けちゃうんじゃないかな?


その事を聞いてみると、当日貸し出す収納を時間経過のあるヤツを経過が無いヤツと偽って渡すらしい。

時間経過が有る収納袋にしまっておけば当然、素材は徐々に劣化していくので証明するのは簡単に出来るらしい。


その後、詳細を打ち合わせてルイス殿下は王都へと帰っていった。

……本当に忙しそうだ。


僕等も色々と忙しくなりそうだよね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おのれ、おのれ、おのれいーーーーーーっ!」


この煮えたぎる怒りを何処にぶつけてくれようか!!

一体、根回しにどれだけの金を使ったと思っているんだ!


私の脳裏にここまで根回しをしてきた努力が浮かび上がってくる。




第一王女、シルフィード・オーガスタ。

あの女を妻に迎える事が出来れば、我がロゼリア家は安泰となる。


それにあれだけの美貌の持ち主だ。

我妻にこそ、ふさわしいと言えよう。


王家は所持スキルさえ、良い物を持っていれば比較的簡単に縁談を決める事ができる。

自慢では無いが、私の持つ【両手槍・極】は相当強力だと思っている。


なのにも関わらず、王家は私との婚約を断ってきた。

……そして、私の他にも何人も婚約は断られている。


だが、いつまでも結婚をしない訳にはいかないだろう。

そうなれば、何処かで妥協をするはずだ。


そう考えていた矢先にシルフィードの結婚が決まったと言う話が王家より舞い込んできた。

しかもどうやら相手は平民らしい。


このままでは不味い。

なんとか策を打ち、この婚約を破棄させねばなるまい。


そう考え、私は策を講じた。

私と同じくシルフィードとの縁談を断られた貴族仲間達と連絡を取り合い、下準備を整える。


貴族の嗜みである”鷹狩り”をベースにしたゲームを考え、国王に面会を申し込み、ゲームの概要を説明する。


「ふむ、王家が認めた婚礼を覆せと……クロード・ロゼリア卿、そなたは言うのか?」


「滅相もございません、ただ高貴な王家の血筋に平民の血が入る事を危惧しております」


「ほう、元々は私も平民だったのだがな?」


「今はファーレン様が国王陛下でございましょう?

 元の出自はどうであれ、現在王家の血統はファーレン様から流れております。

 そもそも名も無き平民とファーレン様を比べる事自体が間違いではありませぬか」


「ふぅむ、まあよかろう。貴様の言い分は分かった。

 シルフィが貴様の提案を受けるのならば……考えてやろう。

 そんな事は無いとは思うがな、下がってよいぞ」



ち、言質は取れなかったか、まあいい。

考えても良い、と言う事なら認めたと言っても過言では無いだろう。


確実にこのゲームに勝利を収める為、打てる手を打たねばなるまいな。


第一騎士団に所属する馴染みの団員に声を掛け、協力を要請する事にする。

なに、騎士といっても経済的に苦しい筈だ、すこしばかり多めに金をぶら下げれば問題ないだろう。


今までも随分と世話をしてやっているしな。


さて、この調子で根回しをして何としてもシルフィードを我妻にしてみせる。




……根回しは、完璧だったのだ!!

しかし、肝心のゲームにシルフィードが乗ってこなければ意味が無い!!!!


どうすればよい?

一体どうすれば、ゲームに巻き込む事が出来る?


怒りを抑えながら必死に考えを巡らせる。


「坊ちゃま、ルイス殿下の使いが訪ねて参りましたが、如何なさいますか?」


なに?ルイス殿下だと?何の用だ。


「分かった、通せ」


来客室へと足を運ぶと、ルイス殿下の近衛だろう騎士が待っていた。


「ルイス殿下からの伝言と聞きましたが?」


「はっ、これをクロード卿に直接渡すようにと預かっております」


そう言いながら懐より手紙を取り出し、私に手渡してくる。


そして「確かにお渡ししました」と足早に退出していく。

……忙しない事だ。


手渡された手紙の蜜蝋を開け、爺やが運んできてくれた紅茶を口にしながら文面を読む。


「なんとっ!!!!」


シルフィードがこちらのゲームに参加する事を了承したと書いてある。

……ただ、ゲームに負けた場合、私達の廃嫡を条件に出してきてはいるが……。


まあ、根回しは完璧だ、負ける事は絶対に無い。

これで、この結婚はご破算だ。


私にもやっと運が回ってきたようだな。

何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


昨日の投稿は割り込みとなっております。

詳細は活動報告に上げておりますので、気が付かなかった方は一度ご確認下さい。


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