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第62話 面倒事がやってきた

シルフィと初めての朝を迎えた翌日の朝ご飯。

何となくアイシャを見るのが気まずい。


勿論、アイシャはシルフィの後押しをしていたし、昨夜は僕の部屋には来なかった。

……分かってはいるんだけど、……だけどなんか気まずいんだよね。


アイシャの様子は極めて、何時も通りで何も変わらない。

だからこの気まずい気持ちは僕だけが抱えている物なんだろうと思う。


ちなみにシルフィはと言うと……何というか、非常に分かりやすく照れまくってる。


アイシャが何かを尋ねる度に、もじもじと俯いてしまう。


……正直、こんなシルフィは予想もしてなかったよ。


どちらにせよ、このままじゃ良くないだろうと思う。

ここは男である僕がしっかりしなければダメだっ!


気まずいなんて言っていられないや!


これからずっと一緒に暮らしていくんだから、これが当たり前にしなきゃね。


「おかわり!」


アイシャにお碗を差し出してお肉のスープをよそって貰う。

そしてパクパクと食べていく。


流石は【料理Lv6】だっ!どれだけ食べても全く飽きないし、どんどん胃袋に入っていく。


僕のその様子を見て、徐々にシルフィもいつもの様子を取り戻してきたようでアイシャにおかわりを頼んでいた。

ちょっとわざとらしかったけど、これで良かったかな?


……ま、いっか。


僕も、もう一杯おかわりを食べる事にしよう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



それからの一週間はあっという間に過ぎ去っていった。


町長さんが家にやってきたり、親方がクランハウスの用地を下見にやってきたり。

それに付随して王都から建築の専門家がやってきたり、と。


いやはや、ほんとにあっという間に時間が過ぎていったよ……。


そして、忙しさを更に加速させたのは錬金術屋の奥さんだ。


言わないで!ってお願いしたのにも関わらず、つい喋ってしまったらしい。

無秩序には話して無いようだけど、結構話は広がってしまったみたいなんだ。


いつもお世話になっている商店街のおじさん、おばさん達が次々にお祝いだっていって色んな物を持ってきてくれた。

お世話になっている人達だけに純粋なお祝いだと言う事が分かるから嬉しいのだけど……。


……シルフィにすっごく怒られました。

僕も……そして、錬金術屋の奥さんもすっごく怒られた。


「私もきちんと口止めをしなかったのが悪いが、もう少し考えて欲しかったぞ……旦那様」


お世話になってるからとちゃんと話さなければと思ったんだけど、確かに思慮が足りていなかったね。

もっともっと深く考えなきゃダメだった。


……もうすごく反省だよ。


ちなみに錬金術屋の奥さん、旦那さんにもコッテリと絞られたみたい。

うん、思いきり反省してください。


そんな顔をして、怒られている奥さんを見ていたら、シルフィに睨まれた。


……あ、僕もか。ごめんなさい。


そして、僕等が怒られた事が広まったからだろうか、大分騒動も落ち着いてきた。


……と思った頃。

トンでもない爆弾が我が家にやってきたんだ。






「こちらにシルフィード殿下がお見えになると聞いてやって参りました。誰かお見えになりませんか」


誰かが訪ねてきたようだ。

外から呼んでる声が聞こえてくる。


「はーい、今行きます~!」


僕が返事をし、玄関に向かうと目の中に、立派な馬車の姿が飛び込んできた。

馬車全体が真っ黒に塗装されていて、縁等は金色で装飾されていて何とも豪華な馬車だった。


ああ、これは……間違いなく貴族様の馬車だよね。


そしてさっき玄関口で声を上げていたのは、立派な口髭を生やした執事服を見事に着こなしたおじいさんだった。


「この家の方ですね?こちらにシルフィード殿下がお見えになると伺って参ったのですが……」


どうやら彼らはシルフィに用事みたいだ。

まあ、そりゃそうだ……僕目当てで、こんな貴族に仕えているような執事さんが訪ねてくるわけ無いし。


「……はい、居ますけど」


僕がそう答えると馬車の中から、やたら豪華な装飾を施した立派な服を着た男の人が出てきた。

歳は、シルフィより上のようだ。


多分、この町に住んでる貴族の一人なんだろうけど……僕は全く知らないや。

興味も無かったしね、けどこれからはそんな事を言っていられなくなるんだろうなあ……。


錬金術屋の奥さんから広まった話でシルフィがこの町に居る事を知って挨拶に来た、そんな所かな?


僕がそんな事を考えながら、その貴族の人を見ていると開口一番、信じられない事を言い出した。


「ああ、何という事だ!

 シルフィード殿下のような高貴で、お美しいお方がこのような小汚い掘っ立て小屋に

 滞在なさっているとは……!!」



!!!!!



……何だって……コイツ、今なんって言った?

お父さんとお母さんが遺してくれた家を馬鹿にしたのか!!?


思わず、文句を言おうとした所で、相手が貴族という事を思い出す。


そうだよ、シルフィに言われたんだった。

もっと考えて行動しろって。


だめだ、貴族に文句なんて言ったら……どうなるか分からない。

シルフィと結婚した後ならば、ともかく今はまだただの平民だから……。


……だけど、すごく悔しい。


僕にとって、この家を馬鹿にされるのは、お父さんとお母さんを馬鹿にされたのと同じだ。

そんな僕の悔しさなんて当然気が付く様子もなく、いや気が付いたとしても悪いとすら思わないだろう。


貴族の男はひたすら僕とこの家の事を馬鹿にし続けた。


ぐっと拳を握りしめて、奥歯を噛みしめて耐えていると何事かと家の中からシルフィとアイシャがやってきた。


そして、貴族の男が得意げに話している、僕とこの家の悪口は当然シルフィとアイシャの耳にも届く事となる。


「……随分、私の伴侶とその家の事を好き勝手に言ってくれるな?クロード・ロゼリアよ」


シルフィが怒りを押し殺しながら、貴族の男……クロードというのか、に声を掛ける。

そんなシルフィの怒りに気が付かないのか、平然とした態度でシルフィに声を掛けてきた。


「おぉっ!殿下っ!!!お久しぶりでございます。

 いやはや、相変わらずお美しい!!このような汚い場所でも、殿下の美しさは全く損なわれませんな!

 それにそこにいるのはギルド受付嬢のアイシャ殿では無いか!

 絶世の美女が二人も並んでいる姿をこの目で見る事が出来るとは、このクロード恐悦至極に存じます」


……この野郎っ!また家の事を馬鹿にしやがった!


馬鹿なの?馬鹿なんだね!?シルフィが怒っているのが分からないのか?

アイシャもかなり怒ってるみたいだし、普通なら気が付く筈だよ!


……執事の人はどうやらこの剣呑な雰囲気に気が付いたみたいだ。

この馬鹿貴族はシルフィやアイシャの様子なんて全くお構いなしだ。


『……坊ちゃま、坊ちゃま、いけませぬ』


慌てて、執事の人が止めようとしてるけど、ここまで来たらもう遅い。


「……貴様は私達に喧嘩を売りに来たのか?」


シルフィがとうとう切れた。

その様子を見て、貴族の(クロード)はやっと状況を理解したようだ。


「め、滅相もございません!……い、いや……このような汚らしい場所で……殿下が、不憫で……いや、その……」


「ほう、そうか良く分かった。その喧嘩買ってやろうでは無いか」


流石にこのままでは不味いと思ったのだろう、執事の人が強引に割って入ってきた。


「ご無礼ご容赦を、クロード様も悪気があったわけではなく、シルフィード殿下の身を思えばこその言葉。

 何卒、その意を汲んで頂き、ご容赦頂きますようお願い致します」


深く頭を下げる執事の人を見て、ふぅと溜息を吐き、シルフィは腕を組んだ。


「……次はないぞ」


シルフィは目を細めて執事と貴族の(クロード)を睨み付ける。

何とか許しを得る事が出来たと、目に見えて安堵の様子を見せた。。


「……で、貴様らは私に喧嘩を売りに来たのでは無いと言うのなら一体何しに来た?」


そこ言葉で、やっと用事を思い出したのだろう。

貴族の(クロード)は懐から手紙らしき物を取り出した。


「で、殿下がこの度、ご結婚なされると聞きましてな。

 ……相手が平民と聞きましたので、私を含め、今まで殿下に結婚を申し込んだ者達としましては

 納得いかない……そこで陛下に提案をさせて頂きました。

 お相手の方には結婚式の前に我々とあるゲームをして頂きます。

 我々に勝利して頂けば大人しく、この結婚を祝福させて頂きましょう。

 負けた場合は、この結婚を取りやめて頂きたい。

 陛下は、殿下が納得するならば、許可を出そうと言われております」


そう言いながら、シルフィに懐から取り出した手紙を手渡した。


「何故、貴様達に祝福して貰わねばならん?納得する訳がないだろう。

 用事は済んだな?さっさと私の前から消え失せろ、貴殿の顔を見ているだけで不愉快だ」


はっきりとシルフィに拒絶されると、悔しそうな表情を一瞬見せたのち、僕の事を睨み付けてくる。


「後悔しますぞ、殿下!」


捨てセリフを残し、馬車に乗り込み貴族の(クロード)は帰っていった。


「すまない、旦那様……私のせいだな」


「ううん、そんな事ないよ。悪いのはみんなアイツだよ……」


最後に残した言葉が気になるけど、取りあえず面倒事は去って行ったのだった。


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


また、お待たせしました。

少しずつ、(冒険者じゃないけど)冒険っぽい感じになって行くはずです。

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