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第06話 オークの買い取り

思わぬ強敵、オークを倒す事が出来た僕は少しだけ戦闘に自信を持つ事が出来るようになった。

そして、改めてスキルという物の有用さを実感する。


「昨日から手に入れたスキルだけでここまでの事が出来るんだ……もっと沢山スキルを手に入れたらどうなるんだろう」


思わず、口から溢れる言葉。


モンスターにはスキルとアビリティが存在する事も分かった。

町の人達からスキルを得る事は勿論ダメだけど、モンスターが相手ならば遠慮をする事はない。


スキルを奪い弱体化させ、そのスキルを駆使し、モンスターを倒す。


これなら、ひょっとすると僕は狩人になるよりも冒険者になった方がいいのかもしれない。


狩人を続けていっても遭遇するモンスターの種類は一定だ。

当然、得られるスキルはいずれ無くなってしまう。


だけど、冒険者ならどうだ?恐らく依頼を達成するために色々なモンスターに遭遇するだろう。

それはすなわち僕自身を強くしていく事に他ならない。


”狩人になる”という昨日決めた方針が、オークという強敵を倒した事で大きく揺らぎ始めた。


「取り敢えず、オークの解体を終わらせてしまおう。早くやってしまわないと血の臭いに釣られて他のモンスターが来てしまう」


再び、口に出しながらオークの解体を進める。


【カット】を連続して使用し、どんどん解体していく。


体重が100kg以上あると思われるオークだけに素材全部を収納袋に入れる事は出来ない。

容量が全く足りないからだ。


先に倒した兎の素材を捨てる事にして、オークのお金になる部位だけを選別して、収納袋に入れていく。


「……これはもっと容量の大きな袋を買わないとダメだな」


容量一杯まで、オークの素材を入れて急いで家路を急ぐ。


ここでも【脚力強化・小】と【俊足(小)】が大活躍だ。


いつもよりもかなり深い場所まで進んでいたのに、あっという間に森を抜け出し、町の裏門へと到着する。


顔なじみの門番さんに住民証を提示しながら挨拶をして、町へと入る。


そして、一路いつもの馴染みのお肉屋さんへ足を向けた。


「おじさーん、こんにちはー!」


「おう?坊主か、兎を持ってきたのか?」


おじさんが笑顔を浮かべて、返事をしてくれた。


「えへへ、実は今日は凄いんだよ!」


自慢げに僕はオークの肉をお店の買い取り台の上に置いていく。


「……お、おい坊主、これ……オークの肉か?」


流石に驚いたようだ、ちょっと嬉しい。


「うん、そうだよ。昨日神殿で授かったスキルのおかげで何とかやっつける事が出来たんだ!」


「まじかよ、そうか坊主も成人したんだったな。オークを倒すなんざ、よっぽど凄いスキルを授かったんだなあ……神様に感謝しなきゃなあ」


ちなみに世間一般に、他人のスキルは聞かないのがマナーとなっている。

目の前で使用すれば分かりやすいスキルなら分かってしまうのだけど、そこは気が付かないフリをするのが暗黙の了解となっている。


尤も王様のように自分の力を宣伝するために公にしている場合もあるんだけどね。


「うん、そうだね!感謝しなきゃね」


そんな会話をしているうちに、お肉として売る部位は全て出し終わった。

後は錬金術屋さんに売る分だ。


ちなみにオークの肉は実はそれなりに高価なんだ、非常に旨味があるお肉で猪に近い味がする。

猪も美味しくて人気のある肉なんだけど、オークはそれよりも油が乗っていて美味しい。


その割に中々持ち込まれないから必然的に高くなるという訳だ。


そんなオークの肉が40kg程ある。


一体いくらになるのか、わくわくするよ。


「ふむ、解体も上手に出来ているな。40kg……そうだな坊主の成人祝いに高めに買い取ってやろう」


そういっておじさんは少し考えて、僕に金貨を1枚と銀貨を23枚渡してくれた。


凄い!兎だったら一匹売っても銅貨3枚にしかならないのに!


ちなみに、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚と同じ価値がある。


僕の昨日までの1日の稼ぎが大体、銅貨8枚~銀貨1枚位。


だから、オークを一匹売るだけで123日分の稼ぎを得た事になる。


「まあ今日はお祝いだからな、次からオークは1kgで銀貨3枚だから覚えておけよ」


「うん、分かった!ありがとうおじさん!」


おじさんにお礼を言って、僕は次に錬金術屋さんに向かった。



「こんにちはー!」


錬金術屋さんは夫婦でやってるんだ、僕の声に反応してくれたのは旦那さんだった。

奥さんは留守なのかな?


「おお、マイン君!こんにちは」


いつものようにニコニコしながら挨拶を返してくれる。

とても格好いいお兄さんなんだ。


「んと、今日は薬草じゃなくてオークの素材持ってきました!」


僕がそう言うとお兄さんの笑顔が一瞬引きつった物に変わる。


「マ、マイン君がオークを倒したのかい?」


「うん!昨日授かったスキルのおかげです!」


肉屋のおじさん同様、お兄さんも僕が成人した事を思いだし、なるほどねと納得していた。


「じゃあ、素材を出してみて」


肉屋さんで出さなかった内臓類と瓶に入れた睾丸、目玉、そして魔石を取り出して買い取り台の上に乗せた。

ちなみに魔石は魔族の心臓に含まれている小さな石で、魔力を多く蓄積している。


錬金術でも使われるし、他にも魔道具の燃料の代わりとかにも使われる。


お店での買い取りで一番値段がつく素材なんだ。


「へえ、上手に解体したんだね、これなら高く買い取るよ……あれ?骨の類はどうしたんだい?オークは骨も買い取れるよ?」


「……捨ててきました、収納袋に入らなかったんです……」


そう、オークの総重量100kgに対し収納袋の容量は50kgしかない。

当然、嵩張る物や安くなる物については持ってくる事が出来ず、解体した場所に捨ててきてしまった。


「……なるほどね、確かお父さんの持っていたヤツだよね?そうすると50kg位かな?」


そう言いながら、お兄さんは何かを考えているようだ。


「取り敢えず、買い取りを済ませようか、内臓が全部で銀貨8枚、睾丸が銀貨20枚、目玉が銀貨4枚ってとこだね。魔石は金貨1枚だね」


思ったより高額で買い取って貰えるみたいだ、お兄さんにも感謝しないとね。


「ところでマイン君、今いくら持ってる?」


お兄さんは唐突に聞いてくる。


「……お肉屋さんで金貨を1枚と銀貨を23枚で買い取って貰いました」


僕がそう言うと、お兄さんは再び考え込む。


「そうすると今、金貨2枚と銀貨55枚か……。よしマイン君、オークをもう三匹狩る事は出来るかい?もし狩ってきてくれれば、今マイン君の持ってる金貨2枚と併せて10tの収納袋と交換しよう」


10tの収納袋と言えば金貨10枚以上はする高級品の筈、いくらオークを三匹狩ってきたとしても、とてもじゃないけど届かない金額だ。


その事をお兄さんに聞いてみると何となく納得する事が出来る内容だった。


なんでも、オークはそれなりに強いので安全にソロで狩るには冒険者ランクでC級以上の実力が無いと厳しいんだそうだ。

だけどC級の冒険者が戦うには買い取り価格がかなり安いらしい。


D級以下の冒険者が狩ろうとすれば、どうしても複数人で狩らないとダメなようで、ただでさえ安めの報酬が人数割されて全く旨味がないらしい。


そんな訳で常時討伐依頼といって、常に討伐依頼が出ている割に持ち込まれる数が少ないらしい。


だが、素材の中の睾丸が実は強壮剤の材料になるらしく、これを貴族が常に欲しているとの事でオークはどれだけでも買い取りたい状況との事。


そんな中、ソロでオークを倒せる新人が現れた。

しかし、収納袋の容量のせいで満足に素材を持ってくる事が出来ないという。


ならば、大きな収納袋を安く提供したとしても安定してオークを持ってきてくれるのなら、お兄さんにもメリットが発生する。


しかも昔からの知り合いとなれば、協力するのは当たり前との事だった。


ついでに僕への成人祝いも含んでいるという。


そういう事ならと、僕はお兄さんのその条件を受ける事にしたんだ。


「わかりました!オークやっつけてきます!」


僕の返事に満足そうな笑顔を見せた後、店の奥から黒色の小さな袋を持ってきた。


「それじゃ、先に渡しておくよ。先に持っておけば二匹以上狩れても持ってこれるだろう?」


父さんの時から付き合いがあるからこそ、信用して先渡ししてくれるんだろう。

ありがたく好意を受け取る事にする。


「ありがとうございます!早めに持ってきますね!」


そう答えた僕にお兄さんは気をつけてね、といつも通りの笑顔で送り出してくれるのだった。


【改稿】

2016/09/27

・オークの値段、収納袋の価格を改定。

2016/09/27

・オークの素材に魔石を追加、それに伴う取得価格と収納袋の価格を改定。

2016/12/18 

・全般の誤字を修正。

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