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第57話 マインの決心、シルフィの決断

義兄(アルト)さんが王都に戻った後、僕は応接間にアイシャとシルフィを呼び、話し始める。


「……二人にお話しがあります」


僕が緊張し、真剣な表情をしているからだろうと思う。

二人も同じように真剣な表情で次の言葉を待っているようだ。


「二人に僕のスキルの事を話そうと思います」


予想外の一言だったのだろう。

二人とも動きがピタっと止まる。


そしてしばらくの沈黙。


僕も彼女達も何も喋らない時間が続く。

最初に沈黙を破ったのはシルフィだった。


「……本当に良いのか?」


その問いに僕は無言で頷く。


アイシャは未だ驚きの表情を隠す事が出来ないようで、何かを言おうと口を動かすが言葉が見つからないようですぐに口をつぐむ。

そんな動作を繰り返している。


「旦那様が私達だけでなく、誰にも話さなかった秘密。

 兄上が帰った今、それを話すという事は私達を信用してくれたという事でいいだろうか?」


固まったままのアイシャを尻目にシルフィが再び僕に問いかける。


その問いにも僕は無言で頷き返す。


「……ふむ」


シルフィはその形の良い唇に右人差し指を当てて、何かを考えこんでいる。


そして再び、僕たちの間に沈黙が流れる。


うん、それはそうだよね。

ギルドを抹消されてでも秘密にしてきた事をいきなり話すと言われたんだ。


二人のこの反応は理解出来る。


「……それを聞く前に一つ確認をさせて欲しい」


考えがまとまったのか、シルフィが更に僕に確認をしてくる。

当然、僕の返事は「うん」だ。


けど、何を確認したいんだろ??


「旦那様は何かを秘密にしてる、そしてそれは人に知られては良くない物、という認識で間違いはない?」


うん?何でそんな確認が必要なんだろう……けど、答えるって言ったんだから答えなきゃね。


「……うん、そうだよ」


「……分かった。では旦那様、その話を教えて貰うのはもうしばらく待っては貰えないだろうか」


えっ!?どうして??


「旦那様が疑問に思うのは無理もないと思う。

 さっき、旦那様は私達を信じてくれたから話してくれると言った。

 だが、アイシャはともかくとして、私はまだ信頼してもらうには実績が無いと思うのだ。

 今後、クランとして活動をする事になる。

 ……実は父上からクランの結成が正式になったら一つ依頼をしたいと言われている。

 どうだろう、その依頼を受けながら私とアイシャを改めて見定めて貰えないだろうか」


……余りにも予想外の申し出だった。


初めて会った時、彼女は僕にスキルを尋ねてきた。

まさかこんな返事が返ってくるとは意外だった。


けど、シルフィに言われて気が付いた。

……きっと僕は焦っていたんだと思う。


お父さんとお母さんが居なくなってからずっと僕は一人ぼっちだった。


一人で食べるご飯、ただいまって言っても誰からも帰ってこない返事。

そんな生活が当たり前だと思っていた。


……だけど、今は違う。

アイシャにシルフィが居る。


家族が出来るんだ。


……だから、早く秘密を打ち明けて本当の家族になりたいと思った。

言ってしまえば気持ちが楽になれると思った。


確かにこれから一緒に暮らしていくんだから、いつかは言わなければならない。

けど、本当の家族になるって言うのはそんな事じゃないんだね。


見せかけだけじゃなく、お父さん、お母さんの様に心から信頼しあうのが家族なんだ。


信用は信じて用いる。

信頼は信じて頼る。


家族は信頼じゃなければ、ダメなんだと僕は思う。

信頼はシルフィが言うように時間を掛けてゆっくりと作っていく物なんだね。


「……分かったよ、アイシャもそれでいいかな?」


先程までの様子もすっかり落ち着いたようで、アイシャもシルフィの提案に賛同した。


「慌てなくてもいいのよ、ゆっくりとでね」


「旦那様が我々に話してくれると言う気持ちが分かっただけで今は十分」


急に場の空気が穏やかになった。

きっと僕が緊張していたのが悪かったんだね。


うん、これできっと良かったんだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ところでシルフィ、アイシャから聞いたかな?力の迷宮(ダンジョン)の事」


大枠の事は既にアイシャが話したらしい、……まあそうだよね、昨夜はずっと一緒だったんだし。


既に聞いているなら話は早いよね。


「これ、シルフィへのお土産」


そう言ってトロールゲイザーからのドロップ品”ライナス・スワード”を収納袋から取り出した。

【片手剣・極】を持ってる彼女ならきっと上手く使えるだろうと思うんだ。


「……これは、凄いな……これを私が貰ってしまってもいいのか?何もしてないんだが……」


「うん、勿論。僕やアイシャが持ってても宝の持ち腐れだしね」


シルフィが喜ぶ顔を見て、思わず僕も笑顔になってしまう。

うんうん、これだけで良かったと思うよ。


そして、更に”スピードシューズ”と”シエルスーリエ”を取り出す。

移動速度が上がる靴だ、僕は【俊足(小)】があるから特に必要としない。


問題は”シエルスーリエ”をどちらに渡す、かだよね。


ドロップ品は基本的に装備した人間のサイズに自動で変更になる魔法が掛かっているからどちらでも使用する事は出来るんだよね。

ちなみにお店で売ってる装備はちゃんと体にあった装備を選ばないとダメなんだ。


前に出て戦う事を考えれば、シルフィの方がいいのかな?

空中歩行が出来るというなら攻撃の幅が広がると思うし……練習は必要だろうけど。


「じゃあ、これをシルフィに、こちらをアイシャに渡しておくね」


ちなみに”スピードシューズ”は黒地に白いラインが入ったシンプルな形の靴だ。

”シエルスーリエ”も形は良く似てるけど、少しスマートな感じで色は白色だ。


なんでもシルフィは純白のサーコートを着て戦うらしいから、色味的にも良かったかもしれないね。


「アイシャのヤツは……スピードシューズか?

 私の白い方は……良く似ているがちょっと違うな。

 私のサーコートに中々合いそうだ」


”スピードシューズ”の事は知ってるみたい。

まあ、カシューさんも狙っていた訳だし、結構有名なんだろうね。


多分”シエルスーリエ”はレアモンスターのレアドロップだから、きっとみんな知らないんだろうね。


アイシャもシルフィも気に入ったみたいで、良かったよ。


さて、次は……シルフィから王都での話を聞かなきゃね。

何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


※8時12分に以前告知しておりましたレベルの見直し作業を完了致しました。

詳細は活動報告に書かせて頂きました。


※装備品のサイズ変更に関します一文を追加しました。


※感想に頂きました誤字、表現を修正致しました。

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