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第54話 CASE:アルト

「私はアルト・オーガスタと言う、君が妹の婚約者……か」


愛する我が妹が選んだ男、マインとか言ったか。

第一印象からすれば、正直そんなに強そうには見えない。


だが、妹が自ら嫁ぐと言うのだ、それなりの実力はあるのだろう。

オーク・キングを単独で倒したとも言うしな。


しかし、15歳……成人したてと聞いたが、体の鍛え方が全く足りていないように見える。

……これで、本当に戦えるのか?


報告に聞いたスキル【鑑定・全】と【カット&ペースト】だったか。

これ以外にも何かしら秘密があるだろうとの父上の見解だが……。


まあ、そんな事はどうでもいい。

何を隠してるのかは俺には興味が無い。


ただ、この少年がこの先、本当に妹を守る事が出来る男なのか。

それを見定めなければ俺は絶対にこの男を認める事はできんし、彼にとっても不幸になるだけだろう。


そんな事を思案していると、聖弓殿までもが彼の男に嫁ぐという。


ふむ……これを利用させてもらうか。


「……まあ、いいだろう。ところでマインと言ったな。

 良かったら私に君の実力を見せて貰えないか?大事な妹を任すと言うんだ。

 妹を……いや聖弓殿もだな、二人の女性を守る力があるのか兄として男として見定めさせて貰いたい」


よし、これでなし崩しではあるが、舞台は整った。

後は文字通り、彼の力量を計るのみだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



模擬戦で死んで貰う訳にはいかんからな。

真剣では無く木剣を使う事にする。


ヤツも真剣では俺に全力で掛かってこれないだろう。

それではヤツがシルフィを娶るに相応しい実力がどうかを計るという目的は果たせないからな。


それに木剣とはいうが、黒檀の原木から宮廷魔術師が魔力を篭めて作り上げた一品だ。

下手な真剣よりも余程強力な武器ではある。


死ぬ事は無いだろうが、怪我の一つや二つはする事になるかもしれんな。

まあ、聖弓殿がいるんだ、すぐに治して貰えるだろう。



……さて、と。

やっとやる気になったようだな。


ん?今、何かしらの自己強化をしたのか?

……うっすらと発光してるな。


ふん、これが彼の隠している秘密という奴か、なるほど甘く見ては痛い目を見るのは俺の方という事だな。


【腕力強化・大】【補助魔法・速度増加】をこちらも使用する。


「……ほお……どうした掛かってこないのか?」


さて、一丁かましてやるか!


「来ないのなら、こちらから行くぞっ!」


全力でヤツの懐に飛び込んでいく。


……俺の速さが予想外、だったという訳か?戦闘中に驚いている余裕がお前にあるのか!?隙だらけだぞ!


フェイントを掛け、ヤツの死角に回り込む。

何か知らんが、自己強化をしていたからな……死にはすまいっ!!


ヤツの右脇腹を目がけて大きく剣を振るった。

その衝撃をまとも受けたアイツは面白いように吹き飛んでいった。


……しかし、この感触、なんだ?スキルで防御した訳では無いな。

一体なんだ?やたら衝撃が鈍く感じたが……。何か着込んでいるのか?


まあ、いい。

今のやり取りで理解出来た。


彼の戦闘技術、間違いなく素人同然だ。

体の動かし方、使い方を全く理解していない。


持っている才能は確かに高そうではあるが、それを全く生かせていない。


……もう少し、追い込んでみるか。

吹き飛んでいった彼を追撃すべく行動する。



「い、一体何があった……」


今のやり取り、見えていなかったようだな。

ヤツの眼前に立ち、その頭上から木剣を打ち下ろす。


持っていた短剣で防御か?どうやら状況判断も甘いらしい。


短剣なんかで片手剣の打ち下ろしを受ければ……ほら見たことか。

唯一の得物が手元から無くなってしまったぞ、さあ?どうする?武器が無い中、どうやって戦ってみせる?


俺の振るった木剣は、ヤツの短剣を打ち砕き、そのまま右の肩口に命中する。


「なんだ隙だらけだぞ!!もっと相手の動きを読めっ!」


こんな程度でオーク・キングを倒せる訳がない。

あれは本能に突き動かされる低級モンスターと違い、知能があり、規格外の何かしらの力をもっている。


それを倒す事など、絶対に不可能だ。


だが、彼はそんなオーク・キングを倒した。

まだ、本気では無いと言う事なのだろうか?



……ん?なんだ?回復してるのか?

面白い、なるほどな。


『……ふむ……今度は回復か……興味深いな』


それがオーク・キングを倒した力の一端か?

面白い、見せてみろ、お前の力を!その力で見事俺を倒してみるがいい!


ほお、さっきより随分思い切った突進だ。

また何かスキルを使ったか?随分、いい動きじゃないか。


だが、あいつは一体どれだけ隠し球を持っているんだ。

大したもんだ。


それに、既に武器が無いというのに勝負を諦めない精神力は中々見所がある。

うちの騎士団の連中なら、ここで降参するやつもいるからな。


まあ尤もこんな程度で諦めるようでは、本気で(シルフィ)をくれてやるわけにはいかん。


そんな事を考えていると、ヤツの右腕がとんでもない速度で向かってくる。


『なっ!?』


慌てて回避し、それに合わせてカウンターで迎え撃つ。

カウンターは見事に成功し、再びヤツは後方へと吹き飛んでいった。


……今のは危なかった、隙が大きいから何とか迎撃出来たが、あの一撃を喰らえば流石の俺も不味かったかもしれん。

拳からあんな鋭い風切り音が聞こえてくる事など、中々聞いた事がない。


「兄上、やりすぎだ!もう辞めてくれっ!!」

「マイン君っ!!」


(シルフィ)と聖弓殿の叫び声が聞こえてくる。


ああ、なるほど……吹き飛んだときに額でも切ったのか?

血が流れ出ているから、騒いでるのか。


模擬戦だといったのだがな、(シルフィ)め、この程度で止めに入るとは……。


やはり婚約者相手では流石の姫将軍も甘くなるという事か。


だが、彼は負けたと言ったわけではない。

ふらつきながらも立ち上がり、戦う意思を見せている。


女が割って入っていい場面では無いし、男が本気で勝ちたいと願い立ち上がったのだ。

それに答える事こそがヤツへの礼儀と言う物だろうよ。


……とはいえ、流石にさっきのカウンターはダメージがでかかったようだな。

彼の攻撃が鋭かったのが、却って仇となったか。


強度の高い黒檀の木剣とヤツ自身の力、それに俺自身のスキルである【腕力強化・大】と【片手剣・聖】。

立てただけでも大したものだ。


ふむ、今は未熟。それは間違いない。

だが、本格的に戦いを学べばヤツはとんでもなく強くなれるだろう。


その片鱗は間違いなく見えた。

そして、勝ちたいとあれだけふらつきながらも立ち上がったのも見所があるといえるだろう。


性格的にも悪くは無かったとおもう。


なるほど、(シルフィ)が嫁ぐには……良い人間なのかもしれんな。

仕方ない、認めてやるか。


「……中々見所はある。だがもっと自分の力を知り、活用する術を磨かねばな。

 この敗北をしっかと己の糧にしろっ!!!」


まずは、この戦いを終わらせようか。

積もる話はそれからだ。


何時もお読み頂きありがとうございました。


思わぬ、ご意見に正直驚いています。

流石にこれだけのご意見を頂いておりますので、活動報告の方に

私の考えをUP致しました。


また、本日のアルト視点の話も本来上げる筈だった話を取りやめ

急遽、割り込みさせて頂きました。


皆様が納得出来るかは別として、活動報告の内容と合わせてご覧頂ければ

幸いでございます。


今後とも宜しくお願いします。

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