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第53話 アルト・オーガスタ

ついにお風呂解禁です!

親方に言われていた養生期間が終わり、自宅でお風呂に入れるようになったっ!


目が覚めてすぐにお風呂に向かう事を決める。

アイシャはまだ隣で寝ているので起こさないようにそっと布団を抜け出した。



お風呂に入った途端、何とも言えない木々のいい香りが漂ってくる。

なんか、これだけでリラックス出来るよね!


早速、収納袋から風呂桶の上部に開いている窪みに【常時:水】×5の小石を入れていく。

各面の1つずつ入れる事で凄い勢いで水が溜まっていく。


水が桶の下部の窪みを通過した辺りで【常時:熱】の小石を入れていく。

そして各面の小石に【常時:熱】ペーストで×5にしていく。


すると水がどんどん温めれて湯気が立ち上がっていく。


よし!成功だっ!……と喜んだのもつかの間、大失敗だったんだ。


次第に水がお湯を通り越して熱湯になり、水が一杯になる頃にはボコボコと煮立ち始めた。


まずい!熱が強すぎたんだ!!!

すぐに【常時:熱】をカットして元の小石に戻し、【常時:水】も同様に取り出し、両方とも収納袋に放り込む。


まるで、絵本に出てくる地獄の釜のような風呂桶を見て、呆然とする僕。


「……やっちゃった、どうしよう……これ」


お湯を抜いて水をいれて薄めるしかないよね、やっぱり。

風呂桶の横に付いている排出口の蓋を開けると猛烈な湯気と共に熱湯が抜け出てくる。


お湯が半分位になったタイミングで、排出口の蓋を閉める。

万が一、火傷しても困るので【再生】を貼り付け、【火属性・耐性】を発動しておくのを忘れない。


無事、蓋を閉めれた事を確認し【再生】を元の小石に戻し、今度は【常時:水】×3を再び、上部の窪みに設置する。

ふう、今度はどうやら上手くいったみたい。


これは慣れるまで結構大変かもしれないな……。


まあ、何はともあれお風呂は沸いた。

早速、寝間着を脱ぎ捨てて湯船に肩までつかってみる。


「おぉ♪」


……何て気持ちがいいんだ。

銀の鈴亭で入った朝風呂も気持ちが良かったけど、このお風呂は更に気持ちがいい。


疲れが抜けていくだけでなく、何かじわじわと力が蓄えられていくような感じがするよ。

更にこの木の香りが、すごくいい。



「マイン君、お風呂に入ってるの?」


ん、なんか以前もこんな事があったような……。


「う、うん……」


そう答えると案の定、裸のアイシャが入ってくる。


「えへへ、来ちゃった」


こうして、再びアイシャと朝風呂に入り十分に満足してから二人揃って風呂を出たのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



朝ご飯を食べながらの話題は勿論、お風呂の事だ。


「すごいお風呂だよね、あれ!銀の鈴亭よりも気持ち良かった気がするわね」


「うん、なんかまだ体がポカポカするよね」


「親方頑張ってくれたんだよね、今度お礼に行かないとね」


そんな話題で盛り上がっていると、玄関から声が聞こえてくる。

僕が立ち上がろうとするとアイシャが「私がいくわ」と立ち上がり、玄関に歩いていく。



「え!?」



……ん?なんかアイシャが驚いた声上げてるぞ、どうしたんだろ?


様子を見に行くかと立ち上がろうとすると、アイシャが困った表情で戻ってきた。


どうしたんだろ?


……ん?後ろに誰かいるな。

あ、シルフィじゃないか!少し早かったんだねって、誰か知らない男性もいるよ?


一体、誰だろ?見た事ない人だけど……。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「旦那様、紹介しよう私の兄だ」


「私はアルト・オーガスタと言う、君が妹の婚約者……か」


見知らぬ男性……もとい、この国の第一王子、すなわち次期国王が僕の目の前に座り、僕の事をじっと観察している。


アイシャは王子を前にしているからか、やたら恐縮しているみたいだ。


「すまない、旦那様……兄上がどうしても一緒に来ると聞かなくてな……

 何度も王都に来るときまで待てといったのだが……見ての通り、頑固でな」


シルフィは申し訳なさそうに僕に頭を下げてくる。


「実は兄上はシスコン気味でな……、私が嫁に出る事が気に入らないのだ……。

 それで自分の目で私の伴侶に相応しい男なのか見定めると言い出してな、強引に付いてきたのだ」


「ん、んんっ!」


シルフィの小声が聞こえたのだろう。

王子様はわざとらしく咳払いをする。


けど、そりゃ心配だよね。

可愛い妹で王女様が平民の僕に嫁ぐなんて聞いたら、心配になるのは当然だと思うよ。

シスコンじゃなくたって、当然の考えだと思う。


成り行きで決まった結婚とはいえ、僕は二人と家族になろうと決めたんだから、何とか認めて貰わなくっちゃね!


「…そう言えば、何で聖弓殿がここにいるんだ?」


話題を変えたいのだろう、王子様は急にアイシャの事を聞いてきた。

アイシャの事を二つ名で呼ぶって事は、シルフィ同様面識があるのかもしれないね。


「ん?兄上には言ってなかったか、アイシャも私と一緒に旦那様に嫁ぐのだ」


シルフィがそう言うと王子様のこめかみがピクっと動いた気がする。


ああ、なんか気を悪くしたかもしれないよ……。

そりゃあ、重婚なんてイメージ悪いよね。


ひょっとして印象最悪じゃないのかな?


「……まあ、いいだろう。ところでマインと言ったな。

 良かったら私に君の実力を見せて貰えないか?大事な妹を任すと言うんだ。

 妹を……いや聖弓殿もだな、二人の女性を守る力があるのか兄として男として見定めさせて貰いたい」


うん、シルフィと結婚したら義理の兄になるんだ。

仲良くしたいし、認めても貰いたい。


頑張ろう!


「はい!是非お願いします!」


僕はいつもように元気いっぱいに返事を返す。


「ほう、良い返事だな。では早速手合わせをしようか」




アルト・オーガスタ

種族:ヒューム

LV:43

性別:男

年齢:26歳

職業:オーガスタ王国第一王子


【スキル】

片手剣・聖Lv7

腕力強化・大LV6

補助魔法・速度増加LV5




うわっ、凄いや……国王様と同じスキル構成だ。いや、補助魔法まで持ってるぞ。

これがアイシャの言ってた王族が優れたスキルを持つ者同士での婚姻を進めている理由なの!?


けど、スキル構成自体は僕の方が今では圧倒的だ、多分、なんとかなると思う。


問題は何処までスキルを使うかどうか、だよね。

なるべく戦闘時間を短くして、使うスキルは制限して隠す方向で行こうかな。


……けど、シルフィを任せる事が出来る男と認めて貰わないとダメだもんね。

不利になっても正々堂々と戦おう!



「最初に言っておくが、あくまでもこれは模擬戦だ。

 無茶、無理は禁物だから、そこはよく理解するように」


「はいっ!」


「うむ、良い返事だ!オーク・キングを単独で倒したその力存分に振るってみるがいい」


そう言って、木で出来た短剣を僕に向かって放り投げてくる。

僕がそれを受け取った時には既に王子様は臨戦態勢で、片手の木剣を構えている。


やむなく僕も木で出来た短剣を手に持ち、構えを取る事にする。


王子様に対応するべく【身体強化・大LV3】【腕力強化・極LV2】【脚力強化・小LV3】を発動する。


「……ほお……なるほど、どうした掛かってこないのか?」


恐らく僕が自己強化したのを理解したのだろう、王子様の体が薄く発光し、構えが深くなる。

王子様も……スキルを使ったんだ。


「来ないのなら、こちらから行くぞっ!」


王子様がもの凄いスピードで突っ込んできた!!

え?な、なに!?【脚力強化】は持ってない筈なのにこの速さはっ!?


あ、そうか……【補助魔法・速度増加】かっ!


僕がその動きに驚いていると、視界から王子様の姿がいきなり消えた。


「うがあっ!!!」


全く、訳が分かっていないうちに右の脇腹に途轍もなく重い衝撃がぶつかってきた。

その衝撃を何の心構えが無いまま受けた僕はそのまま数メートル向こうへと吹き飛ばされてしまった。


「い、一体何があった……」


そう口にしながら、立ち上がろうとすると、すでに眼前で王子様が木剣を大きく振りかぶって振り下ろす所だった。

咄嗟に手にした短剣で受け止めようとしたが、余りの衝撃で僕の手から弾き飛ばされてしまった。


王子様の木剣は、そのまま僕の右肩に片手剣は命中する。


「うぐっ」


「なんだ隙だらけだぞ!!もっと相手の動きを読めっ!」


駄目だ、無茶苦茶強いよ……。

なんで僕よりもスキルも無い筈なのにこんなに強いんだ……。


【魔法・回復大】で受けたダメージを応急手当し【補助魔法・徐々回復大(体力)LV2】を使用しておく。


『……ふむ……今度は回復か……中々興味深いな』


何か小声で呟いているみたいだけど、今ならいける!

今度はこっちの番だよっ!!


全力で王子様に懐に潜り込こもむべく【俊足(小) LV2】を発動し、突っ込む。


「うむ、そうだ!その気概が大事なのだっ!……しかしっ」


王子様の呟きを無視して、一気に懐に入り、そのまま王子様の鳩尾に狙いを付け右腕を振り抜いた。


【格闘・極Lv4】があるんだ、ただじゃ済まないだろう!


……が、僕の渾身の攻撃は王子様にかすりもせず、反対にカウンターで振るわれた攻撃が命中し、吹き飛ばされてしまった。

馬鹿な、何で当たらないんだ……。


吹き飛ばされた時にぶつけたのだろうか、額から血が流れ落ちてくる。



「兄上、やりすぎだ!もう辞めてくれっ!!」

「マイン君っ!!」


シルフィとアイシャの叫び声が聞こえてくる。


……ま、負けてたまるか……。


よろよろとふらつきながら立ち上がり、何とか構えを取る。


「……中々見所はある。だがもっと自分の力を知り、活用する術を磨かねばな。

 この敗北をしっかと己の糧にしろっ!!!」



王子様のその言葉を最後に僕の意識は暗闇の中へと落ちていった。


何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。



【改稿】

2016/12/10 

・模擬戦前にマインの心理状態の説明分を追加。


2016/12/11 

・マインの台詞の一部を修正。

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