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第49話 力の迷宮(4)

予想外のレア・モンスターの登場に驚きはした物の地下一階のボスも倒す事が出来た。

やりすぎだとアイシャに怒られてしまったが、死んだり怪我をするよりは全然いいと思うので反省はしていない。


アイシャには笑ってごまかしておく事にする。


さて、お待ちかねのドロップ品だ。

カシューさんの話では”スピードシューズ”と言うのがドロップするみたいだけど僕にはドロップ効果を上げるスキル【プロバビリティー】がある。


何か良い物が出てくれると嬉しいのだけど。



名前:スピードシューズ

敏捷:+12

階級:上級

属性:

特性:移動速度2%アップ



名前:シエルスーリエ

敏捷:+25

階級:超級

属性:風

特性:移動速度3%アップ

   空中歩行



ドロップはこの二つだった。

二つとも靴で、一つは入る前に聞いていたスピードシューズ。


移動速度が上がるという事は【俊足】スキルがあるのと同じ感じなのかな?

なるほど、スキルで能力を上げるのでは無く装備で能力を上げれるって事なんだね。


そしてもう一つは、多分レアドロップなんだと思うけどスピードシューズの上位版なのかな?

え?……”空中歩行”?……という事は空を歩けるって事!?


……なんか凄いな、コレ。


取りあえず、二つとも収納にしまっておこう。

アイシャとシルフィに使って貰うのがよさそうではあるんだけどね。


「カシューさん達になんか悪い気がするね」


僕がそう言うとアイシャは首を横に振って「迷宮(ダンジョン)探索とはこういう物よ」と教えてくれた。

確かに言い始めたらきりが無い話ではある。


俺達が先に並んでいたから、それは俺の物だとか言われても困ってしまう。


気を取り直して、次の階層へ向かう事にする。

今回の目標であるトロールがいる階層だ。


転送石にきちんと触れておき、次の階層へと向かうのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



やはり、力ずくでも止めるべきだったか。


いくらアイシャが聖弓と呼ばれるスゴ腕だったとしても、冒険者を引退して数年経っている。

それに彼女の得物はその二つ名が示すように弓だ。


弓はその性質上、どうしても標的から距離を取らざるをえない。

その能力を生かす為には優秀な盾役(タンク)が必要となる、それは絶対条件だ。


それなのにアイシャと一緒にパーティを組んでいたのは、成人になったかならないか年若い少年が一人。

どう考えても盾役(タンク)が出来るとは思えない。


仮に盾役(タンク)の技術もしくはスキルが有り、役割を果たせるとしても、ここに出るボスはパワー・オーガの上位種、ストロング・オーガだ。

凶悪なまでの腕力と防御力を持つ化け物である。


俺達でも二十人掛かりで、なんとか倒す事が出来ている強敵である。

とてもたった二人で挑むような敵では無い。


だが、アイシャとあの少年が二人揃って援護は要らないと言った。

そう断言されてしまえば、俺にその行動を邪魔する権利も資格もない。


迷宮(ダンジョン)への挑戦は自己責任なのだから。


だが、彼らがボス部屋へと入っていく姿を見送り、どうしても後悔の念に駆られてしまう。

あの少年はともかく、しばらく会っていなかったとは言え、アイシャは昔からの友人である。


むざむざ、こんな所で指をくわえて彼女が死んでいくのを見守るというのは後味が悪いと言わざるをえない。


彼女達がボス部屋に入って数分後、部屋の中から何かが爆発したような轟音が聞こえてきた。

……これは魔法の爆発音なのか?


アイシャが攻撃魔法を使うという話は聞いた事が無い。

だとすれば……あの少年が魔法を使ったと考えるのが妥当だろう。


そうか、あの少年は盾役(タンク)では無く、攻撃役(ダメージディーラー)だったか。

となると、アイシャの弓と少年の魔法による短期決戦が彼らの戦略と言う事だろう。


そして、予想通り轟音が鳴り響いてから五分程で周りは静けさを取り戻した。


そしてボス部屋の扉の封印(ロック)が解かれ、中を覗くと彼らの姿は何処にも無かった。

挑戦者がフロアボスに負ければ、その屍はしばらく部屋の中に残され、一定時間で迷宮(ダンジョン)に吸収される。


彼らの姿が無いと言う事は無事に勝利を得たという事に他ならない。


その結果に知り合いが死ななくても良かったと思う反面、たった二人でボスを討伐したその力に恐怖も感じるのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



#力の迷宮(ダンジョン)、地下二階


「なんとか目的の階に来る事が出来て、良かったよ」


この階は別に攻略する必要は無い。

あくまでも目標はトロールだ。


ちなみにトロールはとにかくデカイ。

オークやオーガも大きいが2~3メートル前後が一般的なサイズだ。

オーク・キングで5メートル程である。


対してトロールは小さい個体でもオーク・キングと同じ位の大きさである。


だが、反面トロールの動きは非常に鈍重で防御力もオークに比べて随分低い。


それにも関わらず、オークよりも格上のモンスターと言われるのには訳があった。


一つは、攻撃を受けダメージを受けても直ぐさま回復してしまう高い再生能力。

そして、その顔面の1/3以上を占める大きな単眼から放出される強力な衝撃波。


この二つの能力がトロールを討伐を高難度に引き上げているのだ。


実際、中途半端な火力ではトロールを倒す事は出来ない。

長時間戦い続けた挙げ句、最終的に倒しきれず全滅したパーティも数多く存在する。


それ故、オークよりも格上モンスターと認識されているのである。


ちなみにこの階のボスは”トロール・ゲイザー”というらしい。

ただでさえ厄介なダメージ再生能力だと言うのに、コイツの再生能力は更に強力らしい。


通常ならばレアモンスターの方が強いと言うのが迷宮(ダンジョン)ボスの常識であるが、コイツに限って言うならばレアの方が倒しやすいようだ。


実際、このフロアを突破したパーティは殆ど存在していない。

突破した者達も偶然遭遇したレアモンスターを倒した者達が殆どで、トロールゲイザーを倒し突破出来たのはほんの僅かしか存在しない。


僕達は周りの様子を慎重に観察しながら地下二階を進む。

【気配察知・中】を使用しているので、不意打ちを受ける事は無い。



10分程フロアを徘徊し、遂に目的のトロールに遭遇する事が出来た。



名前:パワー・トロール

LV:46

種族:魔族

性別:♂


【スキル】

再生

衝撃の魔眼

豪腕・極


【アビリティ】

無し



「ファッ!?」


つい、叫んでしまった。

え?衝撃って……魔眼って何さ!?


突然叫び声を上げた僕にアイシャが怪訝な顔をする。


「どうしたの?マイン君」


僕は慌てて首を激しく振りながら、何でも無いよとごまかしておく。

いや、何でも無いわけないだろと心の中で自分自身に突っ込みを入れてしまったのは内緒だ。


さて、オークより上位モンスターと呼ばれる理由、噂の再生能力と衝撃波とやらの力見せて貰う事にしよう。

まず、スキルを奪う前にその力を目で見て確認してみる事にする。


再生と言う位だから、傷なんかは回復するんだろうけど、部位欠損とはどうなんだろう?

もし、失った腕や足すら回復出来ると言うならオークよりも驚異というのは理解できる。


奪った後に実験するにしても、流石に自分の体で試す気はしないもんね。


魔眼も”眼”なんて付いてる位だから、どんな感じで発動するのか確認したい。

もし、眼から何かが飛び出るようなスキルだとすれば、他人に使用している所を見せれる訳ではないからね。


「アイシャ、いくよっ!」


そう言って、トロールに突撃していくとアイシャも弓を引き絞り攻撃を開始する。

僕が取り付くよりも先にアイシャの放った矢が連続してトロールへと命中した。


うん、聞いていた通り、動きはかなり鈍い。

これだけならオークやオーガの方が強敵と言える。


……だけどっ!


アイシャの攻撃で傷を負った部位が目に見えて回復していく。

なるほど……噂通り、凄い回復力だね。


次は僕の攻撃を受けてみろっ!

右手にライトニングエッジを持ち、左手には始まりの短剣を持つ。


動きが鈍いトロールに左右から繰り出す連撃が面白いように命中する。

【双剣・極】以外のスキルを乗せていない攻撃ではあるがレベル差が大きいため、相当のダメージを与えている筈だ。


これだけの攻撃が命中すれば、オークならとっくに倒せている筈だが、トロールはまだ持ちこたえている。

更にダメージを与えようと踏み込んだその時だ。


”何か”が僕に命中し、吹き飛ばされた。それと同時に全身に激しい痛みが走る。

言葉にするなら、まさに”衝撃”。


目に見えない力の塊というのだろうか。

同じ目に見えない風魔法とは異質の物、これが【衝撃の魔眼】なんだろう。


「マイン君っ!!」


アイシャが僕に駆け寄り【魔法・回復大Lv4】で回復してくれる。


「……痛たたたっ……ありがとう、アイシャ」


……これはすっごい厄介だね。

全く予備動作無しに発動したように感じる。


「ねえ、アイシャ。今のアイツの攻撃見えた?」


「一瞬、目が光った気がしたけど……全く見えなかったわ」


僕の言いたい事が分かったんだろう、欲しかった答えがすぐに返ってきた。

恐らく目が光ったと言うのが予備動作なんだろうけど、目に見えない攻撃だからはっきりと断定出来ない。


逆に言えば、懸念していた外から見ても何をしたか分からないと言う事だ。

僕が人前で使っても大丈夫そうだね。



「……確かにオークよりやっかいだね、アレ」


あれだけ斬りつけ、あと少しで倒せる所まで追い込んだ筈なのに今の僅かな時間でかなり回復しているように見える。


魔眼で弾き飛ばされてしまったので、部位欠損の確認までは出来なかったけど、あれだけの勢いで回復するんだね……。

似たようなスキルで【補助魔法・徐々回復大(体力)LV2】があるけど、再生の方が効果は高いと思う。


……よし、これでスキルの事は良く分かった。


僕は素早く【再生】と【衝撃の魔眼】をカットして僕に貼り付ける。

【豪腕・極】は例によって小石に貼り付け収納袋に放り込む。


一方、トロールはと言うと全回復する前に【再生】が無くなってしまい、困惑しているようだ。


よし、後は一気に倒してしまおう!


【豪腕・極】【身体強化・大】【腕力強化・極】を重ねて攻撃力を上げる。

更に【王の威圧】を発動。


するとトロールがガクガクと震え始め、全く身動きが出来なくなっている。


僕は地面に落ちていた拳大の石を拾い、心臓があると思われる胸を目がけて全力で投げつける。


スライムを小石で倒していた時の比では無い勢いで石は命中し、……トロールは前のめりに倒れたのだった。


何時もお読み頂きありがとうございました。

力の迷宮(3)の後書きで書かせて頂きました一部のスキル、装備品の名前や効果の変更を完了致しました。


活動報告にて詳細は書かせて頂いております。


今後とも宜しくお願いします。


11/4 皆様よりご指摘頂いた戦闘前にスキルを奪わなかった理由を追記しました。

また、予備動作につきましても表現を若干修正しました。


ご指摘ありがとうございます。

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