第43話 【鑑定・全】レベル3
色々な実験の結果、出来上がってしまった規格外の収納袋。
これも人には言えないよね……。
容量自体はそれ程大きくは無いみたいで感覚からすると多分500kg位までじゃないかと思う。
まあ、今後、時空魔法のレベルが上がればもっと大きい容量の物も作れるかもしれないけどね。
ふう、と一息ついて寝転がる。
実験に没頭していたから、時間の感覚が麻痺しちゃってるけどもう夕方位じゃないだろうか。
結局、オークを売りに行ったり、魔法の実験をしたりで一日が過ぎてしまった。
金銭的な蓄えは今の所、充分にある。
前みたいに暇を惜しんでは狩りにいく必要もないので、問題は無いのだけど長年に渡り、蓄えてきた貧乏性と言うヤツが何となく焦燥を感じさせる。
「……思えば遠くにきたもんだ」
つい、ぼそっと口に出してしまう。
ここ数日間、本当に色々あった。
生活環境も激変した。
スキルを得た者がそれにより大きく生活を変化させたという話は結構聞く。
けど、僕ほど変わった者はきっといないだろうと思う。
強くもなって、美人のお嫁さんが二人も出来た。しかも、一人はこの国の王女様だ。
ギルドの事は残念だったけど、代わりにクランって言うのを作るようになった。
……クランはシルフィが帰ってこないと、実際どうなるかはわからないんだけどね。
スキルの事で将来に不安が無い訳では無いけれど、きっと何とかなる……よね?
今は出来る事を精一杯やって、お父さんとお母さんのような暖かい家庭を作れるよう頑張ろう。
そんな決意を心に誓っているうちに玄関から「ただいま」という声が聞こえてくる。
どうやらアイシャが帰ってきたみたいだ。
最後のギルドはどうだったんだろう、なんか僕の為に申し訳無いよね。
朝、出かける前にそんな事を話したら「自分で決めた事だから気にする必要はないのよ」と言っていた。
だから、これ以上は口には出さないけど、心の中でやっぱりお詫びを言うんだ。
「おかえりなさい」
部屋に入ってきたアイシャに声をかける。
僕の声を聞き、にっこりと笑顔を浮かべて、改めて「ただいま」と返してくれた。
ささやかで単純な事だけど、家で家族とこういった挨拶を交わす喜びは、僕の心にかつてない満たされた気持ちを与えてくれる。
たった二言の会話で、僕達の空気感は一気に弛緩したものとなり、会話が自然と弾むのだった。
「何とか無事にギルドでの仕事は終わらせる事が出来たわ、これで姫様が帰ってきさえすればクランに集中出来るわね」
僕が出したお茶を飲みながら、アイシャが話していく。
「そういえば、マイン君。オーク・キングとの戦いで短剣折れちゃったんじゃないの?」
恐らく気を遣ってくれてるんだろうな、トゥワリングの事は聞いてこない。
申し訳ない気持ちが心に少しずつ積もっていく。
僕のためにギルドを辞め、僕を支えると言ってくれたアイシャ。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
こんな気遣いだけでも、安心する事が出来る。
「うん、武器屋のおじさんからいい武器を買う事が出来たんだけど……流石にオーク・キングには通じなかったね。
なので、今日また新しい短剣を買ってきたんだ!みてみる?」
そういいながらも返事を待たずに、今日売って貰った”ライトニングエッジ”を取り出す。
ついでに普段使いになる”始まりの短剣”も出して二本を机の上に置く。
名前:ライトニングエッジ
攻撃:+50
階級:超級
属性:雷
特攻:魔族
特性:クリティカル
名前:始まりの短剣
攻撃:+10
階級:無級
属性:成長
特攻:無し
必要素材:トロールのなめし革×10、アイアンインゴット×20、上級魔石
!!?
あれれ!?なんか”始まりの短剣”に項目が増えてる!?
なんだ、この素材って!?
アイシャはライトニングエッジが気になるのか、手にとって眺めている。
随分と集中しているのだろう。
鑑定結果を見て動揺した様子に気が付きはしなかったみたい。
ふう、危なかった。
しかし、どういう事なのかな?
前に見たときはこんな表記は確かに無かった。
あ!?そういえば……以前もこんな事あったよね!?そう、鑑定のレベルが上がったからだ!
取り敢えず、訳が分からないときは鑑定して確認だ。
【必要素材】:短剣を成長させるのに必要な素材。スキル錬成が必要。
本日、何度目かの衝撃!何?短剣を成長させる素材って何なの?
武器が成長するなんて聞いた事ないぞ……。
成長するって事は……強い武器になっていくって事だよね……多分。
「良い短剣ね、コレ。これなら新しい物を用意しなくてもいいかな?」
アイシャの声ではっと我に帰る。
とにかくは今はアイシャとの話に集中した方がいいね。
アイシャに失礼だしね。
そう思いながら、しばらくお互いの今までの生活や過去の出来事を交換しあっているうちにお腹がすいてきた。
アイシャも一緒だったみたいで、朝ご飯の時と同様、二人で作る事にする。
そういえばアイシャは料理のレベル6だったよね……。
そりゃあ美味しいに決まってるよ。
アイシャはいいお嫁さんになるよね!……って僕のお嫁さんになるんだったっ!!
自分で自分に突っ込み、結果に顔を赤くする。
そんな僕の様子を見て不思議そうな顔をするアイシャにブンブンと手を振って何でもない事をアピールする。
「くすっ、変なマイン君ね」
そんなやり取りをしながら、出来上がった晩ご飯を何気ないお喋りをしながらいただく。
やはり食事は楽しい方がいいよね!
そして、さあ寝ようとアイシャにお休みの挨拶をしようとすると、アイシャが顔を真っ赤にして話しかけてきた。
「……ねえ、マイン君、私達って結婚するのよね?」
「……うん」
「昨日もそうだったけど、マイン君は……えっと……そ、その……興味ないの?」
うぅ、これはそう言う事なの……!?
「い、いや……興味無いなんて事はないんだけどね、ただちゃんと結婚をしてからで……いいんじゃないかな」
「そ、そうよね!?お休みなさい!マイン君」
アイシャはそれだけ言い残して、あっという間に僕の前から姿を消した。
うん、これでいいんだ。シルフィもいないしね!!
……へたれたわけじゃないよ!?ほんとだよ!!!
何時もお読み頂きありがとうございました。
なんと、日間に続き週間まで一位に!?
ほんとに皆さんの応援のおかげです。
襲いかかるプレッシャーと戦いながら、頑張ります!
これからも宜しくお願いします。
※感想返しにつきまして今後の方針を活動報告に書かせて頂きました。
ご一読頂けますと助かります。