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第42話 CASE:シルフィード(2)

シルフィ視点 その2です。

「俺は絶対に認めん!可愛い妹を嫁になぞ出せるかっ!」


……このシスコンめ、空気を読め!


兄の場の空気を読まなさに呆れながらも、冷静に話しかける。

全く、これさえ無ければ尊敬出来る優秀な兄なのだがな……。


「兄上、私が嫁ぐのは王族の責任に基づいての物だし、兄上も近いうちに伴侶が決まるのでありましょう?

 妹の晴れの舞台を祝っては貰えないのだろうか……だとすれば、私は非常に悲しいのだが」


流石にこう言われては、兄も考えを改めざるをえないだろう。


「……確かにそう言われてしまえば、第一王子としては何も言えない。

 だが、私は心配なのだ!可愛い妹が見た事もない男の元に嫁ぐなどと言う事は!

 シルフィ、お前は女だ。いくら姫将軍などと呼ばれてはいても女なのだ!

 いくらお前でも、全ての害意から身を守る事は出来ぬだろう。

 そうなった時、お前を守るのは誰だ?結婚したというならば、お前の伴侶となった男が守るのだろう?

 そいつが本当にお前を守る事が出来るのか?私は疑問だ」


兄上の危惧する事は分からないでもない。

これから先、王都から離れれば私を害しようとする物は現れるかもしれないだろう。


そして、それを私が絶対に自ら阻む事が出来るかと言えば確かに疑問だ。


「確かに兄上が言っている事は理解出来る。

 しかし、見ただろう?オーク・キングの亡骸を!

 彼はオーク・キングすら退ける事が出来る力を持っているのだ。

 私を必ずや害意から守ってくれるだろう!」


「……本当にそうなのか?

 成人を迎えたばかりの青年、いや少年と言ってもいいだろう。

 恐らく、戦闘経験でも身体能力においてもまだまだ未熟じゃないのか?

 そして何よりも人生経験が圧倒的に不足しているだろう。

 王家に仇成す存在は何も武力だけでは攻めてこないのだぞ?

 搦め手を持って攻められた時、かの少年は本当にお前を守る事が出来るのか!?」


……何も言い返せなかった。

確かに旦那様は強い、それは間違いの無い事だ。


だが、兄上が指摘するような話は十分あり得る事だと思う。


「……兄さん、その辺で辞めておきなよ。外から見てると相当格好悪いぞ」


ここでルイスが仲裁が入ったか。

ありがたい、頭を冷やすにはいいタイミングだった。


「ルイス、お前はどう思うのだ?姉が嫁に行ってしまうんだぞ!そのような未熟な者にな」


ルイスは首を力なく振りながら、盛大な溜息をつく。

お手上げといったところだろうか。


「そりゃ、俺だって思う事が無い訳じゃないよ。

 ……けどさ、仮に今回嫁がなかったとしてもいずれは、何処かに嫁ぐんだぜ。

 今回の相手は姉さんも気に入ってるみたいだし、いいじゃないか?

 若いって事はそれだけ、成長出来る可能性があるって事だろ?結構な事だよ。

 どこぞの好色なジジイに姉さんを嫁がせるよりもずっといいと俺は思うけどね」


ルイスの言葉を聞いて何か思う事があったのか、兄上は急に静かになった。


兄とルイスのやり取りが終わった時、父上が会話に参加しはじめた。


「……ふむ、確かにな、ルイスの言う通りだろう。若い、大いに結構じゃないか。

 本人次第だが、やる気があればアルトが言う欠点も徐々に無くなっていくのではないか?

 なんだったら、お前がその少年を鍛えてやればいいじゃないか。

 騎士団に指導してるのと大して変わらないだろう?」


ふむ、と兄上もまんざらでもないようなそぶりを見せる。


「どちらにせよ、婚姻を結ぶには神殿まで来る必要がある。

 お前が嫁ぐというなら結婚式だって、盛大にやらねばならないだろう?

 その時にでもその少年を見極めればよかろう」


結婚式か……確かにやらないわけにはいかないだろう。

旦那様、大丈夫だろうか?真っ青な顔して逃げ出さないかしら。


……ああ、いけない。まだ本題が済んでなかった。

父と兄の余りの予想通りの反応をしてくれたので、すっかり忘れてしまっていた。


「まあ、その件については検討するとして、父上に……というか国王陛下にお願いがあります」


「ふむ?国王としてか……想像がつかんな、なんだ言ってみろ」


「私と伴侶たる少年、そして聖弓のアイシャの三人でクランを立ち上げたく、その裁可を頂きたいのです」


私がクランという言葉を出した瞬間、父上よりもルイスが食いつく。

まあ、そうだろうな。ルイス自身がクラン・マスターをやっているのだから。


「へえ、姉上がクランをねえ……どうしたのさ、急に」


「私の拠点はこれからルーカスになるだろう、騎士としての職務も果たせなくなるからな。

 クランとしてならば、国に貢献できるだろう?尤も旦那を守るためというのもあるがな」


「ほう”旦那”ねえ」


ニヤニヤと面白い物を見つけたというような笑みを浮かべて父上とルイスがこちらを見てくる。

しまった、失言だ。つい、口が滑ってしまった。


「ほうなんだかんだ言っても、仲が良さそうで何よりだな。お前の口から旦那等と聞くとは驚いたぞ」

「旦那ねぇ~、姉さん彼の事をなんて呼んでいるのさっ」


その後、クランの設立自体は2~3の質問を受けただけで無事認められたが、散々父上とルイスに弄られ続けてしまった。

説得に疲れるだろうと予想していたんだが、全く予想外の事で疲弊するとは一体どういう事だ。




「さて、そのオーク・キングだがどうしたものか」


「父上、うちのクランで買い取ろうか。結婚祝いで高めで引き取るよ」


オーク類は元々買い取り出来る素材が非常に多い。

ましてやそれが滅多に手に入らないオーク・キングともなれば錬金術マニアのルイスが欲しがらない訳がない。


いかにも力になるよ、という体を見せているが本音が欲しくて欲しくて溜まらないだろう。


「ほう、いくら出す?」


きっとこの時の私は獲物を見つけた獅子のようだっただろう。

旦那様への手土産となるのだ、なるべく高く買って貰わねばなるまい。


「……そうだなあ。白金貨500枚ならどうかな?」


ただのオークが一匹で大体金貨三枚位だが、オーク・キングから魔石は抜いてある。

妥当と言えば妥当だが……、もう少し粘ってみるか。


「ルイス、いくら魔石を抜いてあるからと言っても、災害級の素材だぞ。

 安すぎやしないか?これを逃せば何時入手出来るか分からないだろう?」


私がそう言うと、ルイスは顔を一瞬顰める物の諦めたのか両手を上に上げて降参のポーズを取る。


「ふう、姉さん……騎士なんかやってないで商人でもしたらどうだい?

 ま、結婚祝いも含んでるし、いいよ白金貨550枚で出すよ」


ふん、まあいいだろう。余り欲張っても良くないしな。


「分かった、それでいい。ところで……ジェネラルの亡骸が三体あるんだがな、どうする?」


私は再び、にやりと笑みを浮かべルイスにそう言うのだった。



何時もお読み頂きありがとうございました。


なんと日間ランキング一位になってました。

今も凄まじい勢いでPVが増え続け、つい先程100万PVを越えました。

嬉しいのは勿論なんですが、プレッシャーの方が大きくなってきました。

色々な問題点も出てきて、どうするべきか少し迷い気味です。


【改稿】

2016/12/27 

・全般の誤字を修正。

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