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第40話 閑話・第一王子の一日

「よし、次のヤツ掛かってこい!」


私はこの国の第一王子、アルト・オーガスタだ。

今、私は定例の第一騎士団、第二騎士団の合同訓練に参加している。


「だめだ、もっと踏み込みを強く……そうだ、もう少し強めに!!」


「はいっ!アルト殿下!!!」


各騎士団への指導は普通はそれぞれの騎士団長が行うのだが、こうした合同訓練の場が有る時に限り、私が指導を行っている。


私が持っているスキル【片手剣・聖】【腕力強化・大】【補助魔法・速度増加】を持っているが故だ。


我が王家には私を含む王子が三人、王女が二人がいる訳だが、全員が何かしらの有用なスキルを持っている。

これは王家が行っている施策のおかげだ。


偉い学者様が言うには、スキルというヤツは遺伝に似た形で子に受け継がれるんだそうだ。

両親が良スキルを持っていれば、その血を受け継ぐ子供は両親が持つ系統の良スキルを得やすくなる物らしい。


その為、神殿から成人を迎えスキルを神より授かった者達の情報を得ている。

良いスキルを持った者が現れれば、その者に働きかけ、王族の伴侶として迎えいれる訳だ。


無論、その者の身辺調査は行い、人格や交友関係など人間的に問題があるかどうかを事前に確認はしている。

おかしな人間を王家に連なる者として迎える訳にはいかないからな。


だが、王族の強権を使って強引に王家に迎える事は当然行っていない。

そんな事を行ってしまえば、この国の住民が王家に対して強い悪感情を抱きかねないからな。


おっと話が逸れたな。


そんな訳で国王で英雄と呼ばれた父から私は同じスキルを神から授かった。

それだけでは無い【補助魔法・速度増加】という別スキルも一緒に授かったのだ。


幼い頃から、その英雄より直々に戦いの為の英才教育を受けて育ったのだ。

20歳を迎える頃には国内で私と互角に戦える者は存在しなくなった。


……ああ、父上にだけは未だに勝つ事が出来ない。

いいところまでいけるのだが、やはり経験の差が出ているのだろう。


と、まあそんな訳でこうして騎士団員を指導している訳だ。


「いいか、お前達。スキルは確かに有用だ。過去の歴史も証明している。

 だが、そのスキルを更に有用に生かす為には何より日頃の訓練が重要なのだ。

 力の入れ方、体の効率の良い動かし方やフェイント……そう言った技術が合わさる事で

 スキルという物はより有効に使えるようになってくる。

 日頃の訓練は確かにきついだろう、しかしそれを疎かに絶対にするな。

 その努力が間違い無く、お前達の命を救う事となる事を絶対に忘れるんじゃないぞ」


「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」


毎度、訓練の度に同じ事を話している訳だが、それだけこれは重要な事なのだ。

(スキル)に溺れ、その力を過信しすぎれば、不慮の事態が起これば人はあっさりとその命を落とす事になる。


彼らにも家族がいるのだ。

国のため、命を掛けて戦う……それはいい。


だが、生きて家族の元に帰ってこそ国を守った意味があると私は思っている。


だから、何度も言うのだ。

だから、彼らを鍛えるのだ。


彼らが生きて家に帰ってこれるように、と。


国民がいてこそ、国は成り立つ。

父上が治めるこの国を次代を受け継ぐ俺は守っていかねばならないのだから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「兄上、今日もご苦労様」


弟のルイスがタオルを手渡してくれる。


「ああ、すまないな」


ルイスは父上では無く、母上、ガーネット・オーガスタの血を色濃く受け継いでいる。

即ち、武の才能(スキル)では無く、技術の才能(スキル)だ。


【錬金術】【錬成】【片手剣・極】


【片手剣・極】のスキルも授かってはいるのだが、その強さは家族の中では残念ながら下から数えた方が早い。


ちなみに母上のスキルは【錬成】【算術】【固有魔法・氷】の三つだ。


そう言えば母上と言えば幼い頃、氷魔法を使う所を見て「母上凄いです!」と私が言った時「えへへ、マホーショウジョみたいでしょ」と言っていたのが印象的だ。



ああ、すまない、また話が逸れてしまったな。


ルイスはその才能(スキル)を生かし、クランを自ら立ち上げた。

錬金術を志す者を広く集め、この国でも有数のクランへと成長させている。


為政者に取って必要なのは武力だけでは無い。

こうした組織をまとめ、運営する事も求められるのだから、そう言う意味では弟はその才能を示していると言える。


尤も弟に言わせれば政治なんかに関わるよりも、魔導具などを作っていた方が性に合ってるとの事だ。


私もそうだが、どうもうちの家系は猪突猛進の嫌いがあるようだ。


「ところで兄さん、姉さんが伴侶候補を見定めに行ったのを知ってる?」


なに!?シルフィの伴侶候補だと!?


「……聞いていないぞ、そんな事は」


「やっぱ、そうか……道理で大人しいと思ったよ」


むぅ、可愛い妹に伴侶候補だとっ!一体どこの高位貴族の息子だ!?

どうせ、優良スキルを持たぬのに妹の美貌に誘われて強引に見合いを迫ったのだろう。


父上も父上だ、何故そんな事を認めるのだ!


「……勘違いしてるようだから、言っておくけど姉様は自分から向かったんだぞ。

 父上も当然納得して送り出してるよ」


「何?父上が納得して……という事は良スキル持ちなのか?」


「分かんない、神殿からの報告では【鑑定・全】【カット&ペースト】らしいけど……」


何?【鑑定・全】というのは分からない訳ではないが【カット&ペースト】だと?

【カット】と【ペースト】を合わせたスキルか?


それの何処が良スキルなんだ?


「……神殿という事は平民なのか?だが、そのスキルなら今までの言い寄ってきた奴らの方がマシだろう?」


「確かにね、けどさ単独でオークを倒してるらしいよ」


何?成人したてでオークを単独撃破だと?確かに妙ではあるな。

……なるほど、それで自ら確認しに行ったと言う事か、確かに分からないでも無いが……。


「俺から言わせれば、姉さんよりも兄さんにとっとと結婚して貰いたいよ」


「……なんでだ」


「自分で分かってるだろ、シスコンこじらせてないでさっさと結婚しなよ。

 聖弓や聖女辺りなら、父上だって反対はしないだろう?」


「……ふん」


シスコンとは失礼なヤツだ。

可愛い妹を気にしない兄がどこにいる。


今は妹達が幸せになれれば、それでいいのだ。

シルフィの相手がつまらないやつで無ければいいのだがな。



何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


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