第37話 武器屋さんで掘り出し物
「こんにちはっ!」
武器屋の中に元気よく挨拶をして入っていく。
おじさんがすぐに気が付いてくれて、作業を中断して話しかけてきてくれた。
「おう、マインの坊主!今日も元気だな!」
ニコニコと笑いながら僕に声を掛けてくれる。
いつも親身になってくれるので安心して相談する事が出来るんだよね。
この前も”鋼鉄製の短剣+12”なんて素晴らしい武器を用意してくれたり……すごく感謝してる。
けど、せっかくのいい武器を壊しちゃったから、怒られないか少しだけ不安だ。
「それで、どうした今日は?武器の手入れか?」
おじさんの問いに少し言いよどんでいると、おじさんも不審に思ったのかもう一度「どうした?」と聞いてきた。
「……おじさん、ごめんなさい。せっかくこの前、頂いた凄い短剣ですが折れちゃいました……」
僕がしょんぼりとそう言うとおじさんは一瞬キョトンとした表情を見せ、すぐに相好を崩し笑い始める。
「ああ、なるほどな、それで言いづらそうにしていたのか?そんな事は気にしなくていいんだ。
アレは坊主に売ったんだから坊主が何しようが儂が怒る理由にはならんだろう?
しかし、あれが折れるか……、一体何と戦ったんだ?」
ホッ、どうやら怒ってないらしい。
けど戦った相手か……オーク・キングって話しても信じてもらえるかなあ?
お世話になっているおじさんに嘘はつきたくないから本当の事を言うんだけど、ちょっと心配だ。
「……オーク・キング……です」
「…………おかしいな、儂の耳がおかしくなったか?坊主もう一度頼む」
「オーク・キング……です」
今度はおじさんも聞き返す事は無く、無言だ。
しばらく何かを考えていたようだが、ふぅと息を吐き、僕に問いかけてくる。
「坊主が嘘をつくとは思わねえが……流石に突拍子もなさすぎる。
何か証明になる物はあるか?もし、本当ならそれに見合う武器を出してやるよ」
証明になる物か……、魔石しかないけどこれで分かって貰えるのかなあ?
取り敢えず、見せてみようかな。
僕はカウンターの上に収納袋から出したオーク・キングの魔石を置いてみた。
「これしか無いんですけど……」
おじさんは目をまん丸にして僕が置いた魔石を見つめている。
「……な、なんて大きさの魔石だ……オーク・キングかどうかは俺には判断できねえが、
こんなでかい魔石を持ってる魔物なんてそれこそ災害級位だろうよ……。
すまなかったな、しまってくれ」
深い溜息を吐いたおじさんを見つつ、収納袋に魔石をしまう。
おじさんは一瞬、考え込んで店の裏に行ってしまった。
……不味かったかなあ。
五分ほど待っておじさんが小さな箱を持ってきた。
「これが、ウチにある中で一番性能がいい短剣だ」
おじさんはそう言って持っていた箱から一降りの短剣を取り出し、僕の目の前に置いた。
名前:ライトニングエッジ
攻撃:+50
階級:超級
属性:雷
特攻:魔族
特性:クリティカル
うお、魔法属性持ってるぞ?
なんか凄そうだけど、これ凄く高くないかな??
「コイツはダンジョンのガーディアンからドロップした魔法属性があったと言われていた短剣だ」
「言われてた?」
「これをダンジョンで手に入れたヤツが使っていた時には雷を纏っていたんだ……。
だがな、ソイツが死んで以降、誰が持ってもこの短剣が雷を纏う事はなかった。
なので、今では魔法短剣としての価値を信じるやつが居なくなってな」
おかしいな、僕の鑑定では確かに属性として雷を持ってるから魔法短剣なのは間違いが無いみたいだけど……。
「……実はな、この短剣をダンジョンから持ってきたのはうちの客だったんだ。
だから儂はこの短剣が雷を纏っていた事を見た事がある。
これは魔法短剣なのは間違いないが、魔法短剣として使うには何か条件があるんだと儂は思ってる。
とは言え、現状では少しばかり性能がいい短剣というだけの短剣だ。
どうだ、コイツを使ってみないか?」
うん、問題ない。
鑑定結果は魔法短剣だと出ている。
けど、おじさんが言う発動する為の条件だけ気になるけど……。
「おじさん、それ貰いたいと思うんですけどいくらなんでしょう?」
「そうだな、魔法短剣と考えれば白金貨5枚と言いたい所だが……。
さっき話したように魔法短剣としての効果は今不明だ。金貨80枚でどうだ?」
安っ!?魔法短剣がこんな値段でいいの!?
「おじさん、そんな値段でいいの?前も言ったけど損しちゃわない?」
「うははははははははっ、前も言ったがな、子供のくせに大人に気を使うんじゃねーよ。
損はしないように上手くやるから気にしないでもいい。
で、買うのか?買わないのか?」
「買います!あと格闘用のナックルガードとかそう言った類の物ありますか?」
「ん?坊主、格闘も出来るのか?」
そう言いながら、再び店の裏へと歩いていく。
再び待つ事、三分ほどおじさんが持ってきたのはセスタスと呼ばれる格闘用の武器だった。
「これならナックルガードの代わりになる筈だ、まあ数打ち品だから性能は大したもんじゃないがな」
名前:アイアンセスタス+6
攻撃:+6
階級:中級
特攻:無し
特性:無し
うん、確かにそれ程高性能では無いけど、取り敢えずこれで十分だね。
「おじさん、これも貰います!いくらでしょうか!」
「両方あわせて金貨80枚と銀貨10枚でいいぞ」
好意に甘える形で心苦しいのだけど……ありがたくお金を払って帰宅するのだった。
おじさんありがとう!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マインが帰った後、まだ夜にもなっていないのに武器屋は閉店となっていた。
店内で主人が酒を飲みながら独り言を言っている。
「……なあ、ダインよ、お前の息子は立派になったぞ。
本当かどうかはわからねえが……オーク・キングを倒したとよ。信じれるか?
災害級を倒しちまったんだ、お前みたいによっぽどいいスキルに恵まれたんだろうよ。
お前らが死ぬ間際にマインに金を残したいといって俺に渡した短剣……。
それをお前の息子、マインに今日売ったよ……。勿論、破格の価格で売ったからな、安心しろよ。
お前の意思を息子が継ぐんだ。こんなに嬉しい事はねえわな」
呟く主人の目から涙が溢れていたのだった。
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