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第30話 シルフィードの目的

「実はな、良スキルを持った者同士から生まれた子供は同じ系統の良いスキルを授かる確率が非常に高いんだ」


……え?どういう事?


「つまり、我々王族は配偶者を意図的に良いスキルを持っている相手から選んでいると言う事だ。これはさっき君が言った国を正しく導く為の施策の一つという事だな」


何でも王族は次代を担う子供達の結婚相手としてふさわしい候補を探す為に神殿から新成人の授かったスキルの報告を受けているらしい。

そして、良いスキルを持った成人が現れると、性格・人格に問題が無いか調査され問題が無いとされれば、未婚の王子、王女に情報が公開される。


情報を得た王子、王女は自らその相手を見定め、問題が無いと判断するとその相手を配偶者として迎え入れる交渉を始める、そんな感じらしい。


……え??と言う事は。


「そうだ、私は君を自分の伴侶とするかどうかを自分の目で確認したくてここにやってきた」



なんだってっ!!!!!

ぼ、ぼ、ぼ、僕が王女様の伴侶だってっ!!!!!??


ちょ、ちょっと待った、え?何どういう事?目の前の王女様が僕の奥さんになるの?え?え??えーーーーーーーーっ!?


「落ち着け、君も当然相手を選びたいだろう?王族とはいえ、強権で結婚を迫りはしないよ」


「………………すごく驚きました」


「ああ、見ていて面白い程に狼狽えていたな、中々見物だったぞ」


くすくすと声を出して笑われてしまった。

僕の顔を見て笑っている王女様はさっきまでとは凛とした雰囲気とは全く違い、年相応な可愛い感じがするよ。


王女様ってやっぱり大変なんだろうね。


王女様の顔を見ている時、ふと隣にいたアイシャさんが辛そうにしているのが気になった。


「アイシャさん、体調が優れないのですか?大丈夫ですか?」


僕がそう話しかけると、無理矢理笑顔を作って「大丈夫よ」と答えてくれた。

どう見ても大丈夫では無さそうなんだけど……。


アイシャさんには本当にお世話になったからね、すごく心配だよ。


そんな僕とアイシャさんのやり取りを見て、王女様は「ふむ」と何かを考え込む仕草を見せる。


「取り敢えず、話の続きをいいか?」


ああ、そうだった……結婚なんて急に言われたから話が中断してたんだ。


「あ、はい」


「さっきの話で気が付いただろうが、私は君が授かったスキルを知ってる」




       『ドクンっ!!』




心臓が急激に激しく動き出したのが分かる。


遂に来た!一番聞かれたくない話が……どうやってごまかそう。

全く、思いつかないよ……とほほ。


「君が授かったスキルと先のオーク・キング達との戦いで見せた戦い方だが、どう考えても繋がらないんだ」


非常に突っ込みにくい言い回しだよね……。


僕が困っているのが分かったのだろう、ちらっと僕の様子を見てから王女様は話を続ける。


「アイシャから聞いたよ、スキル開示をギルド長から求められ、それを拒否してギルドの登録を抹消された事を。確かに君が授かったスキルの一つは特殊だと思う」


アイシャさんも息を飲んで王女様の話を聞いている。

それはそうだろう、ギルドを辞める事を選んでまで隠したスキルの事が話されているんだ。


気にならない訳がないだろう。


「だが、ギルドを辞める事を引き替えにする程のスキルでは無いだろう?何故だ、何故隠したんだ?」


「そして……オーク達との戦闘で見せた数々のスキル。神様より授かる事が出来るスキルの数は多くても三つだ」


段々と王女様の話が核心に近づいてくる。


「だが、君は私が見た限り十以上のスキルを使っていた筈だ。それに最後に見せた……短剣を生み出したスキル」


「私はあんなスキルを聞いた事がない、神殿から色々なスキルの報告を受けている王族の私ですら聞いた事がないんだ」


ああ【リアライズ】かあ……あれは確かに、誰も持ってないし、知らないだろうね。

オーク・キングなんて言う規格外のモンスターだからこそ、持っていたんだろうと思うし、そもそも【鑑定・スキル】か【鑑定・全】が無きゃ、その存在すら知らないだろうと思う。


多分、固有スキルかそんなような物じゃないかな?


そんなスキルを目の当たりにしたんだ。

王女様が疑問に思ってしまうのも仕方ないよね。


そんな事を考えつつも僕の表情が自然と引きつってくるのを見て、攻めすぎるのも不味いと思ったのだろう。

王女様はそこで言葉を切って、謝ってきた。


「すまない、つい興奮してしまった。決して君を責めたりしているつもりは無いんだ」

「どうだろう、これだけの事を既に私とアイシャは分かっているんだ……決して他言はしない、君の秘密を教えて貰えないか?」


まあ、そう言ってくるよね。

予想通りの展開になってしまったよ。


どうしよう……アイシャさん個人は信用出来るとは思う。

というよりも信用している。


ただ、バックにギルドが控えている以上、どうしても話す事が出来ない。


そして王女様だけど……人間的には裏表が無い性格のようだし、どっちかと言えば信じてもいい気はする。


ただ、こちらのバックはギルドよりも更に始末が悪い。

何せ、国がバックにいるのだ。


下手をしたらあっという間に貴族とかに広まって、身柄を拘束されていいように利用されちゃうかもしれない。

そう考えるとやはりこちらにも話せない。


ただ、王女様が言うように、ここまでばれていると言う事実もある。


【カット&ペースト】の本当の使い方は当然分からないだろうけど、僕が特別な何かを持っている事自体は広がっていってしまうかもしれない。


そう考えるとその対策も考えなきゃダメなんだよね。


「……王女様、お考えの通り僕はかなり特殊な力を持っています。スキルの内容については、僕の身の安全の為にどうしても言えません」

「僕の力を知れば、きっと権力者達はその力を欲すると思います。それこそ僕の人権などを無視してでも……」

「そんな事になれば、僕の居場所はこの国には無くなってしまうでしょう……、だからスキルの事は言えないんです」


僕が思いの丈を話すと王女様もアイシャさんも納得したのか、眉を顰めて考え出す。


「……なるほど、私達が思っている以上に君の力は強いのだな?まあ、そうだろうな災害級を単独で倒してしまう力だものな」


そう言うと、目をつぶって腕を組む王女様。

どうも何かを考えているらしい。


誰も喋らず、無言のまま五分程過ぎ去った所で王女様が再び声を出した。


「……君がスキルを話せないという理由は良く分かった。確かに君の考えは正しいと私も思う」

「だが、君は成人したばかりだろう。君の一生はまだまだこれからも続いていく。その長い人生をこのまま何時ばれてしまうのかと毎日心配しながら生きていくつもりなのか?」




!!!!!!!!!!!




王女様の投げかけたこの言葉は僕の心を抉るように深く突き刺さった。


意識的に考えないようにしていたけど、そう、王女様の言う通りなのだ。

これからの人生、何時スキルの事がばれるかと常に心配をしながら暮らさなければならない。


今はまだいいけど、時間が経つにつれ、きっと僕の心はドンドン消耗していくだろう。

僕はそんな辛い人生は絶対に送りたくない。


せっかく神様からスキルを授かって、これからの人生を頑張って生きていこうと思っていたのに、逆に苦しめられてしまうなんて絶対いやだ。

だけど、どうすればいいのか……僕には分からないんだ……。


僕の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

これから先の展望に暗い未来しか思い浮かばない。


僕がいきなり涙を流し始めたのを見て、王女様は慌て始めた。


「ああ、すまない、泣かないでくれ……参ったな……そうだな、いくら強くても君はまだ成人したての少年だったな」

「その輝かしい未来を悲観させてしまうような事を言ってしまって本当に申し訳無い、許してくれ」


僕の意志とは別に涙が止まらない。

最初はただ涙が出ているだけだったが、嗚咽まで自分の意志とは関係無く出てきてしまった。


「うぐっ……ぐずっ、うぅぅ、あ、れ?おかし、いな……かってに、な、みだが……」


既に号泣と言っても差し障りが無いほどの状態になった僕に今まで静観していたアイシャさんが突然話しかけてきた。


「マイン君!私とパーティを組みましょう!!!」


何時もお読み頂きありがとうございました。


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