第286話 王都での石像討伐戦(1)
僕達『永久なる向日葵』は王家からの依頼のため、王都に来ていた。
作戦に参加するメンバーは僕、アイシャ、シルフィ、ピロース、わっふる、クゥのいつもメンバーである。
お義兄さんの話では現在冒険者ギルドからA級のパーティが一組王都で石像討伐の任にあたっているらしいので
可能なら彼らと接触は避けたい。
僕のスキルもそうだけど、僕らのクランは色々と特殊過ぎるからね。
出来るなら人目に付きたくないんだ。
「……さて、王都に来たのはいいが、問題の石像はどうやって見つけるのだ?」
ピロースが機嫌悪そうに僕に問い掛けてきた。
どうも彼女は例の武器を死蔵させておく事が許せないらしく、ずっと機嫌が悪いままだ。
僕は考えておいた作戦をピロースだけでなく全員に説明した。
まず、クゥが空から王都上空を偵察し、発見したら【念話】で連絡、見つけたら、【地図】で
位置を確認し現場に急行して戦闘開始。そんな流れだ。
お義兄さんが言っていた、”幽霊みたいな魔物”というのが気になるので、ファーストアタックは
僕が現場で魔物の【鑑定】をした後となっている。
騎士達が同士討ちを始めたというのも気になるしね。
「じゃあ、クゥ頼んだよ」
僕がそうクゥに話しかけるとクゥはその場でくるくると回転して大喜びした。
『きゅきゅきゅ~、クゥのでばんです~~おにいさまにほめてもらえるようにがんばるのです~』
そう言い残してクゥは急上昇してあっという間に見えなくなった。
『まいん、おれもそらとべるぞ、おれはるすばんなのか?』
わっふるが残念そうに僕の足下にすり寄ってきた。
……わっふるには別の仕事を頼む事にしよう。
『わっふるはここで、冒険者ギルドのパーティの気配を探して欲しいんだ』
わっふるが飛んでいくとだと王都の人達にオオカミが空を飛んでいると驚かせてしまうからね。
その点クゥなら普段から空を飛んでいるので何か聞かれたとしても後から説明しやすい。
それに、たまにはクゥも活躍させて上げないと可哀想だしね。
落ち込むわっふるを両手で抱き上げて頭の上にそっと置いて上げると
わっふるは嬉しそうに尻尾を大きく揺らせながら眠りだした。
『わかったぞ、おれはここでさがしてみるぞ……』
眠ってはいてもそこはわっふるの事だ。ちゃんと探してくれているだろう。
そんなわっふるの様子を全員で見守っているとクゥから念話が届いた。
『お、おにいさま!! いました!!せきぞうのまものです』
慌てて【地図】を展開して場所を確認するとこの場所からさほど遠く無い十字路のようだ。
お義兄さんの話では石像に近づくと周辺に複数の魔物が出現するらしいから、不用意に近づけないな。
『クゥ、石像には近づかないで、戻っておいで』
クゥにそれだけ指示を出して僕達は全力で移動を開始した。
「……居た、石像の魔物だ。形から想像するに
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名前:オーク・スタチュー
LV:10
種族:高魔族
性別:-
【スキル】
眷属召喚・常時
【アビリティ】
衝撃の魔眼
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オークの石像だ。 近づくと恐らく周辺にオークを呼び出すのだろう。
この【眷属召喚】と言うスキルでオークを呼び出すんだろうなあ
そして、オークの石像をよく観察するとゆっくりではあるが前後左右に動いているみたいだ。
オークの石像のすぐ傍にもう一つ石像が居た形はこっちはゴブリンのようだ」
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名前:ゴブリン・スタチュー
LV:6
種族:高魔族
性別:-
【スキル】
眷属召喚・常時
【アビリティ】
衝撃の魔眼
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……これ、近づくとオークとゴブリンが大量に発生するのか、厄介だな。
「アイシャ、オークの石像とゴブリンの石像をそこから狙えるかな?」
「わかったわ!マイン君、任せて!!」
『わふ……まいん まって!!』
わっふるが急に僕の頭の上で立ち上がり制止の声をかけてきた。
だが、既にアイシャは返事と共に矢を射出していた。
矢は正確に、石像の額の部分に命中する。すると石像の周辺に黒い渦が沢山現れてそれぞれの渦から
オークとゴブリンが大量に出現する。
そして瞬く間に、辺り一面がオークとゴブリンで埋め尽くされたのだ。
突如出現したオークとゴブリンだが、いつも僕達が見ているのと大分姿形が違っていた。
オークもゴブリンも共に重厚な黒い鎧に身を包んでおり武装も粗末な物ではなく随分と立派な物であった。
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名前:アーマードオーク
LV:90
種族:高位魔族
性別:♂
【スキル】
爆砕
誘爆
鎧化
修復
【アビリティ】
衝撃の魔眼
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……な、何だろう?見た事無いスキルが一杯だよ。
はっ?わっふるは何だったんだろう?
『わっふる、どうしたの?』
『わふ~おそかった~ せきぞうのすぐそばにだれかがいたみたい』
……それはまずいんじゃないかな?
僕は慌てて、大量に発生したオークとゴブリンの群れを観察してみる。
するとゴブリン達に紛れて何人かの冒険者らしき姿を発見した。
善戦しているようだが、多勢に無勢だ。倒されてしまうのも時間の問題だろう。
僕はテンペストエッジとライトニングエッジを両手に持ち、【魔纏衣】で【消滅魔法】を身に纏って
ゴブリンとオークの群れに突入した。
そして一番近くに居た冒険者の人に接触を試みた。
「だ大丈夫ですか?」
「す、すまない」
「僕達は王家から石像の魔物の討伐依頼を受けましたクラン永久なる向日葵です」
「……と言う事は君が……”希望”のマインか。ありがたい。最強の助っ人だ」
「俺達はA級パーティ"舞い上がる風"だ。冒険者ギルドの依頼で王都内に出現した魔物の討伐に来てる」
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名前:バレッド・フレイヤー
LV:25
種族:ヒューム族
性別:♂
【スキル】
片手剣・極
鉄壁
盾術・極
【その他】
Aランクパーティ"舞い上がる風"リーダー
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「と、とにかく話は後で!」
僕が慌ててそう告げるとバレッドさんはああそうだなと呟いて再びオーク達へと向かっていったのだった。
僕も負けいられない。テンペストエッジを握る右手にぐっと力をこめて
アーマードオークの背後に回り込み【豪腕・聖】を乗せた【武技、シャークグロウ】を叩き込んだ。
数多くの災害級を葬り去ってきた武技だ。当然の事ながらあっという間にアーマードオークは絶命する。
「……すげえ、流石希望のマインだな」
バレッドさんが僕の武技を見て、感嘆の声を上げているのが聞こえてくる。
そのバレッドさんはと言うとアーマードオークの鎧に攻撃を阻まれてダメージを与える事が出来ずに苦戦しているようだ。
……するとその背後から人影が現れアーマード・オークに切りつけた。バレッドさんが相手にしていたアーマード・オークはバタリと前のめりに倒れていた。
「済まないな、手を出してしまって」
……そう、その人影の正体は僕の愛する妻の一人で”姫騎士”の二つ名を持つシルフィだった。
「……こ、これは、シルフィード殿下ご助成ありがとうございます」
「いや、問題無い。貴公は……"舞い上がる風"のバレッドだったな?」
……あれれ?シルフィ、知り合いなの?
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
更新が不定期になっており誠に申し訳有りません。
以下宣伝です。
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『カット&ペーストでこの世界を生きていく』コミカライズ
原作:咲夜
漫画:加藤コウキ様
キャラクター原案:PiNe様
去る9月19日に集英社ヤングジャンプコミックスから第1巻
が発売となっております。
おかげさまで大好評となっているようで、各書店様で入手しづらい状態になっているそうですが
重刷も発表されましたので見かけましたら是非、お手に取って頂ければと思います。
なお、コミックス版は若干原作と違っている展開がございます。
また巻末のオマケページにはヒヨルドとライルの後日談が4コマで掲載されています。
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また10月10日原作書籍版3巻がツギクル様から発売となっております。
9月10日の予定から1ヶ月後ろ倒しになりました。申し訳有りません。
こちらにつきましても是非ともお願い致します。
また、3巻からイラストレイター様が変更となります。
皆さんの応援が続けば更なる[次]が見えて参ります。
今後とも何卒、変わらぬご支援、応援のほど宜しくお願い致します。
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ツイッター@Sakuya_Liveの方でまた続報は逐次アナウンス致します。
こちらの方も覗いて頂ければと思います。
本編の方ですが今後は新展開を交え元々のプロット通りの展開を書いていきます。
更新はのんびりと行いますのでお待ち下さい。