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第28話 その時、彼女達は(2)

シルフィード視点です。


本日二回目の更新です。

ブックマークから来られている方はお気をつけ下さい。

おかしい、やっぱり彼はおかしい。


神殿から聞いた彼のスキルは二つ。

【鑑定・全】【カット&ペースト】だけの筈だ。


なのに、自己強化系のスキルを使っているんだ?


しかも、あれだけの火魔法を直撃で受け、敵の面前で膝をつかなければいけない程のダメージを受けた筈。

なのに、彼はアイシャの援護射撃の後、いとも簡単にオーク四匹を切り倒した。


そもそもオークを単独で狩るならばB級冒険者程度の力を持っていなければ無理な筈だ。

なのに彼は何事も無かったようにあっという間に四体ものオークを切り伏せてみせた。


そして、彼の側で怪我の具合を見た時……”回復系のスキル”で傷を治したかのように怪我は殆ど治っていた。


……一体、彼にはどんな秘密があるというのだ!?




「なんで”キング”が先に来るんだっ!!!ちくしょうっ!!!!」


”オーク・キング”災害級の魔物を目の前にした時、恥ずかしながら私は体が竦んでしまい、身動きが取れなかった。

隣にいるアイシャも同じく動けなかったようだ。


その体が竦んでいる隙にオーク・キングがその大きな金色の戦斧で攻撃をしてきた。

咄嗟にマインが助けてくれなければ間違いなく私とアイシャは死んでいただろう。



「アイシャさん、騎士さん……今から僕は全力で戦います。……だから、二人はなるべく遠くに逃げて下さい。二人がいると全力を出せません……」


「無茶よっ!?ジェネラル一体だって私達だけじゃ勝てないわ、戦うと言うなら三人一緒よ!三人なら万が一でも勝てる可能性が……」


「……そんな可能性はありませんよ、アレを倒すには……僕のスキルを全力で使わなければ絶対に無理です」


どうやら彼は一人でジェネラル三体とキングを相手にするつもりらしい。

スキルを全力で使うと言ったな?


すなわち、さっき一瞬でオークを葬り去った時ですら全力ではなかった、と言う事か。

……なるほど、私達がいては確かに邪魔であろう。


何かを守りながら格上と戦う、これほど難しい事は無いからだ。

そして、残念ながら私もアイシャもヤツらとの戦いではお荷物以外何者でもないのは明白だ。


アイシャは三人で戦う事を強く主張しているが、ここは彼の言う通りに引く事が最良だと私も思う。

私も腕に自信があるが、正直ジェネラルだけだったとしても勝てるかどうか微妙だ。


そんな事を考えていると、キングが突然叫びながら、その場で暴れ出した。

ヤツが手にしていた戦斧がいきなり消失したからだ。


これもマインの仕業なのか?

だとすれば、人智が理解出来る範疇では無い……彼は一体何をしているのだ?



「二人とも走ってっ!!!!!」


マインに言われ、私は四の五も言わず森の方へと走り出した。

アイシャも不満そうではあるが、私に付いてくる。


さあ、これでいいのだろう?


私の命は君に預けよう、だから……存分に見せてみろ!君の言う全力というヤツを!!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そして、彼の命がけの戦いが始まった。


なんと彼は魔法を使った、それも一属性だけでは無く火風水土の四属性だ。

そして、その魔法全てが極大クラスの威力を持っていると思われた。


恐らく彼は極大クラスの魔法を波状攻撃する事で、ジェネラルを先に始末したいと思ったのだろう。

キングと戦っている最中にジェネラルに割り込まれれば、圧倒的に劣勢になってしまう事が分かっているからだ。


そして……多分、私達二人にジェネラルが向かわせない為、というのもあるだろう。


このたった一人で立ち向かう絶望的な戦いの中、私達を気遣う事が出来るというのも驚きではある。


「……彼は凄いな」


思わず呟いてしまった独り言だったが、アイシャも同じ思いだったようで「そうですね」と答えを返してくれた。

そして彼女は両手を組み合わせて、目を瞑り祈り始めた。


恐らく、いや間違いなくマインの勝利を祈って。


そうだな、今私達が出来る事は神に祈る事だけか。

神がどのような思惑でマインにスキルを授けたのか分からない。


だが、彼が今こんな絶望的な戦いに身を置いているのは間違いなく授けられたスキルのせいである。


ならば神よ!どうかマインに勝利を与えてくれ、無事に私達の所に戻ってきてくれるよう力を貸してくれ。


私もアイシャ同様に手を組み合わせ、強く強く祈りを捧げるのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



マインは予想以上に善戦している。

一体、どうなっているのか最早、彼の能力に対して疑問を抱く事すら馬鹿らしくなるほど、沢山のスキルを使い互角の戦いを演じているのだ。


……だが、マインの持っていた短剣が折れてしまった。


武器が無くなってしまえば、マインに戦う術はない。

オーク・キングも武器は無くしてはいるが、オーク達にはそもそも常識外な腕力がある。


腕を振り回すだけで人間など、一瞬で倒す事が出来るのだ。


マインはスキルを駆使し、オーク・キングの攻撃を耐えてはいるが武器を無くした今、ジリ貧になっていくのは間違い無い。


「これは不味いな……」


「ええ……」


アイシャも同じ結論に至ったのだろう。

真っ青な顔で必死に戦うマインを見つめていた。


そして、決意したのだろう。

手にしていた弓を構え、オーク・キングへと矢を射ようとする。


「よせっ!」


私は慌てて、アイシャを制止する。


「お前が攻撃をしても、結果は何も変わらん。寧ろヘイトコントロールをマインが出来なくなって迷惑を掛けるだけだぞ」


”ヘイト”即ち、敵対心の事である。

この敵対心をコントロールする事は、パーティでモンスターと戦う際に特に気にしなければいけない。


人間もそうだが殴られたら、殴った人間に敵対心を覚え殴り返すだろう。

これが複数の相手に対し、敵対心がある場合は、当然一番むかつく相手=一番敵対心が強い相手を標的とするだろう。


モンスター達も同じように一番敵対心が溜まった相手に攻撃をしてくるのだ。


この事を利用し、パーティでは盾役と呼ばれるポジションの人間が常に一番の敵対心を受けるように調整する。

他のメンバーは盾役が稼いだ敵対心を越えないようにじりじりと攻撃をして最終的に無傷で敵を倒す。


これが一般的なパーティにおける戦術である。


アイシャが行おうとした攻撃は、マインが必死に行っているヘイト・コントロールを乱しかねない。

予想外の所から攻撃を受ければ当然オーク・キングの意識はこちらに向く事になるだろう。


勿論、目の前にマインという障害がいるわけなので、即時こちらに向かってくるという事はないだろうがオーク・キングと言う何をやらかすか予想が出来ない相手に行う行動では無い。


元B級の冒険者であるアイシャがこの事を知らない訳がないので、余程焦っているのだろう。


私の制止を聞き、アイシャが奥歯をギリッと噛みしめるのが分かった。

きっと何も出来ない自分に腹を立てているのだろう。


私だってそうだ!まさに今苦戦をしている彼を援護する事が出来ない自分に腹が立って仕方がない。


だが、私達がそんな葛藤をしている間に戦局は大きく動いたのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「な、何が起こった……?」


突然、マインの手が光り輝いたと思ったら見た事が無い程、美しい短剣が現れた。

離れたこの場所からでも、凄まじい力を持っている短剣だと分かる。


あれも、彼のスキルなのか……。

ひょっとして彼自身が神なのかもしれない、思わずそんな馬鹿げた事すら考えてしまう。

それ程に彼は理解出来ない存在であった。


そして、遂にその瞬間がやってきた。

先程も見せたが、恐らくあれは【武技:シャークグロウ】だろう。


その圧倒的な破壊力で災害級モンスター、オーク・キングは地に堕ちた。


ふう、彼のおかげで何とか生き残る事が出来たか。


彼ならば……私の希望を十分に満たしてくれるだろう。

目的達成という所か。


さて、この後どうやって私の目的を理解してもらうかを考えなければならないな。


隣で嬉しそうに笑顔を見せるアイシャにちらっと視線を向け、彼女も恐らくは……。



こうして、私とアイシャはマインの元へと駆け寄るのであった。


何時もお読み頂きありがとうございました。


感想、評価頂けますと励みとなります。

宜しくお願いします。


今話にて長かったオーク集落編は終了です、正直女性視点を書くか悩みはしましたが如何だったでしょうか。


【改稿】


2017/03/11

・全般の誤字を修正。

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