第276話 牢獄の迷宮(ダンジョン)(2)
「旦那様とわっふるだけって……危険では無いのか?」
シルフィが心配そうに呟いた。
「大丈夫だよ。安心して見ててくれる?竜のドロップ品って一体何だろうね」
そう、僕はイスゲビンドを倒す自信があった。
わっふるが攪乱して僕がトゥワリングでとどめを刺す。
「あ、全員、わっふるの重力の魔眼が始まったらイスゲビンドに一撃入れて欲しいんだ。石をぶつけるだけでもいいから」
天そう、こいつを倒せばきっと大きな経験値が手に入るはずだ。戦闘に参加してないと経験値は入らない。
僕とわっふるだけが手に入れるだけでは勿体ない。
「私はともかく、シーラは難しいのではないか?」
シルフィがそう呟く。
そうか、シーラには長距離の攻撃方法が無い。
手持ちで余っている魔法をペーストしよう。
「えーっと、今から、シーラとサーシャ、ピロースにいくつかスキルを貼り付けます」
まず、シーラとサーシャ、ピロースの三人に【再生】と【獲得経験値10倍】と【固有魔法・雷】をペースト。
二人にどんなスキルを貼り付けたのか説明していく。
「今貼り付けた【固有魔法・雷】を使って貰える?」
「あなた……私は最初から魔法使えるわよ」
「サーシャの魔法は範囲魔法だからわっふるも危ないからね」
「全員、当てたら報告ね」
『わっふる、作戦会議だ』
『わふっおれにまかせろ!』
『いいかい、わっふるまず【飛翔】で飛び回ってドラゴンの注意を引いて欲しいんだ』
『ふらいんぐわっふるだぞ、がおー』
『それで、【重力の魔眼】で動きを封じて欲しい』
『わっふる、全員が攻撃を当てるまで重力の魔眼は継続してね』
『わふっまかせろ!』
『動きが止まったら僕が【固有魔法・時空】で後ろに回り込んでシャークグロウを撃つからね』
これがベストのはずだ。
オークキングやトロールゲイザーのような魔物ですら葬り去ってきた。これが僕の持てる最大の攻撃だ。
『まいん、おれおもうんだけど、じゅうりょくのまがんよりもまいんのおうのいあつのほうがよくないか?』
『いや、今回はわっふるにお願いするよ』
「それじゃあ、作戦開始だ!」
僕がそう宣言するとわっふるは大きく伸びて気合いを入れる。
そしてプカァと浮かんで天井付近まで移動する。
ここまでは今まで持っていた【空中浮遊】だろう。
だが、今のわっふるにはついさっき【ペースト】した【飛翔】がある。
これさえあれば空中を自由自在に飛び回れる筈だ。
『じゃあ、いってくる!』
いつも通り僕達に右前足を挙げて「わふっ」とひと鳴きしてわっふるは凄まじい勢いでイスゲビンド目指して
飛んでいってしまった。
そして、わっふるに気がついたイスゲビンドは天上が崩れるんでは無いか?と思うほど激しく咆哮した。
だが、わっふるはそれに構わず、打ち合わせ通りに【重力の魔眼】をイスゲビンドに向けて使用したようだ。
「全員、攻撃開始!!」
シルフィがライナス・スワードを振り上げて号令を掛けた。
すると、アイシャは弓を打ち放ち、シルフィとピロースサーシャ、シーラは一斉に【固有魔法・雷】を打ち放った。
僕はそれを見てトゥワリングを【リアライズ】で生成して【固有魔法・時空】でイスゲビンドの背後に回り込んで
全力で【武技:シャークグロウ】を叩き込んだ。
先ほどの咆哮よりも大きな悲鳴をあげてイスゲビンドはゆっくりと崩れ落ちていく。
崩れ落ちた後には……
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名前:ドラゴン・クロウ
攻撃:+150
階級:聖級
属性:氷
特攻:ドラゴン
備考: 時々4倍撃
武技:武技:ブルー・インパルス
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聖級の格闘武器だ。専用の武技も着いてる。
結構良さそうだ。
良いスキルと良い武器をいきなり得る事が出来た。
これはヨルムンガンド様に感謝だね。
「わふっまいん、ここにすごいのがはえてるぞ」
なんかわっふるが見つけたようだ。
慌ててわっふるの元に走って行くとそこには薬草らしき草がいっぱい生えていた。
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名前:霊験草
備考:万能薬の材料となる霊草
魔力が溶け込んだ水と一緒に【錬成】すると万能薬となる。
……これ、なんだ?
「ねえねえ、万能薬って知ってる?」
僕がみんなに聞いてみるとシーラが答えを返した。
「どんな病気や体の欠損でも瞬時に治してしまうという霊薬ですね、それがどうしましたか?」
「……、なんかこの薬草で作れるみたい……」
僕がそう言うと、全員が一瞬呆けた表情を見せて騒ぎ出した。
「だ、旦那様。そ、それがあればエアリーも治せるんじゃないのか?」
シルフィが期待を込めてそう口にする。
霊験草を採れるだけ採って、収納袋に放り込んでいく。
「ドラゴンの素材持って帰れるの?」
アイシャがイスゲビンドを見ながらそう呟く。
確かにこの巨体だと収納袋に入らないかもしれないね。
取りあえず【カット】してしまおうか?
僕が【カット】しようと立ち上がるとピロースも立ち上がって僕を手で制止ながら「まて」と言い出した。