第272話 合同結婚式(7)
さて、いよいよ明日は二度目の結婚式だ。
長い人生の中でまさか二度も結婚式を行う事になってしまうとは運命なんてわからないものだね?
リッツ王家とオオセ王家からの来賓も無事に到着してあとは式を執り行うだけだ。
サーシャの衣装合わせはシルフィとアイシャが付き添ってくれているのでスムーズに進んでいるみたいだし。
僕の準備なんてあっという間に終わっちゃったし、やる事が何も無いからという訳では無いけれどわっふると一緒に
父さんと母さんのお墓参りにやってきている。
「父さん、母さん、元気だった? 僕ね、明日また結婚式をする事になったんだよ」
「……と言っても離婚して再婚するわけじゃ無いんだ。だから安心してね ……相手はね、何と吃驚だよ」
「なんとリッツ王国の御姫様なんだ。他国の御姫様が僕に嫁いでくるんだ」
「なんか吃驚しちゃうよね。スキルを授かってから吃驚する事がいっぱいだよね」
「二度目の結婚式だけど……それでもやっぱりお父さんとお母さんには出席して欲しかった」
「そうだ、ファーレン様も似たような事を言ってたよ」
「お父さんとまた一緒に酒でも飲みたかったと」
「ガーネット様もお母さんにまた会いたいって言ってる」
「ああ、そうだ。お母さん聞いてくれる? お母さんのお弟子さんだったシオン姉ちゃんだけどアルト殿下のお嫁さんになるんだよ」
「明日一緒に式を挙げるんだよ、すごいでしょ?」
『まいんー、おれもしょうかいしてくれー』
わっふるが僕の頭をいつも通りぺしぺし叩いてそう主張する。
「お父さんお母さん、この頭に乗ってるのは神獣フェンリル様の息子でわっふるって言うんだ 大事な家族の一員なんだよ」
『わふっ』
僕がわっふるを両手で持ち上げてお墓に向かって掲げるとわっふるは右前足を挙げて父さんと母さんに挨拶する。
『わふっ まいんのこはおれがまもるからあんしんしてくれ』
「そうだ!わっふるはねすっごく強いんだよ。前ブラックドラゴンと戦ったときにわっふるは僕を守ってくれたんだ すごいでしょ」
『マイン君、何処にいるの?サーシャ様の準備が終わったからもどってきてくれる?』
……するとアイシャから【念話】が届いた。
「じゃあ、お父さん、お母さん行くね、今度新しいお嫁さんを連れてくるから待っててね」
『うん、ごめん。今戻るよ』
僕は周りを確認してから【固有魔法・時空】を使用して家へと戻ったんだ。
僕が家に戻ると王家からの迎えの馬車が到着していた。
フォルトゥーナ家から出席するのは、当然僕、そしてシルフィとアイシャとわっふる、クゥだ。
わっふるは前回のの式同様、神様の代理人的な位置づけになるそうだ、今回は更にクゥも同じ立場で参加する。
神官長さんがそれはもう必死に僕らに二匹の参加を依頼してきたのだ。
前回わっふるが参加してるんだし、僕らには断る理由も無い。クゥに聞いたら
「きゅきゅきゅー、クゥもさんかするんですー」
と快諾だったのでわっふるとクゥの参加はあっさりと決まったんだ。
そう伝えたら神官長さんは大層喜ばれて、今後行われる全ての式に是非とも参加していただけますと……と言い始めたので
流石に慌てて断りを入れたんだ。
僕ら以外にわっふる達の正体を世間にばらすわけにいかないもんね。
結局、神官長様の申し出はファーレン様の一言で却下されたんだ。
……申し訳ないけどこればかりは仕方ないよね。
僕達は王都からの迎えの馬車に乗り込み。
早速王都へと旅立ったんだ。ルーカスの沿道では大勢の人達が僕らを人目見ようと押しかけていた。
……そう、前の結婚式の時のように町中が祝福をしてくれているようだ。
今回の式はルーカスから馬車でお披露目をしつつ王都に向かう事になっていた。
前回のように王宮から神殿に向かう訳では無いので時間的な余裕は無い。
王家の馬車はとにかく高速だ。普通ならば半日かかる道程も3時間と掛からずにすむ
王都に到着すると今度はゆっくりと神殿まで進んで行く。王都でもやっぱりすごい人が沿道に集合しており僕達を祝福してくれるんだ。
今回はなんと言ってもお義兄さんの結婚も一緒だからね。王都の喜びも一段と大きいのだろう。
次期国王の結婚、これは市民にとって人ごとでは無い。
神殿に到着すると、既にお義兄さん達とルイス殿下達は到着していた。
女性陣の姿が見えないのは、衣装合わせだね。サーシャも到着してすぐに女性の神官に連れて行かれた。僕はと言うと緊張でガチガチに固まっているルイス様達と一緒に男性の衣装部屋へと
案内された。
わっふるとクゥ、シルフィ、アイシャはやはり神官さんに連れて行かれ、いよいよ式の準備は大詰めとなったんだ。
そして、緊張する王子二人と一緒に控え室で待っていると神殿長さんが前回同様迎えにやってきたんだ
「
式場へとご案内させて頂きます」
まず、お義兄さんが立ち上がり軽く神官長さんへ頭を下げる。
次はルイス殿下が同じように着るいつして頭を下げた。
僕もルイス殿下が着席したと同時に起立して頭を下げた。
「マイン殿はおわかりでしょうがこの後、秘密の通路を通って式場に参りますのでしっかりついてきてくだされ」
そう言って神官長も頭を下げた後ゆっくりと部屋を出て行った。
その後をお義兄さんとルイス殿下が急ぎ足でついて行く。僕はその間に脳内で【【地図】を確認して道順を把握しておく。
前回色々回り道した気がするけどこうやって【地図】で確認するとすぐ側だったんだね
そして二人の後を追いかけて歩く事5分、僕は再び、神を奉る祭壇に到着した。
「では、ここで立ったままお待ち下さい、間もなく新婦様方が見えられますので」
神殿長さんはそう僕達に告げた。
そして前回同様式での自身の立ち位置であろう祭壇前にある小さな台の上まで歩いていき、こちらを向いた状態で目を瞑る。
神殿長さんの言葉通り、婚礼用の衣装に身を包んだ四人の美女が祭壇のあるこの部屋に順々に入ってきた。
恐らく神殿関係者であろう少し変わった服装をした女性に手を引かれ、サーシャが僕の横にやってくる。
お義兄さんの両横にはシオン姉ちゃんとスターシャリオン様がルイス殿下の横にはルカ様がやってきた。
そしてお嫁さん達を誘ってきた女性は僕達に軽く会釈をして、そのまま退出していった。
わっふるとクゥはのんびりと自分達に宛がわれた籠の中にジャンプして飛び込むのが見えた。
そしてわっふるは僕の方を見つめ右前足を籠から出して一生懸命手を振ってくる。
『まいん~まい~んがんばれよーおれがついてるからなー』
ついでに【念話】も飛んできた。
手を振り帰す事も出来ないので、【念話】で
『わっふるありがとねもう少しだから我慢してね』と伝えるとわふっと軽く吠えて籠の中に潜り込んでいった。
「……では、僭越ながら私がお三方の結婚式を執り行わせて頂きます」
僕達の準備が整ったのを確認した神殿長さんがそう話しかけてきた。
緊張した面持ちで僕等が頷くと、神殿長さんは聞いた事が無い言葉で粛々と歌い始める。
何でも祝詞の一種で、神様に僕達が結婚しますよという事を報告しているとの事だ。
聞くのは二度目だけど全く分からないのはおんなじだ。
そして神殿長さんの祝詞が終わった瞬間の事だ。
僕の体とサーシャとクゥの体が蒼白い光に包まれたんだ。
前回も授かった神様の祝福だ。
「……おおっ!!」
それを見た神殿長さんがまたまた感嘆の声を上げる。
【鑑定】してみると僕に【女神の祝福・大】と言うのが増えていた。
クゥとサーシャには【女神の祝福】という前回僕とアイシャ、シルフィ、わっふるが授かった物と同じ物が増えていた。
【女神の祝福・大】:病気や怪我、状態異常などを受け付けなくなる。
……これは凄いな。【女神の祝福】もすごいんだけど、大となるとまさに神の所業だ。
「マイン・フォルトゥーナよ、汝はこの者を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「はい!誓います!!」
「サーシャリオン・リッツよ、汝らはこの者を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「はい!誓います!!」
「アルト・オーガスタよ、汝はこの二人を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「勿論!誓います!!」
「スターシオン・ボヤーダ、並びにスターーシャリオン・リッツよ、汝らはこの者を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「「はい!誓います!!」」
「ルイス・オーガスタよ、汝はこの者を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「はい!誓います!!」
「ルカ・オオセ、汝はこの者を生涯愛し続けると神の前に誓うか」
「はい!誓います!!」
神の前での宣誓も終わりいよいよ神殿長さまからの祝福が女性達に贈られた。
……そして誓いのキスだ。
「義弟お前に栄えある一番手を命じる」
お義兄さんが小声でとんでもない事を言ってきた。
ずるいなあと呟きながらサーシャの前に立った。
そして軽く抱き寄せてえその唇にチュっと軽くキスをした。
次はお義兄さんだろうと
後ろを向くとルイス様が渋い顔して待っていた。ああ、やっぱりお義兄さんに先に行けと言われたみたいだね?
ルイス様もルカ様を抱き寄せて僕みたいに軽く唇をちゅっとやっていた。
こういうのは後に回すほど緊張するんだよな。
そんな事を考えながらお義兄さんを見ていると諦めたのか、まずシオン寝ちゃんを抱き寄せてその唇に熱烈なキスをしていた。
開き直ったのかな?
そして続けてスターシャリオン様を同じように抱き寄せ、同じような熱烈なキスをしている。
「これにて、皆様方の結婚は成されました!おめでとうございます」
神殿長さんの宣言が高らかに部屋中に響き渡り、僕達は晴れて夫婦となったんだ。
……ちなみにわっふるとクゥは前回同様籠の中で熟睡してたんだ。
問題はこの後だ。
多分、お披露目をやるんだろうなあ。
はぁとため息を一つつくとサーシャが心配そうに僕の腕を取り「どうしたのですか?アナタ」
と声を掛けてきた。
そうか、サーシャはそう呼んでくるかシルフィの旦那様も照れるけどこれも照れる。
「いや、なんでもないよ、この後お披露目があると思うから憂鬱で……」
「心配要りませんわ、主役は誰がどう考えてもアルト殿下達ですから、私達はひっそり目立たぬよう端っこにでもいれば」
……それはどうなんだろう。
僕が腕組みして考え込んでいるとノックの後が響き渡って、ファーレン様とガーネット様、レクタル殿下、エアリーの王族一同様と
アイシャとシルフィが入室してきた。
「アルト、ルイスおめでとう!」「兄上達、おめでとうございます」
「サーシャおめでとう。これで晴れて同じ立場だな」
「マイン君、これからもしっかりお願いしますね」
祝福と激励が続く中、神殿長が控えめに割ってはいってきた
「皆様、本日はおめでとうございます。
新郎新婦様方に親族の皆様の人生にとって最良のこの日を心よりお慶び申し上げます。
これより、一般市民への御広目を行わせて頂きます。
恐れ入りますが、こちらにご移動頂けますでしょうか」
ああ、とうとう来てしまったよ……。
……いよいよだ。
「では、よろしいですかな?
この扉を開けますとベランダがございます。
そちらで市民の声に手などをお振り頂いてお応え下さい」
神殿長さんの言葉が終わらぬ前に扉がギィギィと音を上げながらゆっくりと開いていく。
『『『『『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!アルト殿下ばんざーーーーーーいルイス殿下ばんざーーい』』』』』』』
扉が開ききると、その向こう側から地鳴りのような歓声が聞こえてくる。
お義兄さんは笑顔を浮かべてベランダの中央に進み、スターシャリオン様の腰に手を回し、市民達に手を振り始めた。
流石に場慣れしてるよね。スターシャリオン様も笑顔で手を振ってるよ。
僕とサーシャはベランダのはじに目立たぬよう移動して軽く手を挙げて振り始めた。
10分程、そうして手を振り続けていると……
神殿長さんが、何かしらスキルを使用したのが目に入った。
“お集まりの皆様、ご静粛にお願い致します。
これよりアルト殿下とその伴侶であらせられますスターシャリオン様から代表してお言葉を頂きます”
ふう。今日は僕はスピーチしないでいいんだね。良かったああああああ。
”諸君、アルト・オーガスタだ今日は我々のためにこうして集まって頂き、感謝する”
お義兄さんがよどみなくスピーチを始めるとあれだけ騒がしかった声が消え失せ、是認がお義兄さんに注目しているのがわかった。
……やはり次期国王ともなると注目度は凄いんだなあ。
お義兄さんのスピーチが終わり僕らは再び神殿の中に戻り、そこで結婚式は終了となったのだった。
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
更新が不定期になっており誠に申し訳有りません。
病気以後の文章についてご指摘、修正を希望される方が
依然多いようです。
現状では更新と修正両方を行う力が私にありません。
どちらか一方だけとなりますので、当分更新を控える事にしました。
本日の更新をもちまして、更新については当分見合わせます。
申し訳ありません。
と月曜に書きながら更に更新してしまいました。
結婚式だけどうしても終わらせたかったので先にこれだけ書き上げました。
修正が終わった話については基本ツイッターで報告を行います。
修正もゆっくりと行っていきます。
活動報告でも余裕があれば行いますが、基本ツイッターだとお考え下さい。
以下宣伝です。
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『カット&ペーストでこの世界を生きていく』コミカライズ
原作:咲夜
漫画:加藤コウキ様
キャラクター原案:PiNe様
水曜日はまったりダッシュエックスコミックス様にて
http://seiga.nicovideo.jp/manga/official/dashcomic/
5/30から連載開始しております。毎週水曜更新との事です。
現在第6話までお読みいただけます。
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また9月10日に書籍版3巻が発売が決定しました。
アマゾンの予約はすでに始まっております。
是非、お手にとって頂ければと思います。
皆さんの応援が続けば次が見えて参ります。
今後とも何卒、宜しくお願い致します。
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ツイッター@Sakuya_Liveの方でまた続報は逐次アナウンス致します。
こちらの方も覗いて頂ければと思います。
本編の方ですが今後は新展開を交え元々のプロットの展開を書いていきます。
更新はのんびりと行いますのでお待ち下さい。




