第270話 【神獣の契約】(1)
『なんだい、マイン?』
ほどなくしてフェンリル様から返事が返ってきた。
『実は新しくお嫁さんを貰う事になりまして、【神獣の契約】をお願い出来ないかと思いまして』
『ほう、新しく嫁だって?構わないよ、お前の嫁なら私とも長い付き合いになるだろうさ』
フェンリル様は実にあっさりと承知してくれた。
『……それでいつ行う?なんなら今そっちにいこうか?』
『い、今からですか?少しだけ時間を頂いても良かったでしょうか?』
『勿論、構わないよ、他ならぬお前の頼みだ』
た、大変だ。フェンリル様が来るというなら【固有魔法・時空】を使わなきゃいけない。
……けどスキルを知らない姫が沢山いるんだ。そもそもそのために【神獣の契約】をお願いするんだから
隣の部屋で使ってそこでお願いをしよう。
……うん、それしか無い。
そおれだけ決めて僕は元いた部屋へと急いで戻った。
慌てた様子の僕を見て、シルフィが心配げに僕の腕に縋り付いてきた。
「……旦那様何を慌てている?落ち着いてくれ」
「うん、フェンリル様だけど、今からこっちに来て【神獣の契約】を行ってくれるって」
僕がそう言うと今度はお義兄さんが立ち上がって話し出した。
「実はマインの所持するスキルが途方も無い物でな、秘匿しているんだが……」
お義兄さんは大きく身振り手振りを加えながら事情を知らない双子姫とルカ様、シオン姉ちゃんに説明していく。
「……という訳だが、シーラ殿以外で受けたいと言う肩がいれば挙手して欲しい」
お義兄さんの問いが終わると、控えめにルカ様が手を挙げた。それに釣られるようにサーシャとスターシャ様が手を挙げる。
シオン姉ちゃんは頭をブルブルっとわっふるのように振ってから手を挙げた。つまり全員という訳だ。
「よし、じゃあ義弟よ準備をしてきてくれ」
流石お義兄さんだ。僕がやろうと思ってることを理解してる。
大きく頷いて僕は隣の部屋に飛び込む。勿論、わっふるも一緒だ。
そして【固有魔法・時空】を使い神霊の森のフェンリル様の住処に繋ぎ飛び込んだ。
僕が飛び込むとわっふるの弟たちから熱烈な歓迎を受ける。
体当たりで押し倒され顔中をなめ回されたんだ。……顔を舐めている兄弟に混じってわっふるも一緒になってなめ回していた。
尻尾をすごい勢いで振っているから、文句も言いづらい。
身体強化をして3匹を引き剥がし、立ち上がるとフェンリル様がこちらをじっと見つめていた。
「お前は本当にうちの子達に好かれてるねえ」
「それで、準備は出来たのかい?」
「はいっ」と返事を返してわっふるを抱き上げた。
僕が黒い渦へと歩み寄るとフェンリル様も後をついてきた。
……あれ?るーぶるとめーぷるの二匹も一緒に歩いてるぞ。
……まさか、一緒に来る気なのかな?
「かーさん、おれたちもついていく、にいちゃんばかりずるい」
「お前達はここで留守番してなさい」
フェンリル様に諭され、二匹はしゅんと尻尾を丸めてその場に座り込んでしまった。
「わふっ」
僕の腕の中でわっふるが勝ち誇った表情で尻尾をパタパタと振っている。
するとフェンリル様が自らの尻尾でわっふるの頭をぺシっと叩いたんだ。
「きゅん」わっふるが軽く鳴き声をあげる。目に涙を浮かべている。
ブラックドラゴンと戦ったときですら泣かなかったわっふるを泣かすとは、さすがフェンリル様だよ。
おっと感心してる場合じゃないや、急がなきゃ。
気持ち早歩きに渦を通り抜けて元の部屋に到着した。
「では、対象者を連れて参りますのでお待ち下さい」
フェンリル様にそう告げて、隣の部屋へと急いで戻った。
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
日々の更新が滞っており不定期になっており誠に申し訳有りません。
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よろしければ是非こちらも読んで頂ければと思います。
ツイッター@Sakuya_Liveの方でまた続報は逐次アナウンス致します。
こちらの方も覗いて頂ければと思います。
本編の方ですが新展開を交え元々のプロットの展開を書いていきます。