第267話 動乱のローラシア王国
状況確認が最優先なんだけど、ファーレン様からはこれ以上の話は聞けない感じだ。
こうなったらシーラに聞くのがてっとりばやいのかな?
ファーレン様の話ではもうシーラと結婚する必要は無くなったらしい。
……では、僕の気持ちはどうなんだろう。
目を閉じてシーラの姿を思い浮かべる。
元々は彼女とは始まりの短剣がきっかけだで始まったんだ。
彼女は僕らと一緒に冒険に出たいと言い出したのがそもそものきっかけだった。
彼女は回復のエキスパートでその回復能力は聖女スターシオン姉ちゃんにも匹敵する。
僕らのクランに回復役はいない。単純なクランの強化だけを考えるならば
彼女の加入は望ましいといえる。だけど、僕のスキルを話す訳には絶対いかない。
家族になってフェンリル様に加護を貰えばその問題もクリアされはするけれど……。
けど、そんな理由で結婚してしまってもいいのだろうか?
彼女が強く望めば周囲も賛成している事だし……結婚してしまおう。
そこまで考えて目をつぶりシーラの姿を脳裏に浮かべた。
というか、結婚前提で話は進んでいるからこそ、こうして僕は王都に来たんだ。
それなのに、急にはしごを外されるとは一体どういう事なんだろうか?
ファーレン様に聞いてみると、
「よかろう。自分の目で確認してこい」
そう言って僕を伴い、ローラシア王家がいるという僕達の部屋の隣室へと向かったんだ。
ファーレン様がドアを叩くと中から大仰な声で入れと返事が聞こえてきた。
声を聴いてファーレン様は一瞬むっとした顔をしたが、ドアを力強く開け放った。
……部屋の中には、やたら煌びやかな衣装に身を包んだ壮年の男性と優しげな笑顔を見せてそっと
その男性の後ろに立つ、年配の女性。
更に法衣に身を包んだ、シーラと僕よりも年下のような元気いっぱいの男の子がいた。
「何用だっ!ファーレン。用が無いならさっさと帰れ」
煌びやかな衣装の男性は国王様に向かってぞんざいな口調で話しかけた。
僕が顔を顰めると
「そう、憤るなジョージよ、マインを軽く見るでないぞ」
「シーラ殿の婚姻の件でやってきたのだ」
「シーラの婚姻だとッ!!するとそこの貧乏くさいのがマインとか言う奴か」
「マイン、紹介しておこう」
ファーレン様から紹介されたのは、先ずこの口が悪い壮年の男性。
ローラシアお国王でジョージ・ローラシアだ、つまりシーラのお父さんだね。
つぎのに紹介されたのはその後ろでにこやかな笑みを浮かべている女性だ。
名前はセルビナ・セルビナ・ローラシア王妃だ。
つまりシーラのお母さん。
……あれれ、待ってよ。ローラシア王はシヴァ様に粛正されて命を落としたんじゃ?
と思ってたら、何でも勇者の一人に蘇生出来る人がいるとかで生き返る事が出来たんだって
死者を蘇らせる!?それって、お父さんやお母さんを生き返らせる事が出来るのかな?
そんな事が可能なら是非お願いしたい物だけど……。
けど、きっと無理だとおもう。そんな事が可能になったら世の中、死んだ人は居なくなってしまう。
ああ、話がそれてしまったね。
結局、シヴァ様に殺されてしまった王様が勇者のおかげで生き返ったので跡継ぎの緊急性が無くなり
シーラと僕の結婚の必要性が薄れてしまった要因の一つだ。
更にもう一つの理由……。それは元気いっぱいな男の子にあった。この子はクフィム・ローラシア
シーラの弟だ。……つまり、ローラシア王国の王子様という事だね。
この王子様が何でも巫女頭の妹さんと結婚をするらしいんだ。これにより僕とシーラの結婚の意味合いが無くなったと
言う事だね。
……なるほど、ファーレン様が僕に決めろと言う訳だよ。
僕が状況を理解し、頭を悩ませているとシーラがツカツカと目の前にやってきて
必死な表情で「マイン様、お願いします」
そう訴えかけてきた。
シーラが僕と結婚する事の意味がもう一つあったのだけど、それも意味合いが薄くなってしまっていた。
各国同盟を結び魔王軍に対抗するという意味も魔王が没した今となっては余り意味は無い。
そういう意味ではサーシャもそうなんだよね。
「シーラ姫、結婚する外付けの理由は無くなりましたが、シーラ姫は今でも僕との結婚を望まれていますか?」
僕がそう訪ねるとシーラは
「結婚しなければアナタのクランには入れて貰えないのだろう?」
……そうだったーー!僕のスキルを話せないなら家族になろうと結婚話が出たんだった~。
……けどあの時から状況は変わっている。
そう、変わっているんだ。
あの時は神獣様の存在を明かす事が出来なかった……けど今は既にシヴァ様がローラシアで姿を見せているのだから
フェンリル様の事を明かしても問題は無い。
フェンリル様の存在を明かせるのならば、【神獣の契約】を受けてもらえば僕らのクランに入って貰える。
だから無理に結婚する必要は無い。
僕自身としてはこれ以上、お嫁さんは要らないんだ。
……ルカ様の求婚を断った手前もある。結婚は回避する方向で考えたい。
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
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加藤先生がとても頑張って頂いておりまして原作者の私から見ても続きが気になる出来映えです。
よろしければ是非こちらも読んで頂ければと思います。
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