264話 合同結婚式(2)
……本当だった。アルト殿から打ち明けられた話、すなわち、移動扉の能力。
「……ここは、本当にルーカスの町だ」
隣で驚いているスターシオンの様子を見ればここが王都から遠く離れたルーカスの町だというのは間違い無い。
彼女はこの町に住んでいたのだから。
私達が感慨に浸る間もなく、アルト殿はスタスタと歩いて行ってしまった。
随分と真新しい建物だ、ここは?
「アルト殿、ここは一体?」
「ああ、ここは義弟のクランハウスだよ」
そんな会話をしていると甲冑に身を包んだ女性騎士が入室してきた。
「誰かと思ったら、殿下でしたか……ご用はマイン殿ですか?姫様ですか?」
女性騎士はアルト殿を見て露骨にほっとした様子を見せてそう尋ねてきた。
「ん、メリッサかこちらでの暮らしはもう慣れたか?」
どうやらアルト殿とこの騎士は顔見知りのようだ。
「ええ、セシル団長が居ないので安心して暮らせます」
「……セシルか、アレの病気にも困った物だ。だが、あいつも身を固めるらしいから、少しはよくなるんじゃないか?」
「ミーティア殿にはお見舞い申し上げたいですね」
「ああ、伝えておこう。用事は義弟というかサーシャリオン殿だな」
メリッサと呼ばれた女性騎士はちらりと私を見てから大きく頷いて騎士の礼をとり、そのまま駆けだしていった。
「今の女性は?」
そう尋ねると、昔の部下だと教えられた。
今は、マイン殿のフォルトゥーナ家に勤めているらしい。
優秀な騎士だったが、話題に出たセシルという男のセクハラに嫌気をさして転属を願い出て、親交の深いシルフィード様の居るここに
異動となったそうだ。
……良かった。余りにもアルト殿が親しげに話すのでアルト殿の愛人かと勘繰ってしまったわ。
真面目なアルト殿に限って愛人などあり得ないのは十分理解してはいるが……こんな感情を持つと言うのは私も女だという事か。
アルト殿が席についたのをきっかけに私とスターシオンも背欽座り、先ほどの騎士の帰りを待つ事にする。
……待つ事およそ5分で部屋の扉wノックする音が聞こえた。
「姉さん!居るの?姉さん」
……この声はそうだ私の妹サーシャリオンだ。
「サーシャ、入りなさい」
私がそう声を掛けると遠慮気味にゆっくりと扉が開いていく。
扉が開き、そこに居たのはサーシャでは無くシルフィード殿下だった。
「シルフィード殿下の背後に妹のサーシャと恐らくその伴侶となるマイン殿の姿も見えた」
「兄上、いきなり来るとはどうしたんだ?メリッサが驚いていたぞ」
シルフィード殿下がアルト殿に少々怒り気味に声を掛けている。
姫騎士と言われるだけあって、シルフィード殿下は気が短いようだ。
「……い、いやな、スターシャがサーシャリオン様と結婚式の日取りを打ち合わせしたいと言うからな、連れてきたんだ」
アルト殿のその言葉w引き継いで私がサーシャに、妹に声を掛ける。
「サーシャ、お父様とお母様の移動時間があるでしょう?私達とあなたたちの日取りは最初から併せておいた方がいいと思うの、それで打ち合わせに来たのよ」
「……ふむ、そういう事ならば、そこの机で話し合われたらどうか?」
シルフィード様に促されて、私とサーシャリオンは指示された机に移動して腰掛けた。
一方、アルト様は小声で何かをマイン殿に囁いている。なんだろう、私達に話す事が出来ない話だろうか……?
そんな事を考えているとアルト殿はマイン殿と一緒に部屋を出て何処かに行ってしまった。
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
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