第259話 終戦と緊急事態・オーガスト王国にて
「一体、どういう事だ?旦那様」
「今フェンリル様から連絡が来たんだ。魔王が、魔王カイエンが死んだらしい」
「なっ!!?それは本当なのか?……ならば、旦那様のその様子も理解出来る」
「まだ詳細は聞いていないけど神獣の一柱が倒したみたいだよ……」
「なるほどな……それでフェンリル様から連絡があったのか」
兎に角今はファーレン様に報告だよっ
周りに誰も居ない事をしっかりと確認して僕は【固有魔法・時空】を使用して王宮の僕とシルフィの部屋に繋いだ。
「ミーティアさんを呼ばないとね……」
僕がそう言うとシルフィは首を振って僕の手を引っ張る。
「私がいれば大丈夫だ、旦那様」
「恐らく父上は執務室だろう……」シルフィがそう呟き歩き始めるとドアをノックする大きな音が聞こえた。
「……なんでだ?なんで居るのが判ったんだろう?」
僕とシルフィは顔を見合わせて首を傾げた。
理由は分からないけど取りあえず返事しなきゃ
「誰だ?もう少し静かにたたけないのか?」
シルフィが若干怒気を含んだ声で返事をする。
「あ、姫様っ、良かったお見えだったのですね」
ん?この声はミーティアさんみたいだね
言い方から考えるに僕らがいるのを知っていたわけではないようだ。
シルフィがツカツカと扉に近づき、ドアを開けると予想度お降りミーティアさんが居たのだ。
……それからセシル団長もいた。
「姫様っ!緊急事態です。国王様の元に早くお向かい下さい」
緊急事態だって!?良く見るとセシル団長、右腕に大きな怪我をしているみたいだ。
緊急事態というのに、それが関係あるのかな?
「セシル団長、その腕はどうされたのですか?」
「今は国王様の下にお急ぎ下さい」
僕は大きく頷いて、シルフィの手を取り、国王様の執務室へと走り出した。
執務室に到着するとシルフィが若干乱暴目にドアをノックしながら声をあげた。
「父上っ、私だ。シルフィードだ緊急事態と聞いた。入るぞ」
そして返事も待たずに扉を開ける。
……唐突の出来事に中んに居た国王様とモルグ宰相は呆気にとられた表情でこちらを見ていた。
「コラっ、シルフィ、どうしてお前はそうなんだ?結婚して少しは落ち着くかと思ったが……少しはアイシャ殿とサーシャリオン様を見習いなさい」
ファーレン様が腰に手をあてて、シルフィに苦言を発する。
「それはともかくとして、良い所に来てくれたな、マイン」
「国王様、シルフィもさっき言いましたが緊急事態ですって? どうしたんです?」
僕の話も重要だけど、さっきのセシル団長の怪我から考えると国王様の方を優先させるべきだろう。
「うむ、実はな……王都内に謎の魔物が現れた……いや、魔物と呼んで良いのかも不明なのだが……」
えええ?王都の中に魔物だって!!、一般市民が危ないと言う事でしょう?それは確かに緊急事態だ。
「父上、魔物と呼んでいいとは?」
……国王様の話をまとめるとこうだ。
いきなり王都の広場に4体のオークの姿をした石像が出現したらしい。
その石像に近づくと石像を中心に4体のオークがいきなり宙から湧き出たというのだ。
そしてその湧き出たオークをきっかけに、他の3体の石像も各4体のオークを連鎖して湧き出したのだ。つまり都合16体のオークが王都のド真ん中でいきなり出現したのだ。
それは大騒ぎどころじゃない。
セシル団長率いる第二騎士団が制圧に向かったが、知っての通りオークと言う魔物は非常に強い。本来、C級の冒険者が複数で倒す魔物だ。
唐突の戦闘で、騎士団は大苦戦し、セシル団長も深手を負ってしまったとの事だ。
現在はお義兄さん率いる近衛騎士団が制圧に向かっており、事態は収束へと向かっているとの事だった。
……だが、その謎の石像が更に王都内で見つかったとの事だ。
「不思議ですね、石像って……」
新たに見つかった石像はゴブリンの形をしているそうなので、恐らく近づけばゴブリンが湧くのだろう。
「いつも頼ってばかりですまないが石像の駆除に力を貸して欲しいのだ。ああ、あと、フェンリル様は正体をご存じ無いかも確認してくれ」
「国王様。そのフェンリル様からの情報なのですが……」
僕は真顔で国王様に向き直り報告を始める。
「ん?どうした? 良くない知らせなら聴きたくないぞ……」
「いえ、そんな事はありません。朗報だと思います」
「朗報?なんだ?」
国王様は安堵の表情を浮かべて椅子に座り込んだ。
「はい、魔王カイエンですが……神獣の一柱が倒したとの事です」
「なにっ?ソレは本当か??確かに朗報だが、どうして急にそんな事が起こったのだ?」
「詳細はまだ分からないので、ちかいうちにフェンリル様のところに行こうと思ってます」
僕が背筋を伸ばしてそう言うと国王様は再び立ち上がって大きく頷きながら
「頼んだぞ、マイン何か判ったらすぐに知らせてくれ」
「わかりました!ついでに石像の事も聞いてきます」
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
日々の更新が滞っておりまして誠に申し訳有りません。
今話から新展開突入です。
急遽入れる事にしたエピソードですのでそれほどのボリュームは無いと思いますが
このエピソードを挟んで完結目指して進んで行く事となります。
最後までなにとぞ宜しくお願い致します。
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加藤先生がとても頑張って頂いておりまして原作者の私から見ても続きが気になる出来映えです。
よろしければ是非こちらも読んで頂ければと思います。
ツイッター@Sakuya_Liveの方でまた続報はアナウンス致します。




