第257話 魔王カイエン VS 召喚勇者達3 新たな神獣
「……う、嘘? 嘘よね?大和君生きてるんでしょう?」
千尋が泣きながら叫んでる。そらそうだろう。
俺と千尋、大和は一緒にこの世界に連れてこられたいわば、同期というやつだ。
その一人が『目の前で無残な死を迎えたんだ、気持ちは分かる。俺だって本当なら叫びたいところだ。
だが叫んでどうなる?俺までやられたら、大和は生き返る事が出来ない。
今現在最大の攻撃手である大和を欠いてどうやってこの危機を乗り切るか。
考えろ、考えるんだ、何かある。きっと何かあるはずだ。
……しかし、何でこんなに寒いんだろう?魔王の殺気のせいなのか?
いや、そんな訳無い。現実的に気温が間違い無く下がっている。
『魔王カイエン……召喚勇者を殺した事、神獣として許す訳にはいかん』
……おや、魔王の奴、なんで後ずさりしてんだ?反対にあのちっちゃな女の子が魔王ににじり寄ってる。
「し、神獣だと?なぜ人間の味方をする?お前達はこの世界の事には不干渉であっただろうが!?フェンリルといい貴様と言い……」
話が見えない。今のうちに大和を生き返らせておくか。
俺はまず再度自分に【死者絶対蘇生】を使用する。
すると再び頭の上に天使の輪が現れた。
「……よしっこれでいい」
俺は山に上半身に向かって手をかざす。そして、【死者絶対蘇生】を使用する。
……すると効果は覿面で大和の失われた下半身心がゆっくりと光につつまれながら生えてきたのだ。
「……なっ?お前、死者を生き返らせるのか?」
『どこを見ているカイエン、……では死ね【絶対零度】』
ちっちゃな女の子が魔王に向かって手を向けると、魔王の身体が足下から徐々に凍っていくようだ。
「き、君は、一体……?」
俺が女の子に尋ねると
「我が名はシヴァ、氷の神獣シヴァだ。心優しき異世界の勇者よ」
……
はいっ?神獣って何だ?
「神獣というのは神からこの世界の守護者に任命された力ある存在の事です。
私を含め全部で十柱存在します。
そう言うと彼女斧身体が光り輝き、徐々に大きくなっていく。子どもの体から大人の女性へと変化していったのだ。
その体は氷の結晶のように見え、とても人間のものとは思えなかった。
それで、魔王と言えば、復活した大和の聖剣によって粉々に砕け散っていったのだ。
そうまるで氷像がハンマーで殴られ砕け散るように……。
「……なんだ?やったのか?」
キョトンとした表情を宇影立ちすくむ大和に俺は声を掛けた。
「おうっ大和、ご苦労様だな。これであのいけ好かない国王からの依頼は果たせたな!!」
「た、たかし……まじか?まじに魔王を倒したのか?俺」
「ああ、間違いねえよ。正確にはそこにいる神獣シヴァ様のおかげだがな」
「そ、そうか、だが、孝、無事で良かった」
「すまねえな心配掛けて」
「全くよっ!!孝君が魔王と戦闘してるって聞いた時に寿命が縮まったわよ」
「千尋……お前も来てくれたんだな、ありがとう」
二人に心から礼を述べ、シヴァと名乗った女性に声を掛ける。
「俺達は王宮に帰りますが……一緒にいらっしゃいますか?」
するとシヴァは少し考えるそぶりを見せてから、頷いた。
「別に人間の王に興味などないが禁じられている勇者召喚を行った馬鹿者に仕置きせねばなるまい、随行させてもらおう」
かくして最大の危機を脱した俺達はシヴァという予定外の客を連れて王宮に戻るのだった。
◆◇◆◇◆
「良く無事に戻った。勇者達よ」
えらそうに王座にふんぞり返って俺達に声を掛けるジョージ王を見つめながら黙っていると千尋が王に話しかけた。
「国王様、魔王は死にました。倒しました。……ですから私達はこれで自由の身という事で良いですね?」
「ふぁっ!?待て待て待て、魔王を倒したじゃと?それは本当か?」
「どうやって倒した?」
俺らを馬鹿にした目で見ながら国王は問いかけた。
「……私が力を貸したのだ。」
するとシヴァが前に進み出てそう口にした。
「はて?見かけぬおなごだな、お主はなんだ?」
「我か?我は……神獣シヴァだ」
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
日々の更新が滞っておりまして誠に申し訳有りません。
痛みが引き次第、再び更新を安定化したく思っておりますので、しばらくご迷惑をおかけしますが
何卒ご容赦の程お願い致します。次回更新日は確定次第、ツイッターか活動報告にてお伝えします。
また、活動報告とツイッターで今後の状況はお伝えして参ります。
また、お知らせの通り、本作のコミカライズが決定しております。
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『カット&ペーストでこの世界を生きていく』コミカライズ
原作:咲夜
漫画:加藤コウキ様
キャラクター原案:PiNe様
水曜日はまったりダッシュエックスコミックス様にて
http://seiga.nicovideo.jp/manga/official/dashcomic/
5月30日連載開始です。
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加藤先生がとても頑張って頂いておりまして原作者の私から見ても続きが気になる出来映えです。
よろしければ是非こちらも読んで頂ければと思います。
ツイッターの方でまた続報はアナウンス致します。