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第26話 オークの集落(5)

何か、使える武器があれば……。


ん?武器……か、ひょっとすると何とかなるかもしれない。


僕はオーク・キングの動向を注意しつつ、自分の考えが正しいのかを確認するため、あるスキルを鑑定するのだった。



【リアライズ】:自分が知っている静物を具現化出来る。スキル保有者の想像力に応じて様々な能力を付与出来る。



やはり、そうだっ!これを奪ったからオーク・キングが持っていた黄金の戦斧は消失したんだ。

このスキルを使えば……武器を手に入れる事が出来る筈だ。


今、欲しいのは短剣。


それもオーク・キングすら切り裂く最強の短剣だ。


スキルの説明にあった”知ってる武器”でヤツを倒す事が出来る短剣と言えば……。

まだ、お父さんとお母さんが生きていた時に読んでくれた[英雄アレキサンドライトの物語]に登場した聖なる短剣。


僕は【リアライズ】を使用し、有りっ丈の思いを込めて、その名を叫ぶ!!!!


「出でよっ!”トゥワリング”!!!!」


その瞬間、右の掌が目を開けていられない程に、虹色に輝き……短剣の姿へとその姿を変えていく。

そう、今僕の右手に握られているのは物語の中でしか存在しなかった伝説の武器”トゥワリング”だ。


凄まじい力の奔流がトゥワリングから僕の中へと入っていくのを感じる。

だが……代わりに……精神力がどんどん削られていくようだ……長時間これを使ってたら間違いなく倒れてしまう。


”短期決戦”もう、これしかない。


そう覚悟を決めて、オーク・キングをキッと睨み付けると、ヤツも今まで見せた事が無いほどの怒りの形相を僕に向けていた。


「キ、キサマっ!!ソノブキハ……!オレノスキルト オナジスキルデ ツクッタナ!?オレノ ブキガキエタノハ ヤハリオマエノセイダッタノカ!!!!ユルサンゾォォォ!!!!」


猛烈な勢いで拳を振り上げながら突進してくるオーク・キングに僕はもう一つ思いついた策を実行する。


その策とは……。


ヤツが僕まで残り10メートルほどまで近づいてきたタイミングで【ペースト】を使い、ヤツの足の裏と地面を貼り付けてやった。


オーク・キングの脚力なら貼り付いた地面を抉りながらでも歩いてこれそうではある。

しかし、全力で僕に目がけて突進してきている今、この場面では効果覿面だろう。


何しろ、全力で突進してきている最中に足を取られるのだから。


そして、その目論見は予想通り、成功する。


凄まじい衝撃音を立てながら派手にヤツは前のめりに倒れ込む。

……そう、まさに僕の目の前で。無防備な姿でっ!!!!


【豪腕・極】【腕力強化・極】【ストレングスライズ】【身体強化・大】これらのスキルを乗せた全力の……っ!!!!!!


「くらえっ!!!【武技:シャークグロウ】だぁぁぁぁぁぁっ!」



『ドゥォォォォォォンッ!!!!』



この戦いの中でまさしく一番の衝撃音だっただろう。

鼓膜が破れるかと思うほどの凄まじい衝撃音と振動と共にトゥワリングは見事にオーク・キングを切り裂いた。


そして、役目を終えたとばかりにトゥワリングは光の欠片となって僕の手から消えていった。


まだ、生きているかもしれない……そう思い油断なく身構えながら様子を伺うがピクリとも動かない。

もう、ただの屍のようだ……。


災害級のモンスター、オーク・キングは今、まさにその命を散らしたのだ。


「……か、勝ったのかな、僕は……?」


きっと安心したからだと思う。

下半身の力が急に抜け、崩れ落ちるようにその場に倒れ込んでしまった。


体に力が入らない、思った以上に消耗しているみたいだ。



「マイン君っ!!」


アイシャさんの声が聞こえる。良かった、無事だったんだね。


あ、そう言えばジェネラルは……?どうなったんだろ……魔法の連続攻撃の後、キングが突っ込んで来たからジェネラルの生死を確認出来ていないや。


ヤツらが生き残っていたら不味い、動かない体に鞭を打ち慌ててジェネラルが居た辺りを見てみる。


すると焼け焦げたジェネラルだった死体が三つ転がっていた。

どうやら、あの波状攻撃で倒しきる事が出来たみたいだ。


懸案事項も無くなり、改めてふぅと一息を付くと柔らかな塊がすごい勢いで抱きついてきた。

そう、アイシャさんだ。


「マイン君、あなたって……あなたって子は……」


目からボロボロ涙を流して、感情の制御が出来なくなってるみたいだ。

話す言葉もドンドン嗚咽まじりになって、何を言っているのか分からない。


無理も無いよね、オーク・キングなんていう災害級が目の前にいたんだもん。

きっと自分が死ぬ未来だって予想していたかもしれない。


僕は……躊躇いながら背中にそっと両腕を回し、小さな子をあやすように軽くトントンと叩いて上げた。


「ふう、君はとんでもないな……。オーク・キングを、そしてオーク・ジェネラル三体をたった一人で倒してしまうなんて……」


ああ、アイシャさんと一緒に居た女騎士さんだ。

良かった、彼女も無事だったんだね。


オークはまさに言葉通り、女性の敵である。

この女騎士さんもアイシャさんに負けず劣らずの美女さんだ。


もしジェネラルを倒し損ねていたら、アイシャさんもこの美人さんもきっと陵辱されてオーク達の苗床にされてしまっていただろう。


そんな事にならずにすんで、本当によかったよ……って、ヤツらに捕まっていた女性を助けなきゃ!


「取り敢えず、込み入った話は後で……という事で、女の人がオーク達に捕まっていたんです、救助にいかなきゃ」


【気配察知・中】で見る限り、オークの気配はもう一つも無い。

恐らくオーク・ジェネラルが固まっていた北側に捕らわれているんだと思う。


「多分、集落北側のエリアの何処かに捕らえられていると思うんです。僕がこの集落を発見した時には無事だったんですが……大丈夫だといいのですが……」



アイシャさんと女騎士さんの肩を借りながらも、僕達は捕らえられている女性を見つける事が出来た。

恐らくオーク・キングの住居だろうと思われる一際大きな建物の中に彼女は一人残されていた。


最悪の事態を考え、建物の中には女性二人で入って貰ったが幸運な事に彼女は、まだオーク達の毒牙に掛かってはいなかった。


何でもヤツラに襲われそうになった時、外から凄まじい爆音が聞こえてきたらしく、それを聞いたオーク達が彼女を置いて全員外に出て行ってしまったという事だ。


……多分、最初に僕が使った【範囲魔法・火極大】の爆発音だろう。


あの爆音は僕に取ってはオーク達に発見されてしまう可能性を高めてしまった歓迎出来ない物ではあったが、結果的には大正解だった訳だ。


全てが片づいた今だからこそ、言える事なんだけどね!


取り敢えず、僕達はルーカスの町へと彼女を送り届ける事にした。




さて、二人の目の前でスキルを使いまくってしまった……なんていってごまかすか考えなきゃな。


お読みいただき、ありがとうございます。


やっとオーク集落編?一段落つきました。

次回はアイシャとシルフィード視点でのマインVSオーク・キングの予定です。

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