第247話 決戦ザナドゥ
……今、僕の目の前にはトロール・ゲイザーが雄叫びを上げて立っている。
結論を先に言うなら僕はあのあと、ボス部屋を6回周回したのだ。
【ガーランド・スタッフ】も6本入手出来ている。最初に手に入れた1本を併せて合計7本手に入ったんだ。
僕の身の回りに配り終わったら売ってもいいだろう。
魔法スキルを持っている人は案外多く居るんだ。
そう言った人達に、この杖ならきっと高値で売れるだろう。
そして、今からトロールゲイザーを倒せばライナス・スワードも手に入るだろう。
……待てよ?これ国王様に渡せば始まりの片手剣を作らなくてもいいんじゃないか?
よしよし、いい感じだ。
じゃあ、早速トロール・ゲイザーを倒してしまうか。
僕がゲイザーに足して構えを取ると、わっふるがぐるるぅとうなり声を上げて威嚇しはじめた。
『わっふる、大丈夫だよ。トゥワリングで一気に決着つけるから』
『わふ~』
僕の言葉を聞いてわっふるはしっぽをへにゃっと落として残念そうな声をあげた。
【リアライズ】でトゥワリングを生成し、トロール・ゲイザーの足を【ペースト】で固定した。
そして、次に僕が使うのは【豪腕・聖】をはじめとする自己強化スキルだ。
【固有魔法・時空】を使ってトロール・ゲイザーの背後に回り込んで【武技:シャークグロウ】を叩き込む。
ゲイザーが僕の接近に気がついたがもう遅い。
過去のトロール・ゲイザー戦と同じように、トロール・ゲイザーの体は真っ二つになり、その場に崩れ落ちる。
貴重な【超再生】もこれで3つ目だ。
そして、予想通りと言うより予定通りにライナス・スワードもドロップして、ここまでは順調と言っても
良いだろう。
わっふるがドロップしたライナス・スワードを咥えて僕の所に持ってきてくれた。
「わふ」
僕にライナス・スワードをずいっと差し出しながら
ほめてほめてと言わんばかりに尻尾を激しく振るわっふる。
わっふるの頭を撫でながら、僕はそう宣言する。
『さて、わっふる。ザナドゥと決着をつけようか』
さて、問題はここからだ。これから最下層のボス部屋に向かう訳だけど、そこにザナドゥが居る可能性も十分考えられる。
移動する前に【魔纏衣】で【消滅魔法】を体に纏ってから向かう事にしよう。
仮に不意打ちを食らっても、これで、大丈夫の筈だ。
念のために【地図】で最下層の様子を確認してみよう。
前回はこの時点でミスリル・ゴーレムとザナドゥが【地図】に映っていたけれど……。どれどれ?
-----------------------------------------
名前:ミスリル・ゴーレム
LV:60
種族:ゴーレム族
性別:無し
【スキル】 弓術・聖
武技:エンピリアルストライク
【アビリティ】 自己修復
-----------------------------------------
名前:ザナドゥ
LV:75
種族:魔人族
性別:♂
【スキル】 タイムコントロール・強
千里眼
隠蔽(範囲)
極腕・炎
-----------------------------------------
おや?ミスリル・ゴーレムは弓術・聖を持っているのか?これはアイシャと戦うようなイメージだね。
さっさとスキルをカットしてしまおう。
……そしてやったよ!!!前回【鑑定】する事が出来なかったザナドゥを【鑑定】出来た!
これは、きっと【鑑定・神】のおかげだね!マイヤさんありがとう。
……おっといけないいけない【鑑定】出来た喜びでつい我を忘れてしまった。
だけど……悪い予感が当たってしまった……ザナドゥがやはり、ここに居た。狙いは間違い無く僕だろう。
そしてミスリル・ゴーレムが現れた事から僕が来た事も知られてしまってると言う事だ。
だが先に存在を察知出来たのは大きい。まずは、ゴーレムのスキルを全部【カット】だ。
ザナドゥとゴーレムはボス部屋の中だから、ボス部屋の外に【固有魔法・時空】を繋ぐ事にしよう。
既に【魔纏衣】は発動済みだ、今回はザナドゥから逃げる必要は無い。
僕は右手にテンペスト・エッジ、左手にライトニング・エッジを握りしめ勢いよく、ボス部屋の扉を開けて
中に飛び込んだ。すると、ブンッと目の前の視界がぶれてザナドゥが目の前に現れた。
以前と同じだ。
先ほど僕はザナドゥのスキルはわざと【カット】しなかった。
以前と違う戦い方をされては【魔纏衣】を前提とした戦い方が出来なくなるからだ。
その目論見通り、目の前に現れたザナドゥは右手が消滅していた。
「グ、キサマ!!これは消滅魔法か?」
「そんな事をお前に話す必要は無い。これはルカ様のへの仕打ちに対するお返しだと思え」
「……ククク……なるほどな、俺への対抗策は講じてきていたと言う事か」
よしっ、これで、ザナドゥは不用意に僕へ攻撃出来ないだろう。
僕は、【ペースト】でザナドゥの足を地面に貼り付けてからゆっくりと近づいて行く。
そしてテンペストエッジの刃に【消滅魔法】を【魔纏衣】で纏わせて 動きが取れないザナドゥの左腕に
突き刺した。
すると今度は左腕が消滅し、左右の腕が無くなってしまったザナドゥはブツブツと何かを呟きながら
僕を凄い形相で睨み付けている。
「……親父のスキルが使えなくなったのはやはりコイツのせいだったか」
もういい。両腕が消え失せたんだ、この男に何か行う力は残されていないだろう。
倒す前にスキルは全部【カット】しておこう。
改めてザナドゥを鑑定しスキルを【カット】しようとすると僕の左方向から予想外の何かが凄まじい勢いで飛んできた。
慌てて【絶対回避】を使い、飛んできた何かを回避し、飛んで来た方向に視線を向けると……
ミスリル・ゴーレムが僕に向かって矢を射って来た事が判った。
いけない、いけない。すっかり忘れていたよ。
弓術スキルを奪ったはずなのに……。
ザナドゥはもう何も出来ないのだから。このまま放置して、先にゴーレムから始末してしまおう。
身体強化を行い。ゴーレムの足も地面に貼り付けて僕は一気にゴーレムの懐に飛び込んで【武技:シャークグロウ】を
叩き込んだ。
すると、ゴトンと重量物が落下する音が響き渡り、ミスリル・ゴーレムは地に伏したのだった。
倒れたゴーレムの体はミスリル100%で出来ているので拾い上げてドンドンと腰の収納袋へしまっていく。
これを素材にしてルイス殿下に錬金術でインゴットに加工してもらえば始まりの短剣第二形態が完成するはずだ。
テンペスト・エッジの段階でも十分強力な短剣だがどこまで強い武器になるのか興味は尽きない。
そして何より、更にその先、第三形態が存在するのかも気になる所である。
ただ合ったとしても要求される素材が怖い部分があるのだけれど……。
そんな事を考えながら、ゴーレムの体を拾っていると突然ザナドゥが大声で笑い始めた。
「フハハハハハ坊主、お前はゴーレムと戦った経験が無いな?これは傑作だ」
……ん?確かにゴーレム種と戦うのはこれが初めてだ。何故ザナドゥはそんな事が判るんだ?
「なんだ、その顔は?すぐ俺の笑っている訳がお前にも判るさ」
……よしっとこれで全て回収っと
さっさとザナドゥを始末しよう。
ルカ様の無念を晴らすためにもこいつには苦しみ抜いて死んで貰いたい。消滅魔法で消し去るのでは
それは達成出来ないだろう。
ここは【猛毒の魔眼】だ。
つい先ほどトロール・リーダから【カット】したばかりの新たなスキルを使用する。
-----------------------------------------
【猛毒の魔眼】:任意の相手(複数可)に好きなタイミングで発動。
このスキルを受けた対象者は猛毒をその全身に受ける。
毒の治療が行われるまで継続的に大ダメージを受け続ける。
スリップ効果250/1秒
-----------------------------------------
猛毒の効果はすぐにザナドゥに現れた。
顔が青ざめてその口からは何かを堪えるようなうめき声が漏れ出すようになった。
「こ、小僧……何をしやがった?」
「悪いけど、ザナドゥ……僕はお前だけは許せない。ひと思いに殺すのは簡単だけど、苦しみながら死ねばいい」
「ルカ様もお前によって心に消す事が出来ない傷を負ってしまった。未だに苦しんでいるんだ」
「クソったれめ、たかがヒューム族の女一人と魔人族の王子である俺の命と同じにするんじゃねえよ」
「なんだと?言葉は選んで使いなよ。今お前は何もする事出来ないんだよ」
「言うなれば負け犬の遠吠えってヤツだ」
「ルカ様に詫びろ!今、この場で謝罪をしてみろ」
「じゃなければ、更に苦しむ事になる」
「はっ?冗談じゃない。俺がたかがヒュームの女ごときに何故、詫びる必要がある?」
「そもそもルカは敗戦国の捕虜だ。殺されなかっただけ感謝されこそ、詫びる理由なぞ無いだろう」
ザナドゥの返事を聞き、僕は頭の中でぷちっと何かが切れる音を聞いた気がした。
もう許さない。【体力吸収・大】をザナドゥ目がけて使用する。
猛毒の影響で恐らくザナドゥにはほとんど体力は残されていないだろう。その残り少ない体力をごっそりと
体力吸収スキルが削り取っていく。
「……うぐっ」
流石のザナドゥもこれは答えたようでうめき声が大きくなった。
「いつまでも意地を張るな。もうそろそろ限界だろう?」
「ククク、確かにもうそろそろだな」
ザナドゥがこの期に及びまだ強がりを言い出す。
もうこのまま放置しておけばいい。何もしなくてもザナドゥは事切れる筈だ。
そう判断し、僕はボス部屋から出て行こうとすると……突然腰につけていた収納袋がひとりでに動き出し
あっちこっちに暴れ出した。
ち、どういう事だ?ザナドゥの仕業なのか?
年内完結予定と行っておりましたが1月末完結に予定を変更致します。
詳細は活動報告をご確認下さい。