第242話 勇者召喚(3)Case:赤城大和
「ミライ神官、おやめなさい、勇者様に失礼ですよ」
先ほどから苦しげで体調が悪そうな美人さんが仲介に入り、俺は地面へと下ろされたのだ。
……マリーヌと呼ばれていたっけ、この美人さん。よし決めた。俺のハーレムの一員になって貰おう。
「し、しかしマリーヌ様。陛下に対する無礼、許してはおけませぬ」
「勇者様、大変申し訳有りません。私はマリーヌ。この国の巫女頭を務めております」
「やっと、まともに話が出来そうな人が出てきたな」
「マリーヌさん……随分具合が悪そうだけど大丈夫ですか?」
「ええ、勇者召喚の影響で、私は間もなく事切れるのです」
「こときれる!?死んじゃうって事ですか?な、な、な、なんで?」
「勇者召喚という秘儀は術者である巫女の命を触媒になされるのです……」
「じゃあ、俺たちを呼び寄せたので死ぬと言う事ですか?」
「……いえ、あなたたち三人は私の妹ミレーヌが呼び寄せております。私は後からの四名ですね」
「そ、そんなあなんとかならないのですか?」
「なんともなりません。今はそんな事よりもご説明を……させて下さい」
「勇者召喚され、この世界においでになる際皆様には”勇者スキル”と言う特別な能力を1つ得ている筈です」
「おおっ勇者スキルだって!!?チートだ!!やったぜぇ」
「では担当の者が皆さんの勇者スキルを確認させてもらいますね」
そう説明して、私は後ろに下がり鑑定士と場所を変わった。
鑑定士は先ほどから私と話をしていた男の方の前に立って、何かを紙に書いていく。
「……えーっと勇者殿、お名前をお尋ねしても?」
「俺か?俺は赤城大和18歳。彼女募集中の18歳だ!」
「はぁ……大和様ですね?あなたの勇者スキルですが【光の聖剣】です。光の勇者様」
鑑定士がそう告げて、女性の勇者様の前に移動する。
「勇者様、お名前をお尋ねしても?」
「わ、私は佐光千尋18歳です。」
「……千尋様ですね。あなたの勇者スキルですが【神の鎖】です。」
そして最後の一人へと鑑定士が移動士、同じ用に問いかける。
「勇者様、お名前をお尋ねしても?」
「お……僕は大下孝、18歳です」
「孝様ですね?あなたの勇者スキルは|【死者絶対蘇生】です。調停の勇者様」
「確認は終わったか?」
孝の確認が終わると静かにしていた国王とやらが会話に参加してくる。
「ふむ、ヤマトとチヒロと言ったな?二人はこの後騎士団長から先頭の訓練を受けるのだ」
「タカシは勇者召喚で命を亡くした二人の巫女を生き返らせて欲しい」
「ちょっと待てよおっさん。何度も言うがあんたは犯罪者の首魁だそんなやつの言う事等聞けるかよ」
「ふむ。では魔王を倒してくれるというなら諸君らの望みを出来うる範囲で叶えてやろう」
「そうこなくっちゃな。では俺の望みは女だハーレムを俺は作るまずはそのマリーヌちゃんを貰おうか」
「……クッ良かろう。魔王を倒したら、その望みを叶えてやろう」
「イヤッホーーー!いいだろう。軽く魔王とかいうヤツをやっつけてきてやんよ、マリーヌちゃんは俺の物だ!!」
「では、勇者様方、こちらにおいでください。戦闘訓練と勇者スキルの訓練を行いますので……」
「待って下さい。私は納得していません。こんな一方的な話は承諾出来ません」
[勇者チヒロよ、君は何を望む?」
「私は帰りたい!他に何も望みません。帰れさえすれば、それでいいんです」
「なあ、千尋。今ここでごねても帰れる可能性は低いと思うぞ。まずは様子見でここで生き残る事を考えようぜ」
「大和君は勝手にハーレムでもなんでも作ってれば良いのよ!」
「お、俺も大和と同じでハーレムが欲しい。俺はミレーヌちゃんだっけか?マリーヌさんの妹……彼女を貰いたい」
「俺の勇者スキルってヤツを使えば生き返らせる事が出来るんだろう?」
「おおう、勇者タカシ……お前も協力してくれるか?早速ミレーヌを生き返らせてくれ」
「それは構わないが……スキルってどうやって使うんだ?」
「心の中で使いたいスキルを念じて使用すると意識すれば使えるはずですぞ」
『出ろ!俺のスキル光の聖剣よ!!』
俺が言われたとおり、心の中で強く念じると腕手のひらに強烈な光が現れ、次第に剣の形を取っていく。
「おおう、まさに勇者様の偉大なる力……勇者様にはこれからすぐ側の森に行って頂き、弱めの魔物と戦って
もらいましょう」
光の聖剣とやらを手にした俺はテンションがドンドン上がってきた。この胡散臭い国王の依頼を受け魔王とやらを
倒す気さえ湧き上がってきたのだ。何より念願のハーレムをくれるというのだ。コレに載らない手はないだろう。
だが、俺一人で魔王を倒せるとはさすがに思っちゃいない。孝の死者蘇生はともかく、千尋の【神の鎖】とやらは戦闘で大いに使えそうな気がする。
それ故、千尋を説得しなくてはならない。うまくいけば千尋も俺のハーレムの一員に加えたい。孝も俺の真似をしてハーレムとか
言い出したからな。いい女をどっちが先に手に入れるかという勝負になるだろう。
騎士団長に連れられて来た森にはイノシシによくにた魔物が居た。
俺は聖剣を剣道の授業で習った正眼に構えてイノシシの魔物の様子を伺う。
するとイノシシの魔物はこちらを舐めているのか、猛烈な勢いで突進してきた。
その勢いに俺は気圧され、その場に尻餅をついてしまった。
「大和君、危ない!【神の鎖】いきなさい!」
俺がイノシシの魔物に突き飛ばされる前に、千尋の凜々しい声が響き渡り、どこからともなく現れた黄金の鎖がイノシシの体に巻き付いてその動きを封じたのだった。
「へへっ助かったぜ。千尋」
千尋に礼をいいながら身動きが取れなくなったイノシシに近寄っていく。
そして、聖剣をブンと振るうとイノシシの首があっけなく切り落とされた。