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第237話 シーラ・ローラシア姫

ミスリルは入手出来なかったけど、始まりの弓の素材は揃ったはずだ。まずは、そこからかな?

二人が心配してるだろうから、ザナドゥが追いかけてこないのなら家に帰った方がいいね。

【固有魔法・時空】を使いルーカスの自宅へと到着する。

黒い渦を抜けるとそこには”おすわり”をしてパタパタと尻尾を振るわっふるの姿があった。

『わふ~まいんおかえり』

『ああ、ただいま。わっふる』

『シルフィとアイシャを僕の部屋に連れてきてくれるかな?』

僕がそうお願いすると、わっふるはクーンと鼻を鳴らして立ち上がり、のっそりと歩いて行く。

『わっふるも来てよね』

そう声をかけると、再び激しく尻尾を振り始めぴょんぴょんとジャンプし出した。

一足先に自室に戻るなりベッドに倒れ込んでしばらくぼーっとしていると

廊下をドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。


「マイン君!」

「旦那様っ!」


「ザナドゥは、どうなった?」無事なの?怪我はしてない?」


「うん、まだ対策を考えてない事に気がついて戦わずに脱出してきたんだ」

「……戦わずに……」

「うん、何かいいアイデアがあれば聞きたいんだよ」

僕がそう問いかけるとアイシャが遠慮気味に意見を言い始めた。


「あのね、マイン君 私思うんだけど、ザナドゥの攻撃で問題なのは気がつかないうちに物理ダメージを受けると言う事よね?」


……うん、確かにそうだ。だから前回の戦いでは物理無効のスキルで対策したわけだけど。

前回、補充したとはいっても、物理無効は有限である以上、戦いが長期化すれば、対応出来なくなる。

しかも今回はザナドゥもそれを承知で戦ってくるだろうからね。物理無効に変わる対策が必要な訳だ。

対策無しで戦うのは流石に無謀だろう。だからこそ、こうして戻ってきたのだけど……。

「だったら、マイン君、例の【魔纏衣】はどうなの?デーモンを倒した消滅魔法をマイン君の体に纏わせておけばザナドゥは自滅するんじゃない?」

……なるほど、流石アイシャだ。確かに、その通りだ。あとは、スキル錬成で【鑑定・全】と【鑑定・全】を併せて見てザナドゥの奴を【鑑定】出来るようになれば完璧だね。

集めてきたスキルでスキル錬成と始まりの弓を錬成してしまおう。

まず、取りかかるのはマンティコアの皮をルイス殿下になめして貰わないといけないよね。


「シルフィ、悪いんだけど王宮に行ってルイス様にマンティコアの皮をなめして貰ってきてくれないかな?」

シルフィに皮が入っている収納袋を手渡しながら、そんなお願いをしてみた。

「ああ、判った。任せてくれ旦那様」

シルフィが収納袋を受け取ったのを確認して【固有魔法・時空】を王宮と繋いだ。

笑顔で黒い渦に飛び込むシルフィを見送った後で僕はスキル錬成に取りかかる。錬成するのは勿論、【鑑定・全】と【鑑定・全】

錬成が始まると目の前の空間が激しく虹色に光り輝く。


「……出来た」

【【鑑定・神】:任意の対象についての詳細を知る事が出来る。

       例え秘匿された対象物でも【鑑定】出来る。

       鑑定に制限は無い。


「マイン君、今何したの?」

アイシャが心配そうに声をかけてきた。

「うん、スキル錬成をやってみたんだよ」

「ええっ?一体どんなスキルが出来たの?」



「……うん、マイヤさんから譲り受けた【鑑定・全】と僕の【鑑定・全】を錬成してみたんだ」

「【鑑定】を!!?、で、結果は?」

「出来た新しいスキルは【鑑定・神】だよ。どうやら【鑑定・全】みたいに【鑑定】出来ない事は無くなるみたい……」

「すごいじゃない!!!」

「……うん」

「これでザナドゥも【鑑定】出来るんじゃ無い?」

確かにその通りだ。【魔纏衣】と【鑑定・神】この二つこそ、ザナドゥへの対策に他ならない。

うん、これでザナドゥとの決戦に赴けるぞ。




        ◆◇◆◇◆


王宮に着いた私はメイド長のミーティアにルイスの居場所を尋ねてみた。

「ルイス様ですか?謁見の間でアルト様とファーレン様からお話を聞いているはずですけど……」

兄上と一緒か、都合がいいな。ついでだライナス・スワードを渡してしまおう。


「そうか、謁見の間とは珍しいな?来客でもいるのか?」

「はい、見えられております。ローラシアの巫女姫シーラ様です」

ふむ、シーラ殿が来られているのか。

となるといきなり部屋に飛び込むのは愚策だな。

来客が居なければ、その謁見の間に飛び込むところだが……。

「姫様、私が姫様の来訪を伝えて参りましょうか?」

私が考え込んでいるのを見て、ミーティアがそんな提案をしてくれた。

「姫様、ファーレン様がお会いになるそうです」

宰相のモルグに案内され、謁見の間に入室する。

「シ、シルフィード様……お久しぶりです

ご結婚なされたとの事、おめでとうございます」


「シルフィード、用件はなんだ?マイン絡みか?」

「シーラ様、お久しぶりです。今日はどうなされたか?」

「父上、用事はルイスと兄上にです」

「姉上、俺に何の用なんだ?」

「旦那様が造っている始まりの武器の事は聞いてるな?その素材を錬金術で作ってもらいたいのだ」

「ああ、進化する武器というやつか?確かに聞いてるな、この前トロールのなめし革を作ったじゃないか?」


「ああ、トロールのなめし革は旦那様の短剣で使用したぞ」

「今日はマンティコアの皮をなめしてもらいたいのだ。これはアイシャの弓の素材となる予定だ」

「ん?そうか、そうか短剣は出来上がったのか?で、姉上その短剣はどうなのだ?」

「ああ、聞いてくれ、専用の武技まで使えるとんでもない短剣が出来上がったぞ。旦那様の戦闘力が更にアップだ」


私とルイスの会話を聞いた父上と兄上が問いかけてきた。

「お前達一体何の話をしているんだ?」

……そう言えば父上と兄上には始まりの武器の話はしていなかったなとお思い

二人に詳細を説明していく。

すると興味深そうにシーラ様も身を乗り出して私の説明に聞き入っていた。

まあ、ローラシアはまさに今魔王と戦争をしているわけだからな、強い武器の情報は欲しいところだろう。


「……シルフィード様、そのテンペストエッジとやらは見せていただくわけには参りませんか?」

「あ、それは……旦那様が持っているので今は手元に無いのです」


恐らく旦那様の事だから頼めばすぐに見せてくれるだろう。だが、旦那様の秘密の一端に迫る話でもあるので

安易に認める訳にはいかないな。シーラ様の面前で不用意にこの話をしてしまった私の落ち度だな……これは。

「……そうですか、機会があれば是非一度拝見したいものです」

「短剣なんか見てどうされるのです?」

「実は私……巫女なでありながら、【短剣・聖】を所持しておりまして……良い短剣と聞くとどうにも……」

私とシーラ様の会話を尻目に父上と兄上はルイスを捕まえて始まりの武器について次々と質問をしているようだ。


だけどルイスに聞いても何も判らないのだから……恨めしげに私を見ている。


「ね、姉さん、見てないで代わってくれよっ!」


「兄上、父上始まりの武器については私が話そう」

「その前に兄上、以前頼まれていたコレを受け取ってくれ」


私はライナス・スワードを兄上に差し出した。


「おお?シルフィ、良いのか?マインから貰った大事な物だと言ってただろう?」


「……ああ、大丈夫だ、それは新たに取ってきた物だからな」


「と言う事はトロール・ゲイザーを倒してきたという事か?」

「面倒をかけたな。この剣は買い取らせて貰おう。白金貨1枚でどうだ?」


「ああ、元々金を取ろうとは思っていなかったからそれで構わない」

トロール・ゲイザーという単語に父上が過剰反応する。

「ああ、倒してきたぞ。旦那様が一撃で沈めてな」



「シルフィ、……アルトだけなのか?私には無いのか?」

父上が心底悔しそうにそう問いかけてくる

「すまないが父上の分までは無いんだ……」

そう言うと父上は「パン」と手を叩き、ルイスに向かって笑顔で言い放つ。

「ルイス、私の始まりの剣を作ってくれ」

「……はっ?」


それを聞いたルイスは短いため息を付いて手を振りながら

「無理、無理無理ですよ。そもそも素材も素体も無いのですから!」

「なるほどな、シルフィその辺りはどうなんだ?」

「旦那様に聞けば判ると思う」

「ほう、ではルイス、その片手剣を作ったら私まで持ってくるように!」

『旦那様、旦那様 父上が始まりの片手剣を作って欲しいとだだこねてるんだ。素体って2本あっただろうか?』

『国王様が?アドルの武器屋さんで買えると思うから買ってこようか?』

『判ったすまない。あと素材は何が必要なんだ?』

『必要素材:マンティコアのなめし革×3、エルダートレント材×10、上級魔石×2だね』

「ルイス、父上、旦那様に確認したぞ」

「素体は買いに行ってくれるそうだ。素材はマンティコアのなめし革×3、エルダートレント材×10、上級魔石×2が必要だそうだ」

「そ、そんな素材無いぞ!!!」

ルイスが大声を上げ始める、と兄上が大きく頷きながら「なら冒険者ギルドにでも依頼をだしてみるか?」

すると父上はその提案に乗り気なようで……「よし、アルトお前に任すので早速ギルドに手配をかけるのだ」

「ファーレン様、対価を支払いますので私の短剣も作っては頂けませんでしょうか」

「……そ、それはどうなんだ?ルイス」

「う~ん、トロールのなめし革もいる事になるとギルドでも時間が掛かるでしょう」

「シーラ様は姉上のクランに依頼を出されるのはいかがでしょう」

「ああ、ならシーラ様はうちのクランで面倒見よう。一度旦那様に相談もしなければいけないが……まあ大丈夫だろう」


「……シルフィ、僕がなんだって?」

「ダ、ダ、ダ、ダ旦那様っ!!一体どうしてここに?」


唐突に現れた旦那様を見てうろたえてしまった。

「いや、国王様が欲しいと言ってるんだろ?だから……さ!急いで持ってきたよ」

「あ、あなたが新たな英雄……マイン様ですか?」

「……英雄かどうかはともかくマインは僕ですけど……貴方は?」

「こ、これは失礼しました。私はローラシア王国第一王女シーラ・ローラシアですの」

ローラシアの第一王女だってー?

なんか僕の周りに王女様が次々に現れるな……。

「マ、マイン殿始まりの短剣を私にも見せていただけ無いだろうか?」

「え?始まりの短剣ですか?」

「ええ、実は私短剣が武器でして……シルフィード様からお聞きしまして是非拝見出来たら……と」

「……へぇ、シーラ様は戦闘もされるのですね……そういう事なら……」

僕は腰に佩いていたテンペストエッジとライトニングエッジをシーラ様に手渡した。

「……あら?この短剣は……ライトニングエッジですわね?」

「ええ、そうです。シーラ様詳しいのですね?」

僕がそう問いかけるとシーラ様はふふっと笑顔を浮かべ懐から一振りの短剣を取りだしたのだ。

「これが私の愛剣ですわ」

シーラ様の手の中にある短剣は……そう、紛れも無い僕の持っているのと同じライトニング・エッジだった。

「ら、ライトニング・エッジ……、どこでそれを?」

「これは技の迷宮(ダンジョン)のレインボウ・ドラゴンのドロップ品ですわ」

「レインボウ・ドラゴン……だと……?」

義兄上(アルト)がうわずった声で呟いた。

以前、少しだけ戦ったブラックドラゴンよりも凶悪と言われる災害級の魔物である。

トロールゲイザーのようほどで無いにせよ、強力な起伏力と圧倒的な攻撃力を持つドラゴンだ。

その肉は究極の美味と呼ばれ一切れの肉きれですら豪邸が買える程の値がつくとされる。

腕に自信のある冒険者達が集まりアライアンスを組んで一攫千金を狙うとの噂だ。

「マイン、お前なら倒せるのでは無いか?」

お義兄さんは僕を見てそんな事を呟く。

やってみなければ判らないけど、……それはなんだ?僕に倒してこいという意味なのかな?

けど、ライトニングエッジをもう一本手に入れたって今の所意味ないんだよなあ。

「レインボウ・ドラゴンの肉は美味いぞぉ、義弟(マイン)よ」

……なるほど、そっちが目的かあ。けど食べ物のために災害級とわざわざ戦うのはどうなんだろう?

そう考えていると予想外の人物から援護射撃の発言が……。

「旦那様、レインボウ・ドラゴンの肉は本当に美味だぞ、あれを一度食べてしまったら他の肉など食べれたものではないぞ」

まさかシルフィまでそんな事を言い出すなんて……予想外にも程があるよ……。

さて。愛妻からリクエストとあらば考えてみてもいいかもしれないね。

けど、技の迷宮(ダンジョン)かあ……。どこにあるんだろう?

「わかりました。検討してみますけど期待しないで下さいよ」


これ以上会話しているとまた何言われるか、わかったものじゃない。始まりの片手剣を渡してさっさと帰ろう。


いつも拙作をお読みただきありがとうございます。

よろしければ是非ツイッター(@sakuya_Live)も出来ましたらご覧下さい。

簡単な作品に関するアンケートや更新に関する情報をつぶやいております。

緊急にお伝えしたい事などもツイッターでまずつぶやくようにしています。直近ですとコミカ確定の報とか

ツイッターと活動報告でも告知済みですが書籍第2巻の発売も決定しております。

現在書籍化作業中です。★2018年1月10日に発売です★

また上記でも軽く述べておりますが本作のコミカライズが決定しました。

具体的な詳細はまだ出ておりませんが 順次、ツギクル様の作品ページや私のツイッター、活動報告などで

ご案内致します。


また、病気で倒れて以後の誤字については順次対応の予定です。

実生活が中々落ち着かないため、なかなか即時の修正は出来ません。

なお、皆様にはどうでも良い事ではあるのですが先日引っ越しを行いました。

それに伴い、通信環境や生活環境が変わりますので、月水金の更新が出来ない日も出てくる可能性があります。

更新出来ない場合、ツイッターでまずその旨、告知します。

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