第234話 始まりの弓(5)力の迷宮(ダンジョン)
シルフィが切り伏せデーモンが全滅したのを見届け、僕はアイシャの手を取り、一緒にボス部屋目指して走って行く。
「行こう!アイシャ、ボス部屋まで一気に!」
「ええ、マイン君前に約束したとおり、どこまでもついて行くわ」
シルフィとすれ違う際に空いている手を差し出してシルフィとも手を繋ぎ、三人一緒に走り出した。
「次はボスだな?」とシルフィが問う。
「ああ、ボス部屋はこの奥だ!」
ボス部屋の前には当然の事だが誰も並んでは居ない。
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名前:エンシェント・デーモン
LV:75
種族:悪魔族
性別:♂
【スキル】 錬成
タイムコントロール極大
フュージョン
セパレイト
言語理解・全
連続処理
【アビリティ】 魔光破
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ボス部屋の中には雑魚デーモンを二回り大きくしたような巨大デーモンが一体だけ立っていた。
今までのデーモンもそうだけど一見しただけでは全く訳判らないスキルを持っている。
……ゆっくりとしている時間が無い今は取りあえず、【カット】してうちに帰ったらゆっくりと調べる事にしよう。
……ええ?けどこいつ錬成持ってるぞ、魔物のくせに錬成なんて出来るのか。ひょっとしてあの盾はこいつが造ったのだろうか?
「流石にボスは何が起こるか判らないから僕がやるよ、二人ともいいかな?」
……流石にこれは理解して欲しい。
「ああ、判った」「うん、気をつけてねマイン君」
初見のボスだ。アイシャの言う通り気をつけて戦おう。
まず【ペースト】で動きを封じて……っと。テンペストエッジとライトニングに【魔纏衣】で【消滅魔法】を付与する。
よし、【気配遮断】【脚力強化】と【俊足・小】を使って一気にボスの懐に潜り込む
。まずボスの右腕にライトニングエッジを突き刺す。……すると目論見通り、ボスの右腕が消滅していった。
更にテンペストエッジをボスの左手に突き刺す。今度は左腕が消えていった。
「よしっ上手く言ったぞ」
目論見通りにダメージを与えれている事に気をよくした僕は続いてもう一度ライトニングエッジをボスの右足に突き刺した。
……しかし、右足は青い血を吹き出すだけで消滅はしなかった……。
「なっ!?」
慌てて今度はテンペストエッジを左足に突き刺した。
……しかし、結果は先ほどと変わらず左足は消えていない。
ならばと【豪腕・聖】【豪腕・極】【腕力強化・大】を使用して武技【テンペスト・ファング】を使用した。
テンペストエッジが一瞬青白く発光して巨大な魔獣の爪のように変化してエンシェント・デーモンの頭部を一瞬で吹き飛ばした。
ふう。トゥワリング無しで倒す事が出来た。トゥワリングは強力なのは間違い無いのだけど僕の消耗が激しすぎるからね、
使わずにボスを倒せたというのは大きな収穫だ。
【魔纏衣】はまだまだ研究が必要そうだね。
……さてドロップ品は何かな?
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名前:叡智の杖
攻撃:+6
階級:超級
属性:
特攻:
特性:装備してるだけで魔法の威力を40%引き上げる。
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おおっこれも凄い武器だ。直接ダメージを与える物では無いけど、素晴らしい効果があるね。
「二人とも倒したよ、次の階層に向かおう!」僕はアイシャとシルフィを呼び寄せ、一緒に転送石に触れると
最下層へと続く階段をゆっくりと降りていくのだ。
さあ、いよいよ目的の階層だ……。マンティコアのなめし革は大量に必要だから、マンティコアは大量に倒して置いた方が無難だろう。
階段を降りると広間のようになっていて、そこにマンティコアが二匹寝そべっていた。
スキルは変わった魔法とまた聞いた事が無いのがあるけど、【カット】して後回しだ。
「アイシャ初撃は任すよ。今度は【魔纏衣】はかけないからね」
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名前:マンティコア
LV:56
種族:魔獣族
性別:♂
【スキル】 特殊魔法・スタン
マイティストライク
【アビリティ】 うなり声
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名前:マンティコア
LV:52
種族:魔獣族
性別:♀
【スキル】 特殊魔法・スタン
マジックバースト
【アビリティ】 うなり声
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「ええ、判ったわ」
「大丈夫だ。もしあやつがアイシャに向かってこようと私が切りふせてみせる」
ファーストヘイトという概念がある。
戦闘全般において魔物の敵対心という概念が存在する。簡単に言えば
魔物は一番むかついたヤツに攻撃を仕掛けてくるのだ。
この敵対心が高ければ高いほど、むかついているという事になる。
ファーストヘイトというのは、初撃を与えた者に対して通常よりも敵対心が大きく加算される事を指す。
この場合、アイシャが初撃を行う訳なのでマンティコアの標的は僕やシルフィでは無くアイシャになるという事だ。
だからシルフィがアイシャに向かってきた物を切りふせると言っている訳だね。
シルフィの言葉を聞き、アイシャはうんと頷くと弦を引き絞り……眠っているマンティコアへと放った。
ギュオオオオオオオンと言う風切り音と共に撃ち出した矢は、マンティコアの眉間に見事突き刺さった。
一瞬、ビクンと激しく痙攣をしたがマンティコアはそれ以後、動き出す事は無かった。
どうやら一撃で仕留めたらしい。
さすが元B級の冒険者聖弓のアイシャだ。
「ははっ私の出番は無かったな!流石だアイシャ。シルフィも諸手をあげてアイシャを賞賛する」
「アイシャ、凄いよ!一撃だ!」
代わる代わるかけられる賞賛の言葉にアイシャは顔を赤らめ「まだ一匹残っているわ、油断しないで」
と僕らに返事を返す。
……実際、素材としてマンティコアの皮が必要な訳だから、素材を痛めない今のアイシャの攻撃は最良と言うしか無いだろう。
これが僕やシルフィだと皮に傷が付いて最悪ダメにしてしまう可能性がある。
「よし、アイシャもう一匹もやってしまおうか」
シルフィがそう言うと、アイシャは再び弓を引き絞り始めた。
ギリギリ……と弓が引かれる音が聞こえてくる。
「行きます!やあ」気合い一拍、アイシャが再び矢を放った。
風切り音がさきほどのように周囲に響き渡り、今度はマンティコアの右目に突き刺さった。
すると、矢の刺さった場所から赤い血が噴き出し、怒り狂いながらマンティコアがすくっと立ち上り
こちらに顔を向け憤怒の形相で睨んでくる。
そしてそのまま、猛烈な勢いでこちらに向けて駆けだしてきた。……狙いはあきらかにアイシャだ。
「任せろ!」
シルフィがアイシャの真ん前にかばうように立ち塞がる。そして、ライナス・スワードを正眼に構え、切っ先をピタリとマンティコアに向けて微動だにしない。
…………こちらも流石だ。姫騎士は伊達じゃ無いね。怖いくらいに正眼の構えが堂に入ってる。
そして僕はと言うと、黙ってみているわけも無く【ペースト】でこちらに向かってくるマンティコアの足下を地面に貼り付け置いた。
「く、旦那様だな?」
向かってくるタイミングがずれたので、少し、つんのめったシルフィがこちらを見ながら、苦言を発する。
「アイシャ今が好機だよ」
素知らぬ顔をしながら、アイシャに向けてそう助言をすると僕のやる事など心得た物で、既に弓を引き絞って狙いを定めていた。
そして放たれる三条の軌跡。いつもながら見事な物である。瞬間に三射し、かつ正確に当てるのだから。
果たしてその結果は、と言うと三本とも見事にマンティコアの顔面を捕らえており、うち一本は最初と同じく眉間に深々と突き刺さっていた。
ズズーンと巨体を揺らし倒れ伏す、マンティコア。
僕は【カット】を使って制止の判定を行う。すると二匹とも見事に事切れており、素材も無事2枚手にする事が出来たのだ。
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
よろしければ是非ツイッター(@sakuya_Live)もどうかご覧下さい。
簡単な作品に関するアンケートや更新に関する情報をつぶやいております。
緊急にお伝えしたい事などもツイッターでまずつぶやくようにしています。直近ですとコミカ確定の報とか
ツイッターと活動報告でも告知済みですが書籍第2巻の発売も決定しております。
現在書籍化作業中です。★2018年1月10日に発売です★
また上記でも軽く述べておりますが本作のコミカライズが決定しました。
具体的な詳細はまだ出ておりませんが順次、ツギクル様の作品ページや私のツイッター、活動報告などで
ご案内致します。
また、病気で倒れて以後の誤字については順次対応の予定です。
実生活が中々落ち着かないため、なかなか即時の修正は出来ません。
なお、皆様にはどうでも良い事ではあるのですが近く、引っ越しを行います。
それに伴い、通信環境や生活環境が変わりますので、月水金の更新が出来ない日も出てくる可能性があります。
更新出来ない場合、ツイッターでまずその旨、告知します。




