第229話 成長する武器
「ルイス様、話は変わりますが一つお願いがあるんですが……」
「お願い?なんですか?義兄上」
「いや、大した事じゃないんですけどね……魔物の皮をなめして欲しいんです」
「ははっ、そんな事ですか?いいですよ、勿論」
「皮があるならこのまま付いてきて下さい。すぐにやりましょう」
ルイス様に快諾を受け僕はその後ろについて行く。
手持ちの収納袋に皮は入っている。
しばらく歩いて行くとルイス様のクランハウスに到着した。
うちのクランハウスとは大分感じが違うな。ルーカスの錬金術屋さんのお店を巨大にした感じだ。
「ところで、義兄上素材を出してもらえないですか?」
僕が考え事をしている間にルイス様は準備を整え終わったようだ。
僕は慌てて収納袋からトロールの皮を10枚取り出し目の前の机にのせていった。
「こ、これは!?トロールですか? 僕に相談して正解でしたね、これは大変扱いが難しい素材ですので」
少し自慢げに言いながらルイス様はゆっくりとした動作で錬金術を行使していく。
すると机の上の皮が徐々になめされていき30分も経つと作業は完了したのだった。
「はい、出来ました。ところでこれ何に使うんですか?差し障りなければ教えて下さいませんか?」
僕は出来上がったなめし革を再び収納袋に入れながらルイス様に答えを返した。
「ありがとうございました。これはですね、実は武器屋で【鑑定】してたら面白い物を見つけまして、コレなんですけど……」
机の上に始まりの短剣を乗せながら説明を続ける。
「この短剣、成長するんです」
「……成長?どういう事だろうか?」
「特定の素材と一緒に錬成をすると成長するらしいんです。多分、強い武器に変化するんだと思ってるんですけど……」
「なるほど。それでこの革がその特定の素材と言う事なんですね……ちょっと見せて貰ってもよいですか?」
「ええ、どうぞ、どうぞ」
「義兄上はこれで帰られるのだろうか?」
「ええ、そのつもりです」
「今回のルカの件、並びにルカを助け出してくれてありがとう、心から感謝している」
ルイス殿下は興味深そうに始まりの短剣を手にして観察をし始めた。
「一見、なんの変哲も無い短剣だね。黒いってのは確かに珍しいけど。出来上がったら一度見せて貰ってもいいでしょうか?」
どうやらルイス様はこの短剣に強い興味を持ったみたいだ。
さて、これで王宮での用事は全て終わったし、帰ろうかな。帰ればアイシャがロク親方からアイアンインゴットを買ってきてくれている筈だ。
これで、マイヤさんから譲り受けた【錬成】を使えば、始まりの短剣はすぐに完成するはずだ。
「では、これで失礼します」
ルイス様に丁寧にお礼を言い、僕は来た道を辿りシルフィと合流を果たした。
「旦那様、もういいのか?」
「うん、帰ろうか」
僕は【固有魔法・時空】を使いながらシルフィに返事を返した。
「マイン君!お帰りなさい。頼まれていた素材は解体部屋に置いてあるわ」
アイシャの笑顔に迎え入れられてルーカスの自宅に到着した。
アイシャの言葉に従って僕は足早に解体部屋へと向かう。そしてすぐに始まりの短剣と錬成に筆王な素材を机の上に並べる。
そして【錬成】を使用する。
……初めての錬成で緊張するな。
ん、そうかまず元になる武器を選んで、素材を選んでいくのか……。
スキルに促されるまま進めていくと……始まりの短剣が激しく光り出した。そして始まりの短剣に吸い寄せられアイアンインゴットが
始まりの短剣と融合した。不思議な事に始まりの短剣自体の大きさは変わらないみたいだ。次にトロールのなめし革がおなじように吸い込まれていき
輝きが一層増したところで、上級魔石が引き寄せられた。
すると始まりの短剣が形状を大きく変えていき、形が定まったと思ったら光はゆっくりと収まっていった。
「終わったのか?」
んじゃ
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名前:テンペスト・エッジ
攻撃:+80
階級:聖級
属性:成長・嵐
特攻:魔族
特性:クリティカル
必要素材:マンティコアのなめし革×30、ミスリルインゴット×20、特級魔石
武技:テンペスト・ファング
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よし、成功だ。
けど……な、なんだ?まだ更に成長するみたいだ。
だけど予想通りだ。かなり強い武器になったよ。これ完成したらどうなっちゃうんだろう?
こうなると俄然やる気になるよね。
もう一段、成長させたい。……けど、必要素材がとんでも無いな。
マンティコアは居場所さえ判れば問題無いだろう。問題はミスリルインゴットだ。
ミスリルは聖銀と呼ばれる金属で非常に稀少な素材だ。
他の金属と違い、採掘ではまず得られない。
お金で何とかなる物では無いからな。
そうだ、困ったときは前みたいにアイシャに聞こう。
いや、待てよ?先にアイシャの弓を作らないとね。僕とシルフィは良い武器を手に入れる事が出来たけど
アイシャは元々持っていた弓だけだ。冒険者時代に購入した物でかなり良い弓らしいけど。出来れば新調してあげたい
と思いながら、解体部屋から出るのだった。




