第23話 オークの集落(2)
「すまない、こちらのギルドにマインという少年がいると聞いてきたのだが……」
フード付きのマントで顔を見る事は出来ないが女性のようだ。
「マインは昨日付でギルト登録を抹消となっておりますが……指名依頼でしたでしょうか?当ギルドには他にも優秀な者がおりますよ」
その女性に話しかけられた受付嬢・ミルが女性の問いに返事を返す。
「いや、すまないが依頼という訳では無いのだ。彼に個人的に用事があってな……しかし、登録抹消とは穏やかでは無いな?問題を起こしたのか?」
そう問われたのが聞こえたのだろう、ミルに突っ込みを受けていた直後だっただけにギルド長が顔を顰めたのが分かった。
マイン君への用事という事なら、専属だった私が対応するのが筋だろう。
「いえ、そんな事は無いんですよ、まあ理由については勿論ありますがギルド内での事ですのでお応えは致しかねますが……」
「そうか。ならば仕方ないな……ところで今返事をくれた君、ちょっとこちらに来ては貰えないか?」
何故、私?と思いながらも、その女性の側まで歩いて近づくと小声で「ところでアイシャよ、久しいな」と呟かれた。
急に名前を呼ばれた事で思わず、フードに隠された顔に目を向けると……。
「……シ、シルフィード殿下……何故、此処に……」
そこに居たのはオーガスタ王国、第一王女である”姫騎士”シルフィード・オーガスタその人だった。
「ふふ、すまんがお忍びゆえ、私の正体は黙っておいてくれるか?」
まだ、私が冒険者をやっていた頃、王家からの依頼で確かにお会いした事があった。
しかし、まさか名前まで覚えていてくれていたとは……。
「それで、アイシャよ。マインという少年に会いたいのだが何処に行けば会える?」
「先程の子が話したように彼はギルドから抹消されております、正直今どこにいるかは……」
突然の王族の登場に困惑しながらも、ふと疑問に思った。
なんで姫様がマイン君を捜しているのかしら?
……というよりも、何で彼の事を知ってるのかしら?
王家の人間が一平民を名指しで訪ねてくるなんて正直言って異常である。
「ふむ、ギルドに一度でも登録されているのなら定宿は分かっているのであろう?そこを教えて貰えないか?」
「す、少しお待ち下さい!私がご案内致しますので……ギルド長にだけお話しても宜しいですか?」
「ほう?案内して貰えるならありがたい、なるほど君が抜け出すのに許可が必要か。ギルド長になら……まあ話してもいいだろう」
姫様の許可を頂き、私は急いでギルド長の元に走った。
私の焦る姿が面白かったのか姫様はクスクスと笑っているようだ。
ギルド長に姫様の事を話すと目に見えて狼狽する、そして姫様に向かって傅こうとするのを私が慌てて止める。
「姫様はお忍びです、ばれてしまうような事はしないで下さいっ!」
狼狽するギルド長から外出の許可を貰い、姫様の身の安全を考え、昨夜に引き続き、手早く武装をして姫様の元に向かう。
「なんだ、武装なんかしてきて……護衛というなら要らないぞ?私の腕を知ってるだろう?」
確かに姫様は強い。
”姫騎士”等という二つ名を持つほどの騎士だ。当然私よりも強いのは分かっている。
しかし、それでも護衛をする事とは別の話である。
そもそも姫様に万が一の事があったら、国からどんなお咎めがあるのか予想もつかない。
「……いえ、姫様の身に何かあったら一大事です。このまま随行させて頂きます」
姫様も理解はしているのだろう、肩をすくめてギルドの出口を目指して歩き出す。
マイン君の家に向かう道中、姫様から再度マイン君のギルド抹消についての理由を問いかけられた。
ギルド内の事ではあるが、王族に聞かれれば答えざるをえない。
マイン君がギルドに初めて来た時から昨日までの出来事を話す事にした。
「ふん……やはり、彼には何か特別な秘密があるのは間違いないな。彼の授かったスキルでC級の冒険者に勝つ事など不可能だしな」
「え!?姫様は知ってるのですか!?彼のスキルを!!」
驚いて思わず大声を上げてしまった。
そんな私を咎めるどころか笑みを浮かべて姫様は答える。
「勿論だ、お前も知ってるだろう?王族は神殿から新成人が授かったスキルの報告を受けているという事は」
……確かに言われてみればそうだ、王族はとある理由から新成人のスキルを知る必要があった。
「ああっ!?まさか姫様の目的は!!!?」
「ふふふ、察しがいいな。恐らくその通りの理由だよ、だが他言無用だぞ?大騒ぎになってしまうからな」
そうか、その為にマイン君を見に来たのか!確かにそんな事が発覚すれば世間は大騒ぎになってしまう。
姫様は不敵に笑っていらっしゃるけど、もしそれが実現したら……。
「そう慌てるんじゃない、あくまでも見に来ただけだ。それになアイシャ知ってるか、ヤツは単独でオークを狩る事が出来るらしいぞ」
オークを単独で!?それが本当だというなら……ライルを倒したというのも納得が出来る。
一体、彼のスキルは……。
私の疑問が分かったのだろう、姫様は更に言葉を続けた。
「気になるようだな、彼のスキルが。彼が隠したがってるのに私が言う訳にはいかないからな。”今”は内緒だ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
むむむ、スキルを奪っているうちに囲まれちゃったか・・・。
ええい、ダメ元で【補助魔法・睡眠】をぶつけてやる。
奇跡的にレジストされる事無く、前方のオークが一瞬で眠りについた。
短剣で眠ったオークの腹を裂きながら、その脇を通り抜ける。
囲みを突破した僕は後ろに向かって再び【範囲魔法・火極大】を打ち込んだ!
爆炎がオークを中心に巻き上がり、あっという間に固まっていたオークの群れを燃やし尽くしていく。
スキルは既に全て奪っている。
殲滅する事に躊躇いは一切ない。
【気配遮断・中】を使い、炎が巻き上がっている場所から離れた所にいったん待避する。
「ふう、何とか逃げれたか……」
最初に【範囲魔法・火極大】を打ち込んだ時の轟音で近場にいたオークに気が付かれてしまった。
すぐ逃げようと動き出したのだけど、逃げ道に一体のオークがいきなり現れて退路を塞がれてしまったんだ。
スキルを奪い、倒そうとした所で後ろから大量のオークが迫ってくる事に気が付いた。
取り敢えずどんなスキルか確認をしないまま、じゃんじゃん奪い取り、囲まれた所で先程の【補助魔法・睡眠】となったわけだ。
今ので10匹以上は倒せたのかな?
最初に倒した分を足せば恐らく残りのオークは10匹前後の筈だ。
消耗がそれなりに激しいが、少し休憩を挟めば何とかなりそうな気がしてきたよ。
名前:マイン
LV:20
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:狩人
【スキル】
鑑定・全LV2 (196/200)
カット&ペースト (55/200)
獲得経験十倍 (-/-)
短剣・極LV3 (56/200)
格闘・極Lv4 (19/200)
双剣・極LV2 (36/100)
両手斧・極 (0/50)
片手剣 (0/50)
両手剣 (0/50)
片手斧 (0/50)
身体強化・小LV3(6/200)
身体強化・大 (0/50)
脚力強化・小LV2(79/100)
視力強化・中 (16/50)
指弾Lv3(1/150)
俊足(小) LV2 (55/100)
豪腕LV2 (98/100)
鉄壁LV2(76/100)
扇動 (0/50)
気配遮断・中LV2(96/100)
気配察知・中 (0/50)
ストレンクスライズ (0/50)
フィジックスライズ (0/50)
魔法・火 (0/50)
魔法・水 (0/50)
魔法・風 (12/50)
魔法・回復小 (36/50)
範囲魔法・火極大 (9/50)
範囲魔法・風極大 (9/50)
範囲魔法・水極大 (0/50)
範囲魔法・土極大 (0/50)
魔法・回復大 (0/50)
補助魔法・速度低下 (2/50)
補助魔法・睡眠 (1/50)
補助魔法・徐々回復小(体力) (29/50)
補助魔法・徐々回復大(体力) (0/50)
補助魔法・防御低下 (0/50)
火属性・耐性 (6/50)
水属性・耐性 (0/50)
風属性・耐性 (0/50)
土属性・耐性 (0/50)
光属性・耐性 (0/50)
闇属性・耐性 (0/50)
料理 (19/50)
裁縫 (0/50)
礼儀作法 (0/50)
交渉術 (2/50)
錬金術 (6/50)
清掃 (11/50)
テイム (0/50)
木工 (0/50)
武技:サクセスィブショット (0/200)
武技:連撃 (0/200)
武技:シャークグロウ (0/200)
なんか、よく分からないスキルが増えたなあ……。
取り敢えず、すぐに使えそうなのは……【気配察知・中】辺りは、今まさに使えそうだ。
うーん、索敵範囲は思ったより広くは無さそうだね。
ここから北に500mくらい離れた所に大きな気配が三つ、すぐ側に大きな気配が一つとちょっと大きいのが二つ。
まずは近くのヤツから倒してしまうか、あんまり時間が掛かってしまうと掴まってる女性が危ないしね。
大分、時間を食ってしまってるから、もの凄く心配ではあるのだけど……。
そう思いながら、近くの気配の方向に【視力強化・中】で状況を確認する。
名前:ハイオーク・ナイト
LV:15
種族:魔族
性別:♂
【スキル】
武技:シャープネス・ソード
【アビリティ】
咆哮
名前:ハイオーク・ダークナイト
LV:18
種族:魔族
性別:♂
【スキル】
体力吸収・大
【アビリティ】
咆哮
名前:オーク・ジェネラル
LV:25
種族:魔族
性別:♂
【スキル】
豪腕・極
腕力強化・極
【アビリティ】
咆哮
……え?オーク・ジェネラルって……ホントですか?
お読み頂きましてありがとうございます。
オークの集落、まさかの(3)に続きます。
こんなに長くなる予定じゃなかったんですけど……。
昨日辺りから時間帯別のPVがどの時間もそれなりに読んで頂けるようになってきました。
更新した時間にPVが増えるのはわかるのですが、夜に更新時間と同じ位のPVがあるのが不思議です。
皆さん、どこから辿り着いているんでしょうね?
何にしてもありがたい事で、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。
【改稿】
2016/12/17
・武技の名称を修正。