第227話 ルイスの決意
「旦那様、待たせたな。父上に部屋を貸してくれと頼んだら、この部屋を使えと言われたのでここで話そう」
元々この部屋は王宮の離れに位置しており、普段から人が立ちよる場所じゃ無い。今回の話に使うには確かに最適だろう。
よくみればルカ様も所在なさげに周りをキョキョロ見ながら付いてきていた。
「……あ、あの、私に何かご用でしたでしょうか?」
「……出来れば私、この後でルイス様とお茶を飲む約束がありますので……」
なんて間が悪いんだ。ルカ様とルイス様がうまくいくのは僕らも望むところなので無理は言えない。
「ああ、ルイス様とのお約束が終わってからで大丈夫ですよ」
僕が笑顔でそう言うとルカ様はパァっと明るい笑みを浮かべて何度も頷いた。
「はい、はい、ありがとうございます……では一度失礼します」
ルカ様は王女らしい綺麗なお辞儀を残して、とててーっと走り去って行った。
走り去って行くその後ろ姿を見て改めてザナドゥへの強い怒りを僕は覚えるのだ。
◆◇◆◇◆
(……やっぱりマイン様はお優しいお方です♪)
シルフィード様が羨ましいです。あんなに素敵な旦那様を持てて……。
それに引き換え私は……。
「こんにちは、ルカ様!お元気が無いようですがどうされましたか?」
「ル、ルイス様!どうして?」
「いや、待ち合わせの部屋にお見えにならなかったので、つい探しに来てしまいました。」
「す、すみません……お手間を掛けてしまって!」
「いえいえ、ご無事でいらっしゃればそれでいいのですよ」
(ルイス様もお優しいです。オーガスタの方は皆とてもお優しい方ばかり……)
「……用事が無いのなら、予定通りにお茶でも飲んで休憩しませんか?」
私はすぐにルイス様の提案に頷き、彼の後を付いてお茶会の部屋へと向かう事にしたのだ。
部屋につくとすぐにルイス様が椅子を引いて下さり、そこに腰掛けた。
ルイス様は満足げに頷いて私の向かいの椅子に腰を下ろした。
私達が席に着くと、メイドさんが一人側にやってきて、飲み物を美しいコップに注いでくれます。
琥珀色の飲み物……オオセでは見た事がありません。
「ルイス様、この飲み物は何ですか?私見た事が無いのですが」
「これは、私の母上の故郷の飲み物で紅茶という飲み物ですよ」
「私と母上の友人のマイヤ殿と二人で再現した飲み物です。美味しいですよ、どうぞ好みで砂糖を入れてみて下さい」
ルイス様の言う通り、お砂糖をまず少し入れて飲んでみる。
「……あ、美味しい……」
「お口に合いましたでしょうか?ミルクを入れてもまた美味しいですよ」
私のつぶやきを聞いてルイス様は満面の笑みを浮かべて新たな飲み方を提案してくれた。
ミルクを多めに流し込み、飲んでみると、先ほどとは違うまろやかな味わいを楽しむ事が出来た。
……ふう、オーガスタ王国はずるいですね。こんな素敵な飲み物を楽しめて……。
「どうやら、気に入って頂けたようですね、良かった」
ルイス様が屈託の無い笑顔を見せて私に声を掛けてくれる。
「ええ、とても美味しいですわ。オーガスタの方々はこんな美味しい物を飲まれててずるいですわ」
私が冗談交じりにそんな事を言ってみると……
ルイス様は少しだけ慌てたそぶりで
「い、いや、その飲み物は私とマイヤ殿しか作れないので、オーガスタで広く飲まれているわけでは無いのです」
「そ、そうなのですね。ルイス様凄いですね素敵です」
「い、いや、お……僕は兄上や姉上のような武がありませんのでこうして錬金術の知識や経験を生かすしか無いから……」
「ルカ様によろしければプレゼントがあるのですが、受け取って頂けますか?」
「……まあっ!、何でしょう」
「コレなんですが、マイヤ殿と一緒に作った腕輪なのですが……収納機能が付いてます」
「収納袋みたいなものなんですの?」
「そうですね、ただ、容量制限もありませんし、入れたら時間の経過も無いのです。かなり便利だと思いますよ」
「まあ、ルイス様嬉しいですわ、ありがとうございます。その腕輪つけて頂けますか?」
私はそう言って右手をルイス様の方へ差し出した。
するとルイス様は顔を真っ赤にして壊れ物を扱うように優しく私の腕に腕輪を填めて下さったのです。
「あ、ありがとう……ございます」
「いえ、喜んで頂けたならそれで満足です」
「ところで……ルカ様うちの父から聞いたのですが、私とルカ様に結婚の話がでているとか?ご存じでしたか?」
「……は、はい、聞いております」
「そうですか……僕では貴方の相手にはなれませんか?ルカ様、親が言ったからではなく、僕と結婚して貰えませんか?兄や姉のように武が有るわけでも無い、あなたのような素敵な人にふさわしい人間では無いですが……幸せにしますお願いします」
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ツイッターと活動報告でも告知済みですが書籍第2巻の発売が決定しました。2018年1月10日に発売です。
シルフィード外伝を書き下ろしに書かせていただいております。
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最近、謝ってばかりです。取り急ぎ、急遽更新させて頂きました。