第222話 サーシャリオン
「ごめん、王都からの遣いである。マイン殿」
……ん?この声は……まさか……ね
マイン君がお風呂から出ていくとしばらくしてサーシャリオン様が戻ってきた
「サーシャ様ダメですよ、マイン君はこの家の主なんですから彼を追い出すような事をしては……」
「だって、恥ずかしいのですもの……」
「恥ずかしいのは分かる。しかし、サーシャリオン殿は子をなさないおつもりか?」
今度はわたしにだけじゃなく姫様にも注意を受けている。
姫様だって最初はすごく恥ずかしがっていたのに……。
「いや、そんな事はありません!リッツ王家の血を絶やすわけにはいけませんから!」
そうだ、順当に考えてサーリオン様が生む子はおそらくリッツ王家に属する事になる。
スターシャ様とアルト様のお子はオーガスタに属する事となるだろう。
つまり、サーシャリオン様は子をなさなければならないという事だ。
私とマイン君の子は当然、オーガスタに属する事になるわよね……変なしがらみもないし。
「それでは、マイン君を私が呼び戻して来ますね、よろしいですか?サーシャ様」
「……は、はい。わかりました」
そう言い残して私は風呂桶から出て、マイン君を呼びに行く。
裸のまま出て行くのは流石にはしたないわよね。バスタオルを体に巻き、髪の毛をタオルでまとめてっと
「マインくーん」
どこかしら?
自室か、居間のどちらかだろうけど……。
「アイシャー、どうしたんだい?」
マイン君の居場所を考えていたら不意に真後ろから声を掛けられた。
「ああ、マイン君お風呂戻ってきてくれる?サーシャ様も納得してるから」
「え?いいの?サーシャ無理してない?」
「大丈夫よ、彼女も子を成さないといけないし、お風呂位で恥ずかしがってちゃ困るでしょ?」
「今晩は私の順番だったけど、サーシャ様に変わるわ」
躊躇うマイン君の手を掴み、風呂へと戻っていく。
「おまたせしました」
わざと芝居がかったようにお辞儀をして中にはいる。
勿論、バスタオルとタオルは脱衣所で脱いでいる。当然裸をマイン君に見られるわけだが、今更気にしない。
「さっ、マイン君先に入ってくれる?」
私がそう促すとマイン君がさっと風呂に浸かる。
「だ、旦那様、少しぬるくないか?」
ふふっ、姫様は熱めのお湯が好きですもんね。
多分、マイン君は今日は意図的にぬるくしたんだと思う。
サーシャ様の好みが判らないから。
「うん、うん、サーシャはどうかな?」
「ええ、もう少し暖かくても良いですね」
「うん、じゃあ、少し温度あげるよ」
マイン君はそう言って時分の周りのお湯をかき混ぜ始めた。すると、暖かなお湯が撹拌されて風呂桶全体の温度が上がっていく。
「え、え?な、何が起こってるのですか?」
事情を知らないサーシャ様が首をかしげて驚いている。
「サーシャ……これはね僕のスキルでやってるんだ」
「まあ?マイン様……あの移動のスキルだけじゃ無いのですね」
風呂から上がり寝る事になるとアイシャとシルフィに背中を押されてサーシャが僕の部屋へとやってきた。
「はて、今日はアイシャと一緒に寝る日だった筈だけど……
「サーシャ様頑張って」
「大丈夫だ、旦那様は優しくしてくれる」
部屋の外からシルフィとアイシャの声が聞こえてきた。
……なるほど、そういう事か。
部屋に入ったところで俯き動かないサーシャに僕は声を掛けた。
「サーシャ……おいで」
するとぎこちなく壊れたブリキのおもちゃのようにサーシャはギクシャクと僕のベッドに向かって歩いてくる。
僕は彼女がベッドに来る前に手早くパジャマを脱ぎ捨てておく。
「マ、マイン様……宜しくお願いします」
こんな場面でも彼女は綺麗な一礼をしてからベッドの中に入ってくる。
「お二人に背中をおされまして……どうか、サーシャにお子をお授け下さいませ」
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ツイッターと活動報告でも告知済みですが書籍第2巻の発売が決定しました。2018年1月10日に発売です。
シルフィード外伝を書き下ろしに書かせていただいております。
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