第220話 会談
オークの襲撃などあったものの何とかオーガスタ王宮に着いた僕達は、すぐさまジャック様をファーレン様に面会させるべく手続きを取った。
王宮に着いた僕達を待っていたのは驚いた事にモルグ宰相だった……。
何でもファーレン様の指示との事だ。
「おお、マイン殿、シルフィード殿下お疲れでした。ジャック陛下はどうかこちらにおいで下さい。ファーレン様がお待ちになっておりますのでご案内させていただきます」
モルグさんにオオセ国王一家を引き渡し、僕とシルフィは王宮内の僕らの部屋へと移動した。
部屋に入ると人の気配を感じ、シルフィがライナススワードを抜刀する。
「……ひ、姫様、私ですアイシャです……」
部屋に居たのは僕の大事な家族、アイシャとサーシャ、わっふるだった。
アイシャ達がここに居るという事はお義兄さんの率いるリッツの双子の護衛団は僕らよりも一足先に王都に戻っていたという事だろう。
「マイン様、シルフィード様ご無事でなによりです」
「びっくりしたわよ、オーガスタに戻ってみればマイン君と姫様がリッツに向かったっていうんだもの……」
「急遽国王様に頼まれごとされてしまってね、結果的にほったらかしになってしまったんだ、ごめんね。
僕がそう言うとアイシャはやれやれといった表情で肩をすくめた。
「マイン様は本当にお忙しいお方ですね……」
サーシャは僕をちらりと見たあとそんな事を呟いている。
「わっふる、おいで」
僕がわっふるに向けて手を出すと「わふっ」と一鳴きして僕の背中に飛び乗って定位置の頭の上に乗ってくる。
『まいん、おれひまだったぞ~』そう言いながら僕の頭をぺしぺしと叩いてくる。
『ごめんごめん、わっふる。もう用事は終わると思うから……帰ったらお風呂入ろうか』
僕がそう言うとわっふるは尻尾を大きく揺らして喜び始めた。
その様子を見たシルフィが声を掛けてきた。
「わっふる、どうした随分とご機嫌だなっ?」
「家に帰ったらお風呂に入ろうってわっふるに伝えたんだ」
シルフィの問いには僕が答えた。
「お、お風呂!!?マイン様のおうちにはお風呂があるのですか?」
その答えを聞いてサーシャが驚きながら確認してくる。
「ああ、凄いお風呂がありますよ、我が王家の風呂よりも素晴らしい物が!」
サーシャ相手に自慢げにシルフィが返答する。
「旦那様、わっふる、私も一緒させて貰っても良いか?」
「ええ?シルフィード様もご一緒に入るのですか?」
「ああ、勿論だ。夫婦が一緒に入って何が悪い?なんならサーシャリオン様も一緒にどうだ?」
「……あうあう、一緒にですか?」
「私も是非ご一緒させて下さい」
アイシャもすかさず話に割って入る。
「そうだ、裸の付き合いをすればすぐにわかり合えるぞ、うちの風呂は気持ちが良いから特にな……」
サーシャリオン様はちらっとお僕を見て顔を赤くすると小さな声で「考えておきます」とシルフィに返事を返していた。
……どうやら僕は、超美人に囲まれてお風呂に入る事になったらしい。
「えっと、帰る前にちょっと国王様のところに行ってくるね。」
僕は急ぎ足で部屋から飛び出して謁見の間まで歩いていった。
「……多分ココだと思うんだけどなあ」
予想は外れ、国王様もジャック様もいなかった。
……もしかすると!
国王様の執務室……?そうだ、うん、きっとあそこだ。
というよりもうそこしか思いつかない。
うん?待てよこんな時こそ【地図】の出番か。
脳内で【地図】を広げて王宮の中から国王様の居場所を探していく。
いた!、ジャック様も一緒みたいだ、やはり執務室にいるようだ。
【地図】スキルは本当に便利だね……色々触ってるうちに検索も出来る事がわかったよ。
探したい人物が何処にいるのか瞬時に確認が出来るみたいだ。
……よしっ、じゃあ、行こうか。
コンコン。
執務室のドアをノックする。
すろ、中から国王様の声が聞こえる。
「……誰だ?今、忙しい、緊急でなければ後にしろ」
「僕です、マインです」
そろそろ戻ろうと思いまして、帰る前にお話があればと、参りました」
「ふむ、分かった。入れ」
中に入るとファーレン様とジャック様が談笑している所だった。所在なさげに少し離れた場所でルカ様も座っていた。
「おおっ、マイン殿、この節は大変にお世話になりましたな。」
「それで、ファーレン殿……ルカの嫁入りの話はお受けいただけるのですな?」
え?ルカ様が嫁入り?……一体誰に?
「当家は構いませんが本人達の意思を確認すべきではないでしょうか?」
うん、そうだ、そうだ。本人の意思は重要だ。僕の結婚もそうだけどどうしてこう勝手に縁談を進めたがるんだろうね?
「ルカよ、どうだ?決して悪い話では無いだろう?」
ジャック様がルカ様に同意を求める……するとルカ様は小さな声で
「……いえ、出来ましたらマイン様に貰っていただきたいです……」
えええええっ!?ぼ、僕ですか?いくら何でもそれは無理でしょう。いや、ルカ様が嫌いとかでは無いのだけど……。
新しいお嫁さんのサーシャともまだ交流出来ても居ないのに更に一人増えるなんて絶対に無理だよ。
「マインですか?私は異存はありませんが、彼は先日新たに嫁を娶ったばかりです。更に一人というのは流石に……」
国王様が僕の気持ちを代弁してくれているが、ルカ様の表情がどんどん曇っていく。
「ル、ルカ様のお気持ちは大変嬉しく思うのですが、ファーレン様が仰られたように私には既に妻が三人もおります」
「……で、ですので他に良縁があるのでしたらそちらをお考え下さい、その方がお幸せになれますよ」
「じ、実はですなルイス殿下に嫁がせていただけ無いかとファーレン様にお願いしておったのですよ 」
僕の返事を聞いてここぞとばかりにジャック様が僕とルカ様の会話に割り込んできた。
「なるほど、ルイス殿下ですか……お優しい方ですし、錬金術のエキスパートであられるし、良縁じゃないでしょうか?」
僕がそう言うとジャック様はそうでしょう、そうでしょうと大きく頷いた。
……うん、ルイス殿下なら幸せにしてくれるだろう。ルカ様は幸せにならないと絶対にダメだ。
「僕がそう言うとルカ様は少しだけ俯いて首を縦に振ったのだ」
その様子を見たファーレン様はすぐさまミーティアさんを呼びだし、ルイス殿下を呼ぶように申しつけた。
「……では僕はこの辺でお暇いたします」
いつも拙作をお読みただきありがとうございます。
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ツイッターと活動報告でも告知済みですが書籍第2巻の発売が決定しました。2018年1月10日に発売です。
シルフィード外伝を書き下ろしに書かせていただいております。
また、今後の更新についてですが、月水金の週3回の定期更新にしようと思っております。
時間はいつも通り朝6:00時の予定です。




