第215話 ルカ姫の決意と恋心
「……あぁ、では、本当に……本当に私の中にはあの男の子が宿っているのですね?」
ルカ様の瞳から大粒の涙がスーーッと流れ落ちる。
「ああ、泣かないでください。僕のスキルを使えば妊娠の事実を消す事が出来ます。ただ赤ちゃんは亡くなってしまいますが……」
「ですので姫様の意向を伺ってから対応しようと思っております」
「王家の娘がよりによって魔人の子供を身ごもるなんて許される事ではありません。生まれたとしてもきっとまともな人生は望めないでしょう」
「私自身もオオセ王家の血を引く者としてあの男の子供など望んではおりませんし望んではいけません」
ルカ様は目を大きく見開いて涙を流しながらも気丈に答えを返す。
「もし、本当にマイン様のお力でお腹の子供をどうにかできるのならば、何卒お願いします」
よし、ルカ様から承諾を得た。お腹の子供はピロースの奴隷契約同様、二重カットで消してしまうか?
子供を殺す事になるが、そこはルカ様の為だと割り切ろう。
手はじめに奴隷契約を【カット】だ。
そしてそのまま、妊娠を【カット】……これでルカ様はザナドゥの奴隷から解放された。妊娠の事実はまずは小石にでも
貼り付けておいて取りあえずしまっておこう。
この石の処遇をどうするかはうちの奥さん達にも相談してみた方がよさそうだ。
子供は恐らくこの時点で亡くなってるよね……
供養も含めて女性の意見も聞いた方がいいよね。やっぱり。
「分かりました、姫様」
僕は取りあえず、彼女の希望を承諾した事を告げ立ち上がり、再び彼女を優しく抱き上げた。
所謂御姫様抱っこというやつだが、抱いているのがルカ姫だけにこれが本当の御姫様抱っこだななんて
馬鹿な事を考えていると
「……あ、あの……、マイン様」
恥ずかしそうに消え入りそうな声でルカ姫は僕の名前を呼ぶ。
「……どうされましたか?姫様」
「それです。確かに私はオオセ王国の第一王女でした。しかし今は国も滅び、この身も穢されてしまった……」
「……ですから、ですから私を姫と呼ぶのはもうおやめくださいっ!!」
「お気持ちは理解出来ますが、貴女がオオセ国の姫である事実は覆りません、ですのでどうか姫と呼ぶ事をお許しください」
「……はい」
「ところで私をあの地獄から助けて頂きましたマイン様の事がよく分かりません、どのようなお立場なのかとかお聞かせ頂けないですか?」
「僕の名前はマイン・フォルトゥーナと言います」
「フォルトゥーナ?貴族のご子息なのですか?」
「い、いえ、貴族と言えばそうなのですが、生まれはただの平民ですよ」
「え?えっ?どういう事です?」
「僕の妻がオーガスタ王国の第一王女ですので、その絡みで……貴族になりまして」
「まあ、シルフィード様がご結婚……ですか?そうですか……、マイン様はシルフィード様とご結婚なさってるのですね?」
そうつぶやくルカ姫の声色は悲しげであった。




