連載一周年記念閑話マイン外伝-episode ZERO-
僕の名前はマイン。成人前の13歳狩人見習いだ。
僕が5歳の時に両親心は流行り病が原因で死んでしまった。
だから僕はそれから一人で生きてきた。
お父さんが腕の良い狩人だったので、うちには狩人道具が結構遺っている。
その中の罠を使ってウサギなどの小動物を狩っては売って日々の糧を得ているんだ。
幸いにしてお父さんとお母さんは人付き合いが良くて町の人達と仲がよかったおかげで
獲物を少し高めに買ってくれたり、食材や日用品などを安く売ってくれたりしてくれて
なんとか暮らしていく事が出来た。
お父さんとお母さんは死んでしまったけれど……。それでも僕をこうやって助けてくれているんだ。
町の人、そしてお父さんお母さんに心から感謝!だねっ
今日はこれからルーカスの町の裏手にある森に行くんだ。
昨日仕掛けた罠の様子を見にね。5つ仕掛けた罠の2つくらいに野兎がかかってくれていれば助かるんだけど……。
「ふう、ここもかかってないか?」
昨日しかけた罠を見て回った結果……4つは何もかかってなかったんだ……。
「参ったなあ……生活費がもう残りわずかなのに……」
「……ああ、僕にもスキルがあればなあ、国王様みたいに凄いスキルを授かれたらきっとこんな苦労しなくてもいいんだろうなあ……。
成人まであと2年だ……!2年経てばスキルを神様から授けてもらえるんだ!!。一体どんなスキルを神様は僕に授けてくれるんだろう?出来る事なら獲物を楽に狩れるような強いスキルが欲しいなあ……」
そしたらお父さんのような立派な狩人になれると思うんだよね!
そして出来れば素敵なお嫁さんも貰えたらいいよね。
取りあえずウサギが捕れなかったから何か考えなきゃ駄目だよね……。
「……うん?あれはぐるっぴーか?」
ぐるっぴーは飛んでいるから倒すのが難しいため買い取り値が高かったはずだ。
うん、あいつを仕留めればしばらくは生きていけるはず……。
「けど、どうやって仕留めよう……」
◆◇◆◇◆
……そういえば昔お父さんが言ってたっけ?
「いいか、マインよーくきけよ
これからお父さんがお前に大事な事を教えるからな」
特攻という言葉を知ってるか?
これは特定の対象物に普通よりも大きなダメージを与えたり有利に戦う事が出来る事を指す言葉なんだよ」
「有名なのは空中を飛んでいる相手の特攻だ……弓や槍で戦えば有利に戦う事ができるんだぞ」
「うん、分かった!お父さん、とっこうだね?僕覚えたよ、とっこう、とっこう!」
そうか、ぐるっぴーを倒すなら弓の方がいいのか!
「そうだよね?お父さん」
僕は胸の中で笑顔を向けてくれるお父さんに問いかけてみた
「……そうだ、まいんよくお父さんの言った事を覚えていたな?えらいぞ」
「ぐるっぴーや鳥類は暗闇に弱い。それをうまく利用して戦うんだ」
(……ありがとうお父さん)僕はお父さんにお礼を言って考えを巡らせる。
暗闇に弱い……んーどういう事かなあ?あ、鳥目ってやつかな?
この場所から北に少し進んだら光も届かない薄暗い場所があったよね。
そこに追い込んで仕留めよう。
弓の練習は毎日やっていたから、スキルは無いけど、そこそこ自信はあるんだよね……。
実際倒す事が出来るかは分からないけど……挑戦する価値はあると思う。
どちらにせよ倒せなきゃ食べる物が無くなっちゃうしね。
……よし、じゃあ、一度家に帰って家から弓を持ってこなきゃ……。
僕は音を立てないよう慎重に家まで走り出す。
それからおよそ30分。
弓と矢を持ってきて基の場所に戻ってきたけどぐるっぴーの姿は何処にも無かった。
そりゃ、そうだよ、そんな都合良く行くわけは無いよね。
僕は気落ちしながらゆっくろと地面に膝をついて目をつぶる。
……すると少し離れた場所から『ぐるぐる……』という唸るようなぐるっぴーの鳴き声が聞こえたのだ。
その方角を見てみると先ほど追い込もうと思っていた森の奥側だった。
しめた!まだ運は残ってたみたいだ。
慎重に鳴き声がする方向に歩いて行くと
なんと、ぐるっぴーの群れが居たのだ。
(しめた!これはチャンスだ!)
僕は音を立てないように慎重に矢を弓に番えて一番手前のぐるっぴーに狙いを定める。
(……んと頭があっち向いてるから飛び立つ方向はこっちかな?
ぐるっぴーが飛び立つ方向を予想して僕は狙いを定め矢を放つ。
矢はひゅるひゅると風切り音を鳴らして飛んでいく。
音にきがついたぐるっぴーが枝から飛び立つ、僕が予想した方向へと……。
グルグルッゥ……」ぐるっぴーは断末魔の声を上げて地面にドサッと落ちていく。
「よし!!!お父さんのおかげだ」
出来ればもう1匹くらい狩れないかな?
周りを見渡すと先ほど射のせいで沢山いたぐるっぴーは全部逃げて行ってしまったようだ。
僕は目をつぶり再び耳を澄ましてみる。
……おっっといけない、いけない。
せっかく仕留めた獲物を忘れていくとこだった。
お父さんが遺してくれた収納袋にぐるっぴーの亡骸をしまう。
この収納袋は生き物以外を大量にしまっておける便利な魔道具なんだ。狩人には必需品といっていい道具なんだけど
非常に高価で本当なら僕のような見習いが手にする事が出来る物では無い。
これもお父さんに感謝、感謝だね。
僕は今でもお父さん、お母さんに守られているんだ。
今度のお墓参りには二人が大好きだった向日葵の花を持っていかないとね。
そんな事を考えていると奥の方からぐるっぴーの鳴き声がしたのを確認出来た。
先ほど同様、物音を立てないようゆっくりとぐるっぴーに近づいていく。
すると眼前にはさきほど取り逃がした群れがいたのだ。
よし、もう一匹くらいなんとか……。
僕は近場のぐるっぴーに先ほどと同じように狙いをつける。
そして、更に進行方向にいる一匹も観察をして、弓を素早く連射した。
「よしっ」
落下音と断末魔の鳴き声は共に2つ。
上手く2匹落とせたみたいだ。
これもお父さんが教えてくれた特攻のおかげだろう
じゃなければ非力な僕の弓で一発で倒せるはずが無いに決まってる。
そして倒した2匹を素早く回収して収納袋に入れる。
兎は捕れなかったけど、ぐっぴーという兎以上の獲物を3匹も捕れた。
これでなんとかひもじい思いをしなくてもよさそうだ。
一匹は肉屋さんに持って行こう。残りは冒険者ギルドに持って行ってみようかな?
ギルドでぐるっぴーを欲しがっている人がいれば高く買い取ってくれるだろうからね。
ギルドに着くと僕と同い年のアンセムが居た。
アンセムの父親はギルド長という事でそれを盾にわがまま放題の嫌なヤツなんだ。
「よう、孤児マインじゃねーか一体何しに来やがった?ギルドでは兎の買い取りはしてねーぞ」
「こ、こんにちわ、アンセムぐ、ぐるっぴーの依頼がないかと思って・・・」
「ぐるっぴーだと?まさかお前がぐるっぴーを取ってきたなんて事はねえだろう」
「ん?なんだい?マイン君、ぐるっぴーなら丁度探してる人がいるよ」
「お、親父!!」
アンセムとの会話にギルド長さんが割って入ってきた。
「あ、良かった!2匹いるんですがどうでしょう?」
「ふむ、1匹銀貨5枚で買い取ろう」
「うちのアンセムも君のようになってくれると嬉しいのだがな」
9月22日をもってカット&ペーストでこの世界を生きていくは一周年を迎えました。
そこで日頃の感謝の意味を込めて閑話をアップ致しました。
今後とも宜しくお願い致します。