第213話 ルカ姫脱出
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「……ふん?結界の中の人数が増えたな?結界に接触があった形跡は見当たらないが……。これはどういう事だ?
……これは……こんな事が出来るのは特異点、神獣の加護を持つマインとやらの仕業か?我が息子、ザナドゥを退けた力を見せて貰うか。
魔王カイエンの独り言が終わると、村を取り囲んでいた。赤い陽炎のような結界が、細かい鎖で編まれたような形状に姿を変えて、村全体に上空から降りてきてすっぽりと被さった。
「これで、忍び込んだネズミも逃げ場が無いだろう……」
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「ルカ殿、コレを着てくれ」
ピロースがルカ様の拘束を解き、僕が渡した衣服をルカ様に渡している。その間僕は【地図】でカイエンに動きが無いかを
チェックし続けていた。今の所、動きは無い。よし、ばれてはいないようだな……?
このまま、うまく脱出出来れば万々歳だけどな。
「ん?なんだコレ魔王の結界か?」
ルカ様が服をきている最中、家の壁をすり抜けて先ほど村の外で見たカイエンの結界のような赤い鎖状のモヤが上空から降って来た。
「……し、しまった。カイエンのヤツ気がついたのか?」
ピロースが悲鳴のような声を上げる。
「ルカ、早くっ!早く、着替えてくれ、このままだと逃げ出せなくなってしまうぞ!!」
ピロースの口調がどんどん、忙しない物へと変化していく。
……どうやら、魔王との対面は避けられそうも無いな……あらためて僕は【地図】で魔王の様子を確認してみる。
うん、まだ動き自体は無いようだ。
「ピロース焦らないで、カイエンはまだ動いていない」
僕はピロースにそう告げて、着替え中のルカ様へと声をかけた。
「ルカ様、僕の名前はマイン。オーガスタ王国のファーレーン国王の命により御身を救いに参りました」
「本当に助けてくれるのね?この地獄から!ピロースいいわ、着替えたわよ」
ルカ様の着替えが終わったのを確認して僕はルカ様の前へと躍り出た。そして、彼女を優しく抱き上げて
「すみません、失礼します」
【固有魔法・時空】をすぐさまルーカスのクランハウスへと接続する。
ルカ様を抱き上げたのは黒い渦に彼女が恐れをなして時間を取られるのを避けたかったからだ。
黒い渦を見てルカ様が「ひっ」と声を上げて僕に力一杯抱きついてくる。
うん、抱き上げて正解だ。
「ピロース、先にいくよ」
そうピロースに声を掛けた時に魔王の結界の鎖がピロースの体に覆い被さっていた。
「ピ、ピロース!!」
慌てて僕が声をかけると彼女は不適に微笑み「だいじょうぶだ、早く行け」と短く答えを返した。
……これでカイエンにばれたと思って間違い無いね。
「あの、マイン様?この黒いトンネルはなんですか?」
「ああ、済みません。僕のスキルで作ったオーガスタ王国への通路です。ここを抜けたらもう安全ですよ……あなたは、自由です」