第212話 ルカ姫救出作戦(5)
よし、なるべく迅速にこの場所から撤退した方がいいだろうから。
直接ルカさまの目の前に繋ぐ事にしよう【固有魔法・時空】を使用する。
すぐさま黒い渦へ飛び込もうとするとピロースが声を掛けてきた。
「待て、いきなりお前が行っても彼女は混乱するだけだろう。……私が先に行って彼女に説明をしよう。……私なら同じザナドゥの奴隷だったので面識はあるからな」
ピロースはそう言い残して一人渦へと飛び込んでいく。
◆◇◆◇◆
ここは……間違い無い。少し前まで私も住んでいたザナドゥの自宅で間違い無い。
肝心のルカ姫は隣の部屋にいるはずだ。
彼女はある意味、わたしにとっても恩人といえる存在である。
彼女が居たおかげでザナドゥの性欲は私に向かってくる事がなかった。
彼女に恩を感じているからこそ、この救出計画に参加する事にしたのだ。
魔王カイエンは恐ろしい相手だ。……しかし、マインなら……未知の力を持ってるマインならば……もしかすると勝てるかもしれない。
私はマインの謎の力に賭けてみる事にしたのだ。
「は~い、お姫様~、元気してたかしら?」
私が壁に裸のまま貼り付けられている目的の御姫様にわざと軽く声を掛ける。
すると彼女はビクっと体を震わせ「も、もうやめて下さい・・・酷い事しないで下さい」
「ばっかねえ、私よ、私、ピロースよ」
「ピ、ピロースアナタッ!!あの男と一緒に出かけたのではないですか?」
お姫様が探るような目で私を見てくる。
無理も無いわよね、彼女からすれば私もあいつらの仲間みたいな物だから
「あなたを助けに来た……と言ったら信じてくれるかしら? オーガスタ王国の新しく生まれた英雄の手によって私は既にあいつの奴隷から解放されてるんだ。ソイツがアンタを助けたいって言うから協力してるってわけさ。いきなりその英雄が来てもアンタは混乱するだけだろうから先に私がこうして来たと言う訳だ」
「……わ、私を助けてくれるのですか?この地獄のような場所から!!……ああ、なんと言う事かしら。こ、これは夢じゃないのね?」
「ああ、夢じゃ無いぞ、ルカ……それからこれは言うかどうか悩んだが伝えておかないわけには行かんからな君は妊娠している。マインのスキルで確認したそうだから間違い無い」
「に、妊娠……わ、私がですか?いやあああああああああああっ!!!!」「」
「お、落ち着け、兎に角、もうすぐマインが助けにくるから、待って居るんだ」
(……マイン……?それが私をこの地獄から救い出してくれる人の名前?)
◆◇◆◇◆
「マイン、話はつけてきたぞ」
先行してルカ様の元に行っていたピロースが黒い渦から顔をだしながらそう報告してきた。
ふう、どうやらうまくいったようだ。魔王に見つかって捕らえられたりしないか心配だったけど、杞憂だったみたいだ。
よし、じゃあとらわれのお姫様を救いに行こうか。
僕は反動をつけて起き上がりピロースが顔を出した渦の中へ飛び込んでいくのであった。
「マイン、そこの扉から入っていけば彼女がいる」
ピロースに促され扉を開けると
そこに裸の女性が壁に貼り付けにされていた……恐らく彼女がルカ様なんだろう。
うーん、いくら助けに来たとはいえ、異性である僕が側に来るのは嫌だろう。まして彼女は高貴な生まれのお姫様だ。
ここはピロースに頼むべきだ。
収納袋から僕のシャツとズボンを取り出してピロースに話しかける。
「ピロースすまないけど、彼女の拘束を解いてきてこれに着替えさせてくれないか?」
「ふん、わかった。よかろう、だが、ここは敵陣だという事は忘れてくれるなよ、お前のその態度や気持ちは好ましいとは思うが、ここにいるのは魔王カイエンだ。決して油断出来る相手ではない」