第201話 エルフの里跡で宝探し(アイシャルート)(3)
「……それで、どんな罠なんだ?このままここで入るのを躊躇っていては何も進まないだろう?」
ピロースが私を見据えてそう言う。
「ええ、確かにその通りだわ。罠に何か身代わりになる物を放り込んで確かめてみましょう」
そうはいってみた物のそんな手頃な物なんか何もないし……どうしましょうね
「クゥ……ケートス様にどんな罠なのか分かれば聞いてみてくれる?」
分かるわけ無いと思いつつもクゥに聞いてみる。
『きゅきゅきゅー、詳しくは分からないけどリザードマン・ジェネラルという上位種が設置したから
恐らく、転移系の罠じゃないかと思うそうです~』
「ありがとうクゥ……、それだけ分かれば十分よ。
「ほう、転移系か、ではこの辺の岩を放り込んでみるか」
ピロースがそう言って辺りに埋まってる巨大な岩を指さしながらそんな事を言う。
「何言ってるのよ。そんな大きな岩どうやって入り口まで運ぶの?あとどうやって放り込むというの?」
私がすぐ様そう言うのも無理は無いと思う。
その岩をパッと見ただけで100kg近い重さがあると思う。この場には女性しかいないのだ。仮にマイン君が居たとしても
簡単には動かせないだろうと言うシロモノだ。
「……いや、アイシャ、私の特性を忘れたのか?
私なら持ち上げて放り投げれるぞ
ピロースは涼しげにとんでもない事を言ってのけた。
……特性?
ああ、闇落ちの効果か?そうか!けどそこまで能力値が上がるものなのか?
姫様はよくこんな人と戦って勝ったものだと改めて思う。
「……まあ、そこで見ておけ」
ピロースはそう言って大岩に取り付き、力を込めて引き上げようとする。
「グヌヌヌヌ……すまないが私の腰にひもを巻いてそれを一緒に引いてくれないか?」
半分ほど地面から出て来たところでピロースがそんな事を言い出した。
私は手早く手荷物の中からロープを取り出して、ピロースの腰に巻き付けた。
「きゅきゅークゥも引っ張ります~」
なるほど、非力な私がいくら引いたところでピロースの助けにはならないだろう。だけど神獣であるクゥならば……。
クゥがそう言って自ら口にロープの端っこを加えてきゅ~と引っ張り出した。……するとゆっくりと大岩が地面から浮き上がってきた。
さすが、幼体といえ、神獣様だ。
ピロースはと言うと額から汗を大量に流しながらもそんな巨大な岩をたった独りで持ち上げている。
……本当にとんでもない力だ。
元々、エルフ族という種族はエイミさんのように非力なのが普通なのだ。決して、このような力仕事が出来るような種族でない。
……だが、ピロースはそれを私の目の前でやってのけている。
【闇落ち】というのは何という凄まじい能力なのだろうか?
「……よし、それでは世界樹の迷宮に放り込むぞ」
ピロースはそう言って力を振り絞る。
そして巨大な岩の塊はピロースの手を離れて緩やかな放物線を描いて迷宮の入り口へと向かっていく。
……するとどうだろう。
入り口全体がまばゆい白光に包まれ、投げ込んだはずの大岩が跡形も無く消え失せていた。
「……なるほど、確かに転移系の罠みたいね」
『きゅきゅきゅーお母様、今大きな岩を投げ込んだのですがどこに行ったかわかりますか?』
『ん?ああ、この迷宮の3階にあるリザードマンのねぐらの上に落ちたみたいだよ。おやおや2~3匹
下敷きになって死んだみたいだね、自業自得とはいえね、ざまあないね』
『きゅきゅっ 投げ込んだ岩はリザードマンのねぐらに落ちたそうです。それで何匹かを倒したみたいです』
……なるほど、何も知らないで入り口に飛び込むとリザードマンの巣にご招待という事だったのね。
教えてくれたケートス様には感謝だわ。
『クゥ、ケートス様にお礼を言っていたと伝えてくれる?』
『お母様、アイシャが罠を教えてくれてありがとうって言ってるきゅ~』
『きゅきゅきゅーアイシャ伝えたよ~』
「さて障害も無くなった事だし、さっさとケートス様に会いに行くか」
「ちょっと待ってピロース!罠が消えてなかったらどうするの?」
「かまわんさ、何処に飛ぶか分かってるからなリザードマンごとき全て私が葬ってやる」
額から流れ落ちる汗を拭いながらピロースがそう言って世界樹の迷宮の入り口へと入っていった。
……うん、何も起きないみたいだ。
どうやら、一回発動したら消えるタイプの罠だったみたいね。良かった。
「大丈夫のようだ。アイシャ、お前の考えすぎだったみたいだな?」
ピロースの少し勝ち誇る声を聞きながら私とエイミさん、そして、主役のクゥもピロースの後を付いて迷宮に足を踏み入れるのだった。
入り口の通路を進んで行くと前回来た時と同様に大広間になっていた。
そして、そこには巨大なケートス様がクゥのようにふよふよと空中に浮かんでいたのだった。




