表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/291

第02話 スキルを使ってみた

授かったスキルの事を考えながら、僕は帰宅の途につく。

乗り合いの馬車には10人ほどの乗客が乗っていた。


僕の家は神殿のある王都から馬車で半日ほど離れたルーカスの町の外れにある。


王都から比較的近場の町という事で、人口1000人程度ではあるが冒険者をはじめとする人々の往来が活発な町である。


『さて、鑑定を使ってみようかな』


馬車に揺られながら、目の前にいる壮年の冒険者に鑑定っと念じながら目を向ける。

すると脳裏に情報が浮かんでくる。


名前:キース

種族:ヒューム

性別:男

年齢:48歳

職業:冒険者(C級)


【スキル】

片手剣

清掃


へえ、キースさんって言うのか。

持ってるスキルは……【片手剣】と【清掃】か……。


組み合わせが悪い典型だよね。


結構、いかつい容姿なのに【清掃】とかギャップが激しいなあ。


清掃の事を考えながらキースさんを見てみると更に脳裏に情報が浮かんでくる。



【清掃】:掃除を効率よく行う事が出来る、熟練度が上がる程、綺麗に掃除が出来るようになる。



そうか、鑑定というのは確認出来た情報の項目を更に詳しく調べる事が出来るのか。

これは中々便利だな。


多分、【鑑定・全】だからこんな事が出来るだと思う。


そして、今得た情報の中に気になるワードが含まれていた。


”熟練度”だ。


熟練度なんて項目はどこにも見えないけど、この言葉からするとスキルは使えば使うほど能力が上がるみたいだ。


なるほど、そういう事ならばきっと鑑定も使えば使うほど、もっと詳細な情報を得る事が出来るようになるんだろう。


となれば、どんどん鑑定をしていこう。

どうせ、半日は馬車の中から動けないんだ。


【カット&ペースト】は人がいる場所では試しにくいしね。


そんな事を考えながら、馬車の中にいる10人全てを鑑定する。


9人までは特に問題なかった……。

しかし、10人目の男性を鑑定し得た情報にトンでもない事が含まれていた。



名前:ゲスカルト

種族:ヒューム

性別:男

年齢:31歳

職業:盗賊


【スキル】

裁縫

短剣・極

俊足(小)



なんと、盗賊だ!

なんで乗り合い馬車にこんなのがいるんだ!?


しかも【短剣・極】を持ってる。

それなりの使い手って事だ。


やばい、やばいぞ。今は大人しく目を瞑って座ってるけどいつ暴れ出すか分からない。


何人か冒険者が乗り込んでいるけど、不意打ちで斬りかかられたら呆気なく死んでしまうだろう。


ヤツの目的はなんだ?

この馬車の目的地は僕の住んでいるルーカスの町だ。


馬車の中で大人しくしているという事は、狙いはルーカスの町なんだろうか。


町に入るには厳重な検査を受けて入る訳だから、盗賊は入る事は出来ない筈だ。


どれだけ考えても正解を思いつかない。いや、思いつけない。


今、ヤツが危険だと言う事を分かっているのは僕しかいない。

誰かに話すにしても、狭い馬車の中でそんな事を口にすれば当然ヤツにも聞こえてしまう。


何か、何か方法はないか。


ヤツが短剣を持ち出し、暴れ出す前に何とかする方法は……。


焦りながらも、僕みたいな成人したての若造に出来る事なんか有るわけが無い。

そう思ってしまう。


最善はヤツが暴れる事なく、町に到着し気が付かれないうちにさっさと家に帰る事だ。

だけど、このままヤツが大人しくしているかどうかは全く分からない。


無事に町についたとしても、町の中で何か起こり、それに僕が巻き込まれない保証もない。


何より馬車の中には僕の他にも成人を迎えたばかりの若年者もいるし、年頃の女性だっている。

やはり何か解決案を考えないと、危険だと言うのは間違い無いだろう。


僕が今出来る事はなんだ?


出来る事と言えば、今日得たばかりのスキル位しか無い。


鑑定は確かに役に立つ。

だけど、この状況をひっくり返す事は出来ない。


なら、もう一つのスキル【カット&ペースト】を何とか上手く使えないだろうか。


【カット】は生き物には使えない。

それに使えたとしても、まだ何もしていない相手に攻撃をする事は出来ない。


言ってしまえば掴まるのはヤツでは無く僕になってしまう。


相手に危害を与えず、無力化するためには……。


そうか【ペースト】でヤツの靴を床に貼り付けてしまおう。

そうすれば、急に行動されても動けなくなるはずだ。


靴を脱ぎ捨てるにしても、すぐに出来ないだろう。


あとは腰に履いている短剣だな。

鞘と本体を貼り付けてしまおう。


そうすれば、何か行動を起こされても、キースさん達冒険者の人が対処出来る筈だ。


よし、そうと決まれば早速行動だ。


スキルを発動すると、上手く発動した手応えが脳裏に帰ってきた。

初めての使用だったけど、何とか使う事が出来たようだ。


ふう……これでひとまずは安心だ。


ただ、このままだと町に着いた後の対処にはならない。


靴が貼り付いていても、脱げば移動する事は出来るし、短剣だって新しく買い直せばすむ事だ。


ヤツの目的がこの馬車なのか、ルーカスの町の中にあるのか分からない以上、根本的な解決にならない。


これだけ堂々と馬車に乗り込んでいるんだ。

もし、ルーカスの町が目的なら中に入る算段は立っているんだろう。


だとすると、町に何か被害が出てしまうかもしれない。


当面の危機を防ぐ目処が立った事で、僕は少し冷静になる事が出来た。


そして、冷静になった僕は……とんでもない事を思いついてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ