第197話エルフの里跡で宝探し(アイシャルート)(1)
今日は久しぶりにマイン君と姫様と別行動だ……。
特に危ない場所に行くわけでは無いけど少しだけ不安になってくる。
新しく私達の仲間となったエルフのピロースさんの為にエルフの里の跡地に行かなくてはならない。
エイミさんと同じく彼女もエルフだけにとても美しい顔立ちをしている……それを周りの目からごまかすための【幻惑の腕輪】を
探し出すためだ。
エルフの里の地理に私は詳しいわけでは無い。……だから同行者に件のピロースさんと同族のエイミさん、神獣のクゥも
一緒についてきてくれるのだから不安など何一つあるはずがない。
エルフの里跡はルーカスの街から遠く遠く離れた場所にある。
マイン君のスキルで先に送って貰わないと目的を果たすには時間がどれだけあっても足りないだろう。
マイン君と姫様は今日は王都に行く事になっているので王都へと出発する前にマイン君のスキルで私達を現地に送って貰わないと駄目よね……準備を急がないと……。
「ピロース、エイミさん出発の準備はいい?」
私が焦った声で二人に問うといささかのんびりとした声が帰って来たのだ。
「…あれえ……?アイシャったらなんでそんなに急いでいるの?マイン君のスキルですぐに着くでしょ?ゆっくりと準備しましょうよ~」
『クゥどこにいるの早く玄関まで来て!』
『きゅっ、きゅー~~もうすこしだけまってくださーい今わっふるにお菓子を貰ってるんです~お母様に人間のお菓子を食べて貰うんです!!』
『マイン君王都に行く前に私達を送って欲しいんだけど……いつ頃出発するのかしら?』
「マイン君と姫様は王都に行っちゃうので私達を先に運んで貰う必要があるんです!!……だからいそいでっ!!」
『クゥも急いでね!』
のんびりする同行人達理由を説明しつつもせかしながら私も荷物を順番にまとめていく。
そしてマイン君に【念話】でお願いをしておく。
『……マイン君、王都に行く前に私達を先にエルフの里まで連れて行ってね』
『ああ、そうか……当然そうなるよね……ごめん、アイシャうっかりしてたよ』
ああ、マイン君ですらこうなのだ……私がしっかりしなくては……
私が内心で堅く決意しているとピロースとエイミさんがやってきた。
「アイシャ……何そんなにしかめっ面してるの~?せっかくの美人さんが台無しよ~」
エイミさんが相変わらずのんびりした口調で私に声をかけてくる。
……はっ、いけないいけない笑顔……笑顔っと♪
しかめっ面なんてしていたらマイン君に嫌われちゃうわね……
「やっと来たのね?二人とも……マイン君も間もなく来るわ!準備の方は大丈夫なのね?」
こういう仕切りは私より姫様の方が得意なんだけど……姫様も準備で忙しいだろうし
「準備はばっちりだ。ところで|ケートス(神獣)様はまだ見えないが?」
ピロースがあたりを見回してクゥの不在を指摘する。
そういえばわっふるからお菓子を貰うとかって言っていたわね
『クゥ準備は?』
【念話】でクゥに呼びかける……すると家の奥からドタドタと床を鳴らす音が聞こえてる。
「……わふっ」
現れたのはクゥではなくわっふるだった。
そりゃそうよねクゥは浮かんでいるから足音なんかするわけ無い。
『わっふる、クゥはどうしたの?』
思わずわっふるに尋ねるとわっふるは振り向いて後方をみ見つめる「わふぅ……」
わっふるの視線の先にはふよふよと宙浮かびこちらに向かって飛んでくるクゥの姿があった。
『クゥ準備はいいの?お菓子って何?』
『きゅう~人間のお菓子は凄く甘くて美味しいのです!だからくぅだけじゃなくお母様にも食べて貰いたくて……
けどクゥのお菓子だけだと少ししかないのでお母様には物足りないと思ったのでわっふるに相談したら』
『わっふ!じゃあおれのおかしをクゥにあげるぞ!ちょっとまってくれもってくる』といってくれてわっふるからお菓子をもらっていたのですぅ』
……なるほど確かにケートス様の巨体だとクゥのお菓子だけだと心許ないわね……けどわっふるもお菓子は大好物だったはずなのに……本当に良い子ね!わっふるは……
『わかったわ、クゥ待ってなさい私もお菓子をあげるから』……確かまだホットケーキが残ってたはず……
私は慌てて台所に走って行き、目的のホットケーキを手早く包み、って手に持って急いで玄関まで戻るのだった。
玄関には先ほどまで居なかったマイン君が到着していた。
「クゥこれも持って行きなさい」
私はそう言いながら大きな風呂敷に先ほど台所から持ってきたホットケーキを包みクゥの体に縛り付けた。風呂敷に包み体に縛ってあげないと運べないもんね。
『きゅきゅ~ありがとうございます~コレも一緒に入れて欲しいのです』
クゥは嬉しそうに自分がもってきていたお菓子とわっふるから貰ったお菓子を私に包みに入れるように頼んでくる。
私は手早くクゥのお菓子を風呂敷に包み直して体に縛り付けてあげた。
クゥは人型じゃ無いからこうやって体に縛ってあげないと荷物を運べない
「アイシャ……それで準備はいいかな?」
マイン君がニコニコしながら私にそう尋ねてくる。
「ええ、ごめんなさ、マイン君、マイン君達も忙しいのに……」
あら、姫様もマイン君の後ろにこっそりと隠れてるわ。そうかエルフの里跡から直接王都に飛ぶつもりなのね?
「みんなの準備もいいようだから、行こうか!」
マイン君が家長らしくそう宣言わっふるがそのマイン君の背中にとびついてよいしょよいしょと駆け寄ってよじ登っていく。
きっといつものようにマイン君の頭の上に居座る気なのね。
「わっふ~♪」
よし、いよいよ出発だ。
首尾良くすぐに目的の腕輪が見つかればいいのだけれど……。
【固有魔法・時空】を使うマイン君を見ながらそんな事を考える……。
「さあ、繋がったよみんな入って入って」
マイン君がそう言いながら私達の方に体を向けて笑顔のまま声をかける。
よし、じゃあ急がないとね、まずは私から……。
私が黒い渦に飛び込むと後ろからクゥが猛スピードで後を追ってきた。
「きゅきゅ~~~~~」
あまりのスピードでクゥの鳴き声がどんどん遠ざかっていく。
辺りをきょろきょろと見回してみると……先日訪れたエルフの里に間違いなかった。
あらためてマイン君のスキルの凄さを実感するわね。
私がそんな事を考えていると黒い渦からピロースとエイミさんが飛び出てきた。
そしてクゥがふよふよと戻ってきた。
あとはマイン君と姫様とわっふるかな?
直接向こうからいくのかもしれないわね私はそう思い黒い渦に向かって大声で問いかけてみる。
「マイン君~~~、姫様~~~そっちはそっちで王都に向かって~~~」
すると
『分かったよ、アイシャ!、気をつけてね』
【念話】でマイン君から返事が返ってきた。