第195話 そのとき、リッツ王国は(CASE:リッツ王国(2)
そうと決まればファーレーン殿に返書をしたためねばならん。
とりあえず国内情勢が安定している今のうちに二人をオーガスタ王国まで送り出してしまうか。そうだな……
これはカイトに任せれば安心か……。
「よいかカイトよ、二人を必ず無事にオーガスタ王国に送り届けるのだぞ。
さて、ジャック殿、ファーレーン殿への返書にルカ殿の消息についても記しておこうと思う。うまくいけばオーガスタ王国が探して保護してくるかもしれぬからな」
「……エリック殿、かたじけない。ルカが無事ならばルイス殿に嫁がせるのもいいかもしれんな……そうすればオーガスタ王国を中心に周辺国の結束が更に高まり、魔人国への対応もより充実したものとなるだろう」
「国王様、姫様をオーガスタ王国に送り届ける任ですが、本当に私でよろしいのですか? 私が前線から離れますと、問題が出るのでは無いかと思うのですが……」
「カイト、お前の言いたい事は分かるが、姫二人の身の安全も重要だ。我が国で一番の実力者といえばお前だ。だからこそ、お前に託すのだ。……それにオーガスタ王国にサーシャリオンを引き渡せば、お前の心の整理もつくのではないか? お前がサーシャに好意を寄せているのは、わかっておる。……つらいかもしれんが、送り届けるまでの間せめて側に居る事ができるだろう?」
「はっ。ご命令とあらば、姫様方の護衛の任お受けいたしますが……本当によろしいので? 私が前線から離れますと、魔人ブラスティーを押さえる者が居なくなりますが……」
「お前が移動すれば、ブラスティーはおそらくお前を追うだろう。迎えのオーガスタ軍と連携して、出来るならそのまま奴を討つのだ! うまくすれば噂のマイン殿も迎えに来るやもしれぬしな。ブラスティーさえ討てば、国内の情勢は大分落ち着くだろう?」
「はっ! わかりました。このカイト、命に代えましても姫様を無事にオーガスタ王国まで送り届けて参ります! ついでにブラスティーも始末出来るなら始末して参りましょう」
◆◇◆◇◆
こうして俺は、姫様を乗せた馬車を護衛しながらオーガスタ王国へと向かっている。
ブラスティーの奴は恐らくそのスキルで俺の居場所は捉えているだろう。そう、ブラスティーのスキルは【地図】だ。特定の人物(この場合は俺)をマーキングして、その居場所を確認する事が出来るスキルみたいだ。
つまり、ブラスティーは今俺が王都の防衛に参加せず、遠く離れた場所にいる事を把握しているって訳だ。
「フハハハハ、カイトよ、前線に居ないと思ったらこんなところまで逃げていたのか?」
ん? 噂をすれば、ブラスティーのヤツ、まんまと釣られてやってきたな。
……さて、自分で決着をつけられないのは口惜しいが、オーガスタ王国の連中はどこだ?
念のため合流して迎え撃たないと、姫様に何かあったら一大事だからな。俺のプライドなどこの際その辺に捨ててしまえばいい。
おっとブラスティーのヤツ、中隊規模の部下も一緒に引き連れてきやがったか。これはある意味で好都合だな。それだけ本国の攻めが弱くなるわけだし、こいつらをオーガスタの騎士団が倒してくれれば本国への侵攻も随分と和らぐだろう。
ん? オーガスタ王国側の斜面に騎士団らしき軍隊が見えるな……おぉっ、あの旗は!オーガスタ王国からの迎えか! それにしても騎士団を率いてくるとは、オーガスタ王国も今回の婚礼には本気という事か? まあ、自分達から申し込んできたのだから当然といえば当然か……。ふん、丁度いい。このままブラスティー達を任せてしまおう。
「リッツ王国の方々ですか?」
騎士団の中から一人、少年がこちらに声をかけながら走ってくる。オーガスタ王国も人手不足なのか……?
あんな少年を騎士団に採用するとは……オーガスタ王国は本当に大丈夫なのか?
「ああ、リッツの双子姫をオーガスタ王国まで護衛してきたリッツ王国兵士長のカイトだ。オーガスタ王国からの迎えの方と思って良いのかな?」
「はい! お疲れ様です」
「お二方を迎えに来ましたオーガスタ王国騎士団で間違いありません! 騎士団を率いているのは第一王子のアルト・オーガスタ殿下です」
「そして僕は……マインといいます」
なんとっ! この少年が噂の英雄マイン殿なのか? ならば丁度良いか。
民が語る圧倒的な武と言うのをこの俺に見せて貰おうか。相手は魔人だ、相手に不足は無いだろう。
「おおっあなたがマイン殿か! すまない、魔人に後をつけられてしまった。あの丘の向こうに魔人ブラスティーとその部下の魔族達の群れがいる。殲滅に協力願いたい」
「ええ、勿論ご協力いたします。ただ魔人は危険ですので僕が戦います
『…ほう、魔人相手にこの余裕の態度噂というのは本当なのかもしれんな……サーシャ様を渡すのは口惜しいが、噂通りの実力の持ち主というならば、それもやむをえないか……?』
「あ、あそこに居るのが魔人ですね?」
◆◇◆◇◆
三人目の魔人か……どれ……おお、鑑定出来るな……。
やはりザナドゥだけが特別だったと言う事なのか?
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名前:ブラスティー
LV:56
種族:高位魔人
性別:男
状態:
【スキル】
地図
豪運
短剣・聖
固有魔法・拘束
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【地図】:自身の現在居る場所周辺の地図を脳裏もしくは任意の物に書き写す事、に映す事が可能。
任意の相手にマーカーを付けその居場所周辺地図を脳裏もしくは任意の物に書き写す事、に映す事が可能。
【毫運】:自身の運が極端に良くなる。目的があれば。達成率が極めて高くなる。
【有魔法・拘束】:任意の標的を拘束し10秒間移動不能にする。
◆◇◆◇◆
…………………………………………………………………
名前:マイン
LV:63
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:狩人
【獲得スキル】
地図new!
豪運new!
短剣・聖new!
固有魔法・拘束new!
…………………………………………………………………
「おお流石高位魔人だけあって良いスキルを持ってるね……まず全部【カット】しちゃおう!!
「さて」……倒してしまうか……ガトリング砲を試してみてもいいかな?
……いやアレはいくらなんでも異質すぎる。リッツの人が視て変な噂が立っても困るか……。ここは普通に【シャークグロウ】でいくかな?【短剣・聖】も手に入った事だし。いけるだろう。
あ、いまブラスティーから【カット】したバインドを混ぜてみるかな……これは便利な魔法だね 僕は【俊足】【脚力強化】を使用して魔人へと一気に近づいてみせる。
そしてタライトニングエッジの射程に入ったところで【有魔法・拘束】を使用し、魔人の動きを止める。
そして【気配遮断・大】を使用し、一気に背後へと周りこんだ。
「じゃあね!」
「「喰らえっつ!!武技:シャークグロウッッッッッッッッッッ!!!!」
バインドで動けないブラスティーに渾身の【武技・シャークグロウ】をたたき込んだ。
「くぅ、身動きが取れん!!俺のバインドのようなスキルなのか?」
背中を大きく切り裂かれたブラスティーは大量の血を流しながら膝から崩れ落ち、倒れた。
「ヒュッ!あの少年、本当にブラスティーを倒しやがった!!本物のマイン殿のようだな」
「ブラスティーと言ったね?僕の名前はオーガスタのマインだ。ザナドゥは今どこにいるか知ってるか?」
「ふん、知るか!知っていても話す訳なかろう……グフッ」
「ならばあなたはここで死ぬ事になる……」
……さて、どうしよう。魔法で焼き払うか……
確実にとどめを刺さないと危険だよね、やっぱり……取りあえずカイトと名乗ったリッツの人の隣まで戻って 【固有魔法・極光】でとどめを刺そう。
あの魔法は光属性だから魔人にはよく効く筈だ。
そして僕の放った【固有魔法・極光】はすさまじい轟音を上げて地に倒れ伏しているブラスティーに命中し、その身体を跡形も無く消し去っていった。
「カイトさん、これで魔人の脅威は無くなったと思います」
僕がそう告げると彼は満面の笑みを浮かべて僕の背中を叩いてくる。
「マイン殿、本当にすまない。助かったよ、これで我が国も安泰だろう……姫様を宜しく頼んだぞ」
「……カイト……カイト……、今ものすごい音がしたけど大丈夫なの?」
カイトさん達が護衛してきていた馬車からか細い女性の声が聞こえた。
「姫様という事はこの女性がスターシャリオン様かサーシャリオン様なのかな?という事は
僕の新しいお嫁さん?? 確かにとても綺麗な人だけど……本当に僕に嫁いでもいいと思ってるのかな?_?
「大丈夫でございます。姫様。こちらのオーガスタ王国のマイン殿がにっくきブラスティーの奴を倒した音でございます。凄まじい音でしたがリッツ王国に取っては福音とも言えましょう……」
「マ、マイン様が、ですか?」
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名前:マイン
LV:63
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:狩人
【獲得スキル】
地図new!
豪運new!
短剣・聖new!
固有魔法・拘束new!
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