第191話 国王様への報告(ちゅん介の結末2)
『はじめまして……では、無いかな?こんにちは、マインと言います』
僕はちゅん介にこっそり貼り付けた【念話】で話しかける。
あぁ、驚いてるみたいだね。
そりゃ、そうだよね。
いきなり頭の中で、知らない声が聞こえてきたら驚くに決まってる。
目をまん丸にして、僕の事を見ているよ。
……いつまでもこうして見つめ合ってても仕方ない。
もう一度、話しかけてみようかな。
『ちゅん介君だよね?いつもわっふるとクゥがお世話になっています』
そう言って僕はちゅん介にぺこりと頭を下げる。
すると、翼をバタバタとさせてちゅん介は慌てだした。
『わわわっ、わっふるのごしゅじん!こちらこそおせわになっています』
『わふ、おせわしてやってるぞ!』
……なんか、わっふるも生き生きしてる気がするね。
クゥが来たときも嬉しそうだったけど、ちゅん介と一緒だとまた違った感じで嬉しいのかな?まあ、神獣という事で普通の魔物の友達なんか今までいなかっただろうし……。
このままずっと、わっふると仲良くしてくれると嬉しいよね。
『取りあえず、君とそちらの……ちゅん美ちゃん?の治療はしたけど、体の具合はどうかな?』
【再生】での治療だから、問題は無いはずだけど、もしかしたらと言う事はあるからね。
ちゃんと、確認しておかなきゃ。
『ちゅん!!?たすけてくれてありがとうでちゅん!!』
まず、僕にちょこんと頭を下げてから、ちゅん美ちゃんの状況を確認しにテッテと飛びはね近づいていく。
『す、すごいちゅん!ありがとうちゅん!!!あんなにひどかった、ちゅんみちゃんのけがが、すっかりきれいになおってるちゅん!!』
遠目だったので、しっかりと見えなかったけど、確かに彼女は酷い怪我だったように思う。
流石、【再生】だよね。こんなに喜んで貰えたら、間に合って良かったって心から思っちゃうよね。わっふるの感知能力に感謝!だね。
『さて、そろそろ落ち着いたかな?良かったら何が起こったのか教えて貰えないかな?それに君の主人のカッポレはどこにいるのかな?』
僕がそう尋ねると、少し困ったような素振りを見せてから、ちゅん介は語り始めた。
『ぼくは、ごしゅじんといっしょに、とおくのもりにいったんだちゅん。にんげんのきしのひともいっしょだったちゅん!』
人間の騎士?遠くの森?何かあったんだろうか?
……そもそも何で騎士とカッポレが一緒に行くんだろう?
確か、カッポレは厄介な毒をもらって、完全に治療が出来ない筈だったけど……。
『なんで、騎士の人と君のご主人は一緒だったの?』
『きしのえらいひとが、ごしゅじんをなかまにしてくれるっていってたちゅん。もりにみたことのない、まものがいるから、さがしてこいっていわれたのだちゅん!』
見たことが無い魔物?それに騎士がカッポレを仲間って……まさか騎士団に誘いに来た?
思わずわっふると顔を見合わせてしまう。わっふるも「わふ?」と不思議な顔をしている。
カッポレのような性格の人間が規律が厳しいとされる騎士団でうまくやっていけるとは思えないんだけどなあ……。わっふるも同意見のようだ。
まあ、カッポレの事は取りあえず置いておこう。それよりも気になるのは未知の魔物という情報の方だね。ヒュームの生活圏がどんどん広がり、未知の場所や遺跡……そういった物はどんどん発見され攻略され、今では見た事が無い魔物なんて滅多に発見される事がない。
そんな現状の中、遠くとちゅん介は言ってるけど、騎士団が動く位なんだから、無茶苦茶な辺境という事は無いだろう。
辺境では無い場所……そんな場所に未知の魔物なんて本当にいるんだろうか?
……まさか!その未知の魔物って奴にちゅん介とちゅん美ちゃんはやられたのか!?
それで、逃げてきた?……あ、けどそうするとカッポレはどうしたんだと言う事になるね。
ひょっとして、ちゅん介達を守るために犠牲になった?
うん、無いね。自分で想像しながら、あり得ないと妙に納得しちゃったよ。
『それで、その魔物は結局見つかったの?』
『みつからなかったちゅん……そらから、いっしょうけんめい、さがしたけれど……』
ふむ、空から探しても見つからなかったと言う事は、やはりカッポレは今、どこで何をしているのか、と言うのが気になってくるよね。
……あんな奴ではあるけれど、一度命を救ったのだから、やはり死んで欲しくはない。
『それで、ご主人様はどうしたの?』
僕がそう聞くと、がっくりと肩を落としてちゅん介は大きなため息をついた。
何かを思い出しているのか、うっすらと目に涙が浮かんでいる。
『……ご主人とはお別れをしてきたんだちゅん』
は?……お別れ??
スキルでテイムされた筈の魔物が自分の意思でお別れ??そんな事があるものなの!?
それに、ちゅん介は随分とカッポレの事を慕っていたと思う。……あのカッポレを何で慕えるのか不思議でならないんだけど……けど、実際にそう見えたんだよね。
ちゅん介はこうして話していても、魔物とは思えないほど義理堅い性格をしているのがよくわかる。そんなちゅん介が、あれほどまでに慕っていたカッポレとお別れしたというのだから、何か余程の事があったのでは無いかと推測出来る。……う~ん、きっとろくな事じゃないだろうなあ。
それでも状況を理解する為には聞いてみるしか無い。
『……何があったの?』
ちゅん介とちゅん美を見ながら、僕はそう尋ねてみる。
『……じつは……』
ちゅん介から、語られた事実を聞かされ、僕は愕然としてしまった。
カッポレの性格がここまで酷いとは……。
未知の魔物を探すべく、ちゅん介が張り切って空から森を偵察していたら、同じ雀族が鷲型の魔物に襲われているのを発見し、間一髪でちゅん介が助け出したそうだ。
……そう、その助け出した雀こそ、今もそこで眠っているちゅん美だったのだ。
何という偶然か、彼女はちゅん介の幼馴染みで、初恋の相手だったらしい。
重傷を負い死にそうなちゅん美を何とかして救うべく、慌てて主人であるカッポレの元に向かったが、こともあろうに怪我を負ったちゅん美を治療するどころか、カッポレは食べようとしたらしい。
ちゅん介からすれば、ショックだっただろう。
自分が信頼する主人に助けを求めてやってきたのに、肝心の主人は真逆の事をしようとしたのだから。
『だから、ぼくはごしゅじんと、おわかれをしたんだちゅん。おうとにいけば、わっふるとであるとしんじて、がんばってもどってきたちゅんよ!』
……なるほどね、ようやく理解出来たよ。
ちゅん介の基準で遠い場所にある森から、怪我しているちゅん美を背負って飛んできたのだ……そりゃ、疲労困憊で墜落もするよね。
僕があまりの出来事にため息をついた、その時……。
『……ちゅん?ここは??』
ちゅん美が目を覚ましたのだ。
お読み頂きありがとうございました。
書籍一巻の発売日が決定しました。
6月10日(土)となります。
アマゾンでも予約販売が開始したようです。
また、活動報告に主要キャラのラフイラストとカバーイラストを公開しております。
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■カバーイラスト
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■マインとアイシャ
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■シルフィとライル
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