第190話 国王様への報告(ちゅん介の結末1)
『まいん、もうすぐだ!』
わっふるの気配察知に偶然、感知されたちゅん介。
何でも今にも死んでしまいそうだという。
更にちゅん介のすぐ側にも死にかけの気配がするというのだから一大事だ。
カッポレが何かをしたのだろうか?それとも別の理由で大怪我をした?
どちらにせよ、急がなければ本当に死んでしまう。
僕もわっふるもスキルを使って全力で屋根の上を走って行く。
町中の通路を全力で走るわけにもいかないし、道なりに進めば当然時間がかかる。
なので、僕は【気配遮断・中】を使用して屋根の上を走る選択をした。
……ちなみにわっふるは小柄なので、屋根を走っても目立たないので、普通に走っている。
『まいん、あそこだ!』
わっふるの目線を追いかけると……確かにいた!だけど、これは不味い。
力なく羽ばたいていた羽根がついに止まり墜落し始めた!!あのままだと、地面に激突してしまい、そのまま死んでしまうかもしれない。
……あ!?不味い!!本格的に落ち始めた!!……意識が無いのかもしれない。
『わっふるっ!!』
わっふるにちゅん介を空中でキャッチするように指示を出す。
そして、その間に僕は【再生】の張り付いた小石を取り出し【カット】する。
そして、すぐさま落下しているちゅん介に【ペースト】した。
ん?待てよ?ちゅん介の背中にもう一匹雀がいるぞ?
こちらも相当な重傷みたいだ!!……そうか、これがわっふるの言っていたもう一つの死にかけの気配の正体か!慌ててもう一つ、【再生】を取り出して、もう一匹の雀にも貼り付けた。
『わふぅっ!!!!!!!』
わっふるが助走をつけてジャンプし、そのまま【空中浮遊】を使って空中を滑っていく。……そして、ちゅん介ともう一匹の雀を口に咥える事に成功した。
『ナイスキャッチだ!わっふる!』
思わず、そんな言葉が口から飛び出した。
わっふるの口に咥えられた二匹の雀の体から【再生】の白い煙が黙々と立ち上がり始める。
うん、どうやら間に合ったみたいだね。
名前:ちゅん介
LV:19
種族:雀族
性別:♂
状態:気絶
【スキル】
身体強化・中
清掃
礼儀作法
【種族スキル】
雀アタック
名前:ちゅん美
LV:13
種族:雀族
性別:♀
状態:気絶
【スキル】
気配遮断・小
清掃
礼儀作法
【種族スキル】
雀アタック
へえ、ちゅん美って言うんだ?
……あれれ?あれ?何でだろう。ちゅん介のステータスを見て僕はある事に気がついた。
ちゅん介ってカッポレの従魔だよね?
なのに何で状態に『テイム中 (カッポレ)』って表示されていないんだろう?
この状態だと……カッポレにテイムされてはいないって事になるよ?
わっふるの場合は僕が【テイム】を使ったわけでは無いけど、なぜか“テイム中”になってたんだけど……ちゅん介の場合はその逆のパターンなのかな?
取りあえず、その辺りはちゅん介が目を覚ましてから聞けばいいかな?
◆◇◆◇◆
ここは一体、どこちゅん?天国……ちゅん?
『きがついたか?ちゅんすけ』
あう?天国に何故、わっふるがいるの?わっふるも死んじゃったの?
『わふ!なに、ねぼけてるんだ?はやくおきろ!』
わっふるが僕の体を肉球でつついてくる。
プニプニしてて、ちょっと気持ちいいかもしれないちゅん。
…………そうだっ!!ちゅん美ちゃんは!?ちゅん美ちゃんはどうなったちゅん!?
僕はガバッと跳ね起きた。……え?跳ね起きた?……なんで?
僕は力尽きて、気を失ったはずだ、なのに何でこんなに元気だちゅん?
ああ、そんな事より……ちゅん美ちゃんは!?
『わっふる、ちゅん美ちゃんは?ちゅん美ちゃんを助けて!』
僕が大慌ててで、そうわっふるに尋ねると、わっふるはにこにこと笑顔で僕の横に視線を移したちゅん。そこには折れた翼も傷ついた体も元通りに戻っているちゅん美ちゃんが寝ていたのだ。
『良かったちゅん……ちゅん美ちゃん、死んでないちゅん……』
僕は思わず、ほっとしたからなのか目からどんどん涙が溢れてきたのだちゅん。
そんな時だ……。
『もう、大丈夫だよ』
ちゅん!?なんか声が聞こえた!?
『はじめまして……では、無いかな?こんにちは、マインと言います』
こ、この声は目の前のわっふるのご主人!?
なんで、なんで僕と話せるちゅん!?ご主人でも僕と話が出来なかったのに!?
僕は涙を拭くことも忘れ、わっふるのご主人……マインさんをじっと見てしまうのだった。
◆◇◆◇◆
ふぅ、2匹とももう命の心配は無いみたいだ。
ちゅん介は激しい疲労、ちゅん美は全身大怪我といった感じだったみたいだけど、どちらも【再生】が働いてしっかりと回復しているみたいだった。
……しかし、【再生】って疲労の回復にも使えちゃうんだね……。
体力を再生しているという事なのかな?だとしたら、今までの想定以上の事にこのスキルは役に立ちそうだね。
長距離の移動だったり、重労働だったり……疲れ知らずで行動出来るという事だ。
もう少し、色々な使い方を考えてみてもいいかもしれないね!
さて、ちゅん介には色々聞きたい事があるよね。
カッポレの事や、このちゅん美という雀族の事、なんでそんな疲労困憊の状況に陥ってしまったのか……等、ぱっと思いつくだけでこんなにも出てくる。
となると、ピロースさんにも使った、この手に限るね。
小石から【念話】を【カット】して、まだ眠りから覚めないちゅん介に貼り付ける。
……ん、体が動いたかな?そろそろ目が覚めるのかもしれないね。
いきなり僕が話しかけてもビックリするだけだろうから、まずはわっふるに声を掛けてもらおうかな?
『わっふる、今ちゅん介に【念話】を貼り付けたんだけど、まずはわっふるが話しかけてくれるかな?』
『わふ!まかせろ!』
しばらくじっと2匹の雀の様子を見守っていると、どうやらちゅん介が本格的に覚醒をしたようだ、体をぶるっと震わせて起き上がろうとしている。
『きがついたか?ちゅんすけ』
わっふるがそう声を掛ける。
すると、ちゅん介は一瞬ぼぉーっとした表情でわっふるを見て首をかしげている。
どうやら、寝ぼけているみたいだ。
まあ、仕方ないよね……疲労で死にかける程、衰弱してたんだ。
すぐに覚醒出来るわけがない。
『わふ!なに、ねぼけてるんだ?はやくおきろ!』
わっふるがツンツンと肉球でちゅん介をつつき始める。
いや、わっふる……そんなに無理して覚醒させなくていいんだからね?
肉球ツンツン攻撃が効いたのか、ちゅん介が急に辺りを慌てて見回し始める。
ああ、起きたみたいだね。……きっと、ちゅん美って雀を探しているんじゃないかな?
『わっふる、ちゅん美ちゃんは?ちゅん美ちゃんを助けて!』
ああ、やっぱりそうだよね。
文字通り、命がけでここまで運んできたんだ。
きっと、ここまでこれば助ける事が出来るって信じて無理をしてきたんだろう。
……大丈夫だよ、二人とももう助かったんだから!
わっふるがちゅん介の言葉を聞いて、僕の横で眠っているちゅん美という雀に顔を向ける。
釣られてちゅん介も、僕の横に顔を向ける。……すると、号泣し出すちゅん介。
……なんか、こちらまでもらい泣きしちゃいそうだよ。
『もう、大丈夫だよ』
僕は【念話】で、そうちゅん介に話しかけた。
お読み頂きありがとうございました。
書籍一巻の発売日が決定しました。
6月10日(土)となります。
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また、活動報告に主要キャラのラフイラストとカバーイラストを公開しております。
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■カバーイラスト
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■マインとアイシャ
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■シルフィとライル
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今後ともどうぞ宜しくお願いします。